DTM音源ピアノ化計画 ノ 反ススメ 中話『自己流、演奏用音源の選び方。オススメ音源』
《初心者への指針》
それでもなお、高品質なピアノ演奏への渇望止み難し、と云う初心者の方に、以下の指針を提示したい。
−音源の用途別分類−
ピアノ音源には明確なタイプ分類がある。
大分類
A:演奏楽器として考慮されたピアノ(細かな設定ができる)
B:ただミックスをするための音源(鍵盤を押したら音が鳴るだけ)
まず、これが大条件である。更に、それぞれに以下のような小分類がある。
小分類
・本格ピアノ:ドライ録音/ステージ残響音入り録音
・キャラクター・ピアノ:変なピアノやヴィンテージピアノを録音した飛び道具。(一番品質に差がある危険地帯)
・加工ピアノ:別の音がブレンドされたり、音がアートっぽく加工されたもの。
・『フェルト』『ソフト』とかいう、わざわざ鳴りにくくダウングレードされたちっとも響かない『加工ピアノ』
・その他:エレクトリック・ピアノ、或いはわざと電子音源のピアノを収録したもの(YAMAHAのCP80やKORGのM-1、Roland「小室(TK)ピアノ」など)。
安価なロンプラで「本物の音」などと銘打っているのは、まずB(音箱)である。
これを間違えて購入してしまうと、時はまさに大後悔時代となってしまうため、十分に気をつけるべきである。
メーカー説明の行間と空気を読んで、慎重に選択しなければならない。
−メーカー表記を疑え−
ところが、玉石混交、価格天地 な百千万音源のカタログスペックが、大体当てにならない。海外メーカーの、鼻息アラく、内容もアラだらけ、欲しい情報が何一つ見つからない「フワフワたわ言」美辞麗句まみれの製品ページを目にするたび、くそでかため息を禁じ得ない。
デモ演奏があるなら「疑って聴く」べきで、メーカーの、プロのミキシングによってはぐらかされた、その下にある「隠しきれない違和感」を信じるべき。
無料音源はほぼ、所詮無料。多くが、音源があまりにも高級品だった時代に作られた、今となっては骨董品。あるいは素人が手遊びに「習作」として放置したもの、若しくは業者の撒き餌だ。
−ピアノ演奏用としての具体的回答−
自分がいろいろ触れてみた結果、結局月並みだが、定番有名メーカーの高価で大容量(数十gb〜100↑gbクラス)音源でないと音に重みがなく、演奏時に何処か不自然な粗が発生して気持ちよく演奏できない、という超高価い勉強になってしまった。
特に、データ容量の軽い「モデリング技術」を謳うものはまずおすすめできない。モバイル環境で持ち歩くための妥協、またはDTM用で、メインに選ぶときっと後悔する。
あと、やたらにマイクポジションが多いブレンド型音源も注意が必要だ。マイクごとにデータ容量は跳ね上がるし、もったいない根性でマイクを重ねると「音声波形(位相)の打ち消し合い」が起こり、音がもっさり厚化粧のオバハンみたいになったり、却って響きが悪くなったりする。
因みに、音源として自分が許容できる品質であると感じたのは『CFX CONCERT GRAND (Garritan)』だが、データ量が凄まじく(120GB)、起動読込みにすら結構な待ち時間を要するので手軽な気持ちで使用できない。
軽量でリニアな応答性であれば『Pianoteq (Modartt)』だが、私にはどうしても音が不自然で、脳が拒否するため制作以外では使いにくい。(人による)
−演奏用おすすめピアノ−
以下に、幾らか良いと感じたものを列挙する。これは、私が上記のごとき憾みを抱いて煩悶した末の諦めにも似た境地——初級程度のクラシック曲を楽しんで弾きたい——という基準での私的な選考であり、DTM用途ならもっと別のピアノのほうが音抜けが良いはず。用途によってもベストバイは千差万別である、と断っておく。
比較的データが軽量で、安価で、ライセンスの管理が煩雑でないものを選んだつもりだが、それでも全くズブの素人、という方にとっては意味不明な暗号か、登頂不可能な懸崖にしか見えないだろう。(iLok も最近はUSBドングルに依らずPC本体やクラウド上でのライセンス管理が主流となっており、比較的楽なライセンス管理方法といえる。ただしPCクラッシュ時ドツボるのは、どんなアクティベート法でもかわりはない)
■Garritan CFX lite:上の120GB音源の簡易版だが、読み込みが早く響きも十分に YAMAHA の音がする。標準基準。
■XLN Audio Addictive Keys (Modern Upright):例外的に、1GB程度のサンプルデータでありながら驚くほどリアルな響きがする。グランドピアノも良いが、こちら YAMAHA アップライトの鄙びた音響が素晴らしいと思う。特に「Ambient」というプリセットが、狭い自室で弾いているかのようなバイノーラルな響きがして良い。
(蛇足だが、グランドピアノには無料版があり、製品版と全く同じ音響性能だが、音域が非常に制限されている。バロックチェンバロ曲を弾くのなら可、だろうか⋯⋯)
■UAD Audio Ravel:昔の YAMAHA 電子ピアノのような強打時の「カーン!」という、弦が限界ギリギリで上ずっている音が入っている。但しベロシティカーブ等の細かい設定が出来ず、製品としては片手落ち。9GB。
(なお、同社から無料でダウンロードできる簡易DAW「LUNA」内で使用できる標準付属音源には「RavelLE」という音色が入っている。強打音は含まれないが無料とは思えない実用的で乾いた音がする。「LUNA」の起動が些か重いのだが、完全無料で、という条件下なら推奨できる。)
■Boz Digital Labs New York L 1926:100年前のスタインウェイ・ピアノ、古いピアノの臭いまでしてきそうな音がする。データは8GBほど。
(liteバージョンもあり、こちらは 50MB という嘘みたいな軽さで実用十分な音が出るうえ、本家サイトでは度々無料配布も行われている。音質面では完全版に及ばないが、驚異的軽量さは別の意味で利用価値が高い。)
■Melda Production Meldway Grand:40GB とかなり重いが、データ量相応のしっかりした音が出る。が、優等生的で人によっては面白みを感じないかもしれない。度々セールを行っており、数千円台で購入することができる。
■Tracktion Stonegrabber D-232:同社の「Attracktive」という無料サンプルプレイヤーの拡張パック。元ネタのスタイングレーバー・ピアノのクリアで乾いた音がする。弱い音が出しにくく設定もほぼできない、などメインピアノには力不足だが頻繁にセールをしており、3000円程度で入手することができる。5GB。
※ なお、この「Attracktive」というロンプラ―は、以前の投稿『シンセサイザーコンプレックス』で触れた、まさに「有名音源エエとこどり」のシリーズとなっている。価格は20~30ドル程度で、頻繁に40%程度の割引があるので、なんちゃってDTMer には重宝する音源である。
■TOONTRACK EZKyes 2:DTMに必須とも言える自動演奏付き作曲支援音源、素直で弾きやすい音がする。インストゥルメントならこれで十分だが、演奏用限定とするには高価い。多くのピアノ(やシンセやオルガン)の拡張データが販売されているが、それらは少々キャラが強すぎるきらいがある。3.6GB。
■UJAM Virtual Pianist (RELIC):これもDTM制作用側面の強い音源だが、いかにもな箱鳴り感の強いアップライトピアノの音が収録されている。サブ用途としては面白い。このシリーズは数種類のピアノが販売されているが個人的にはこれ一択。5GB。
■UVI Model D:「UVI Workstation」という無料サンプラーで使用できる専用音源。サンプル数が少なく古い音源のためリリース音がブツ切れだったり、とそのままでは聴くに耐えないが、ベロシティカーブを強めに調整しリバーブを深めにかけるとかなり気持ちの良い音になる。あと、比較的安い。700MB。
■PSound GRAN CODA:同じく「UVI Workstation」用音源。コンサートホールで録音されたファツィオリ・グランドの絢爛豪華な響き。音質の割には 10GB 程度、と使いやすい。素のままでは和音強打で音割れするので、少し調整が要る。
−なおUVI−
UVI のサードパーティ音源は、比較的データ量が軽く、GUI や仕様に気合の入った音源が多い。ピアニストには散財の坑、要注意⋯⋯(褒めている)
・・・等など、比較的使いやすいものだけを挙げた。
■例外的に 有償 KONTAKT 音源(HALion 有り)だが Sampletekk の SSG(スモールスタジオグランド)というピアノは古い製品だが弾きやすい。音質は超リアル志向からは劣るものの、ベロシティレイヤーが突き抜けて多く、音に表情があり旋律などがきちんと抜けてくる(昔はsfzバージョンもあったのだが、今はどうなのか⋯⋯)。なお、同社の多くのピアノは、音は魅力的だが演奏には些か暴れ者で手を焼かされる。最近はいくつかの製品を簡易VST化してくれているようなので、セカンド選択肢としては、それらも考慮に入れられる。
ここまではおすすめ楽器を解説してきた。
ここで終わってもいいのだが、私のいらぬ老婆心から次はおすすめ「除外リスト」を解説したい。断っておくが、これらはやはり「演奏性」という観点での選別である。これから解説する様々な音源は巷においてピアノ音源の「大正解」として度々紹介されているものもある。それは、機材を解説する人の目線がいかに DTM という立場からのものであるか、また音源を演奏用にしたいという考えがいかにニッチなものであるか、という証明なのかもしれない。
若しくはコイツ(筆者)が如何に救いようのない散財バカか、という証明か。
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