DTM音源ピアノ化計画 ノ 反ススメ 終話『ド素人の矜持 −有名音源をぶった斬る− 又は演奏用非推奨リスト』


次に、演奏用としてはお勧めできないリスト、である。これらには何の科学的数値も根拠もない。ただ自分の感覚で肌に合わなかったものでしかない。「バカのたわごと」と片付けるのは自由である。各自、感覚は千差万別なのだから、自分で確かめ回答を得るべきだ。

選外となった最たる理由は概ねこれらの音源が「分類B(ミックス用)」ということである。

(例によって順不同)


▲有名な Keyscape は、単音は良いと思うが曲を弾くと不自然な「リアルなお面を被っている」感が拭えない。ピアノは15GB程度だが、他にエレピやトイピアノ、クラビネットなど現代音楽シーンの主要鍵盤楽器を網羅しており、90GBほども容量を食われる。DTM 用、或いはプリセットの大半を占めているエレピ向けの音源だと思う。


▲最も有名な筈の Vienna Synchron (VSL) や、Ivory 3 がないのは、自分がヘソ曲がり&金が無いので購入してないから評価できないだけ。(どちらも超容量・高スペックCPU向け、お手軽ではなさそう⋯⋯)


▲ NativeInstruments KONTAKT(サンプラー)用のピアノ音源もある(Piano in Blue、sampletekk などは好み)が、古い音源が多く、あもりにも種類が多い上に玉石混交過ぎて魔境。手を付けるべきでない。有名な槌職人の無料音源もただ音が良いだけ、RealPianoは録音用で弾くと距離感が違和感に。せいぜい面白い、と感じたのはStrezov Diamond Jazz Trio Freebieのアップライトくらいか。


▲純正 KOMPLETE バンドル内にある音源も及第点、といったレベル。ベロシティレイヤーが少ないのか自分的には「コツン」と抜ける音や、滑らかなレガートがないと感じる。その他、大体が超高価い KONTAKT を購入しないと使えない&最近のKONTAKT Player の起動が重すぎるので、ピアノを弾きたいだけなら除外で良いと思う。KOMPLETE は使わない音源まで大量についてきて勿体ない。


▲Aria Sounds Silk Piano:KONTAKT用だが敢えて注意喚起。ファツィオリ・コンサートグランドを最大76ものベロシティレイヤーで収録した怪物。 これは凄い! ⋯⋯GUIはADSR(しかもSはステレオ、Rはリバーブ!)のツマミのみ。苦肉の策で電子ピアノ側のキーウェイトを重くしてもブッ尖った痛い音、ベロシティレイヤーは50〜76まで「よく使う音のみ」というよくわからない基準でデコボコに配置され、内部ではそれがただ均等に引き伸ばされマッピング。普通に弾いていても音色がガタガタ。何より音の減衰が信じられないくらい早い⋯⋯ これを推奨出来るのは超絶技巧アクロバット曲をガンガン弾く人(減衰早いので濁りにくい)だけです⋯⋯ DTM用。


▲Cubase の付属音源 HALion だが、自分は非所持のため除外(HALionSonicは所持)。「steinberg built-in ASIO」という強制インストールされるユーティリティが、他の IFドライバなどと酷い競合を起こすため。ラインナップには先のSampletekk のピアノなどもあり、Cubase一択選択という環境ならまた可、というところか。無料のNovelPianoは、データ再生用には良いクオリティだと思った。


▲IK Multimedia は自分のパソコンと相性が悪く、頻繁にクラッシュするので除外。Pianoverse はSampleTankよりは安定しているが、どうも演奏目的には無駄機能が多く、痒いところに手が届かない簡易設定も好きになれない。弾き心地もややもっさりしている。1台の容量は20~30GBくらいあり、いくつも揃えると⋯⋯! 

Sampletankが顕著だが、良音質は後段に配置されたご自慢の大量エフェクト群(MixBox)が担っている感じ。つまり、MixBoxを持っているなら、設定をメモして他社のいまいちなピアノにも活を入れられる!  か、も。


▲前章でベタ褒めしたUVI、しかしながら矢張り古い3GB程度の製品は、機能的には頑張っていても音に全く重みと深みがない。また、UVI本家の虎の子AustrianGrand は、どこか CPU の設定が変でバカ食いするうえ、音もいびつで奇妙。またこれらの入っているKeySuiteを、かつてのシリーズ分割販売から一括バンドル高額販売にシフトしたのは、心から気に入らない。


▲Dexibell T2L Piano これは、Roland ピアノの音が好きならばアリ、かなと思えた。基本的にはモデリングピアノで、アタック音のリアルさに反し持続音の平坦さが強く耳につく。が、ペダリングやレゾナンスなどが相当綿密に作られており、ほぼシンセのようなプリセット変更時の応答性など、完全に現場用のステージプロ機材である。数十万円もする実機と同じ音源がこれほどの廉価で使えるならば、持ち歩き用としては良いのかもしれない。しかし、矢張りこの音源の真の表現力は、綿密に調整された本家実機ピアノでのみ、発揮されるものに感じた。


▲AIR Music Tecnology MINI GRAND も、典型的なDTM用ピアノで、タッチを変えても音が硬いまま。他の音源は未所持。ステージピアノというのは基本的にミックス向けのスカスカ音質であることが多い。Essential Piano という製品は、かつてのSONiVOXの焼き直しである可能性が高い。だとしたらこれも汎用音源。このメーカー、Logic Pro仕様の古いvstを、vst3対応させただけで一気に値引きを渋ってきた。GUIはDPIスケーリングも出来ない虫眼鏡必須だというのに。(憶測と恨み節)


▲Sampleson MetaPiano サイン波合成(スペクトラルモデリング)ピアノ。これは価格に見合わない実験オモチャ、ピアノの幻影だ。まともな音がするのはせいぜい中央上下それぞれ1オクターブ、あとは作り物くさい割れてかすれた音しかしない。非常に軽いのでコードバッキングのスケッチ用なら使えるだろう。

ここのベンダーはサイトにライセンスの Q&A が全く無く、かつてはセール文に「ネット登録不要」と書かれていたが、よくわからないシリアル登録制になっている(ネット登録云々は現在では削除されている)。自分だけかもしれないが、数カ月位で起動時にまた認証を求められ、どうも信頼できない。初期のエレピの音は好きなのだが⋯⋯


▲Audict Dorian Marko Piano 有名ピアニスト監修、が触れ込みのマルチピアノ。音は良いと思ったが音量が妙に小さい。ペダルを多用した演奏の際に、突然GUIがフリーズし、カスレ音しか出なくなり再起動が必要になる。サイトにライセンス周りの条件などが明確に記載されておらず、管理が杜撰な印象を受ける。⋯⋯YouTubeの公式動画で同じような不具合報告コメントを見かけた事があるが、全く無反応。称賛には大げさなほど返礼しているのに。やな、感じである。


▲8DIO Soundopaint の無料ヴィンテージスタインウェイなども、無段階のベロシティを謳っているが逆にそれがアタック感の不自然さを招いている。有料音源も雰囲気レイヤーばっかりで、きちんとしたピアノとは言い難い。また、上記の他社高級音源なども含め、スペックの低いパソコンだと処理落ちするのか、もっさり鈍臭い。やはり制作用だ。


▲SoundMagic NEO PIANO 未熟なモデリング技術が予期せぬさまざまなノイズを頻発させ、演奏体験をぶち壊す。音源としても音が固く、とても公式動画のような響きは出ない。無料版なお然り。拡張パックのヴィンテージ楽器ばかりを集めた「Pianoforte1900」は、例外的にその音の硬さが功を奏している。しかし、サンプルデータが C ドライブに置かれる迷惑千万な仕様、ディベロッパーとマシンコードをメールで遣り取りする、という前時代の認証、サイトが閉じればこの音源も終わる。(購入当時の話です。今は知らん)

最新、midi 2.0対応を謳う無料PianoONEの配布を始めたが、旧作の方が百倍マシ、と思えるほどの酷いオモチャサウンド。2.0 なら違うのだろうか?


▲無料のサウンドフォントプレーヤー「sfz(スフォルツァンド)」で動作する有料音源もあるが、どうも細かい処理が不安定に感じた(例:EstateGrand、早い同音連打でリリース音の処理が追いつかず音量が爆発する、バグ)。MIDIプレーヤーとしてはとても優秀。また、sf2ファイルコンバート機能を生かしてさまざまな無料sf2を利用できるが、減衰音が「ブツッ!」と音を立てて切れるなど、形式違いの壁が立ちはだかる。


▲Spitfire 「Labs」 の無料音源含め、雰囲気を味わう音源用ピアノであって、演奏しようとするとどうも鍵盤の重さを感じられない出音に違和感がつのる。演奏するものではない。


▲Studiologic Numa Player 2 同社のキーボード搭載の音源を無料配布しているもので、ピアノ以外の定番鍵盤楽器も収録。驚くべきは、無料のクセにハーフペダルと弦共鳴を実装している。が、⋯⋯肝心のピアノの音質が悪すぎ、指に対する応答がいびつすぎる。いつの間にか「Stage D」という有料音源が追加されていたが、Ik Pianoverseにも迫る価格で、あくまで「リアルステージピアノ」といった音。割に合わない。同社のSL mk2キーボードとの連携機能がありmidi 2.0 対応と言うが、2.0だと綺麗に鳴るのだろうか。無料音源全体で200MB、有料音源も200MB程度。昔の電子ピアノのデータか、と⋯⋯


▲Arturia Analoglab play 無料のお試しシンセ音源だが、プリセット「American Home Grand」などに同社の高級モデリングピアノのエンジンをそっくり使用しており、ハーフペダルや共鳴もある。音は⋯⋯昔々のPianoteq という感じ、そこはかとなく電子くさい。あくまでシンセ、だがスケッチなどそういうピアノで良ければ重宝するのだろう。DAW上でNumaPlayerと混ぜて鳴らすとCPみたいなエレピ音になるが、わざわざそこまでして使わんでも。


▲無料音源は「一発芸」か「鳴れば良い」程度のものがほとんど、まともに演奏するためにはエフェクトを積んだり設定を弄くり回したり労ばかりが嵩む。(そして大抵失敗する)発音タイミングやレイヤーごとの音色にまでバラつきがあって、どうしようもないものもある。


▲有名な SalamanderPiano(無料)も録音技術の限界でC5~C6あたり主旋律帯の音が死んでいる。アタック音をえぐり取られたピアノとは別物の音。最近有志の方が丁寧にブラッシュアップされたが、少々やりすぎて今度は骨董品の電子ピアノみたいな音になってしまった。


▲無料音源の宝庫として時折紹介される Pianobook(サイト)も、失礼だが素人と業者の踊り場、雰囲気偏重ガラクタ飛び道具の廃棄場所。サイトは重くて見にくいし、ボロピアノの音が欲しい、とか珍しいシンセの音とか、もはや砂金掘りでもない限り近づく必要はない。

そして主力プレーヤーのDescent Sampler は「音源差し替え式 Maize Sampler(ロンプラ)」程度のシロモノで、高度な設定はできず、調整不足な素人音源との相乗効果でオクターブずれ、ほか奇妙な挙動を連発する。折角の無料サンプラーが気の毒になる扱い。

⋯⋯サイト創設者の崇高な理念とは裏腹に、彼の新設立メーカーの不可解な動向にも似て、いとあやし、である。


▲Waves はライセンスの管理の仕様(2台目インストールが年単位で有料)が好きになれず除外、ピアノ音源も調整が難解で、素人には手に余る。昔はセール時29ドル、と勉強価格だったが年々値を吊り上げてきており、お買い得感も薄れた。


 −ドシロウト としての矜持−

これらの音源の選択は、ネットの数々の書き込みや、インフルエンサーの評価、デモ演奏、多少の悪さを技術でねじ伏せるプロの立場でのレビューに、「俺の耳が腐ってるんじゃないか」「技術がないからダメなんだ」「DTM知識がないから」など、徹底的に惑わされ、凹まされた末の開き直りの発露だったりする。賢明で揺るがぬ自己評価を持った我はと思い上がり給える御皆様方におかれては、容易に自己の最適解にご到達なされるであろう、と申し述べておく。


 −氾濫するメーカー独自規格(囲い込み)への疲弊−

なお、あまり沢山の音源に手を出すと、メーカーごとに異なる個別のライセンス管理が「苦行」レベルで煩わしく、また頻繁なアップデートの処理に膨大な時間を割かれることを警告しておく。また、それらはパソコン移行の際にあなたを奈落の底へと突き落とす(by先駆者)。

Pianoteq は音質こそ好みではないものの、こういったユーザービリティに対して誠実な姿勢には好感を持っている。



 -ピアノメーカーへの提言(苦言恨言)-

——いかがだっただろうか。おそらく殆どの方がキモチワルイ怒涛の情念の奔流に、途中で離脱してしまったことだろう。

お付き合いくださった方には、感謝を申し上げたい。


今、この巌頭に立つに及んでの私の最終的な決断は


「『MIDI鍵盤+ピアノ音源』で、理想の実現は、曰く『不可能』」


ということである。私の挙げた数々のおすすめ音源は、諦めた末の、もっと気楽に音源と付き合うための妥協だ。だから、みな自分の気に入った音源があればそれを弾いていれば良いのだ。


最後の希望は、電子ピアノメーカーに自社できちんと調整した追加音源を、下位機種のポータブルモデルなどにもインストールできるようなシステムを実装してもらうことだ。が、おそらくそのような不都合なことは誰もしようとしないだろう。その辺りがユーザー軽視な不誠実な姿勢であると思う。



《蛇足・ヘッドホン使用の推奨 》

最後に、蛇足になるがこれらの音源の演奏には「ヘッドホン」の使用を推奨する。現在のリスニング環境では「数万円のスピーカーよりコンビニ製イヤホンのほうが音質が良い」ということがままある。スピーカーで聴こうとすると、よほど良いモニタースピーカーでもない限り、あもりの音のショボさに更なる要らぬ散財が増えてしまうことだろう。(畢)

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