第8話 平穏な日々

 綾香は、のぶゆんを陰から見ていて、そのささくれた分厚い手に感心していた。

 悠作が言った。

 「のぶゆんさんは、あんまり喋らない人なんですね」

 光ちゃんが一言言った。

 「うん、でも、カッコいい」

 そう、言って光ちゃんは、何度も、頷く……。

 リサが、言った。

 「そうね、のぶゆんさんは、ここの用心棒が、いいんじゃないかしら……」

 すると一同は「ははは」と、笑いあった。

 そこに、のぶゆんの笑顔があった。

 のぶゆんは、余り喋らないが、誠の仲間たちは、そんなのぶゆんを、好意的に受け入れている。

 そんな、様子を、誠は、嬉しそうに見ていた。


 のぶゆんが、過去に、堪えていた堪忍の緒が切れて、辺り一帯を、誠と一緒に、修羅場にした事を思い出した。

 のぶゆんには、長所が、欠点に変わる怖さがある。

 あれから、のぶゆんは、変わったのだろうか? そして、私は、あれから、変われたのだろうか? ……


 そこで、誠は、のぶゆんの所に行って、彼に申し出をする。

 「どう、ここに通ってみる?」

 すると、のぶゆんは、『そうだな』と、頷いて、その申し出を受けた。

 それから、のぶゆんが、利用を申し込んで、入って来るのに時間はかからなかった。今は、体験利用の期間を過ごしている……。

 そんな、のぶゆんは、自分の居場所が、見つかって、楽しそうにしている。

 誠がのぶゆんに言った。

 「のぶゆん、みんなのところに来ないか? ……」

 誠は、のぶゆんに、ほほ笑むと、のぶゆんを連れて、悠作や、光ちゃん、リサに綾香達のところに行って、お喋りを始めると、一緒に楽しそうに笑いあった。

 それから、何事も起こらず、平穏な毎日が続いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る