第5話 〖Accident〗

ダァン


小鳥遊が男の首を校庭の地面に押し付け、

巨大なクレータを作る。

腕は元の2倍の太さになり、完全にプレデターとなった小鳥遊は男の身動きを止めるには十分であった。


保科は教室の壁にぽっかり空いた穴から他の生徒と共にプレデターと謎の男の戦いを見ていた。


「僕は、あなた達が怖くてたまりませんっ!!」


「人を怖がるプレデターか。なんとも興味深いな。」


「そもそもあなたたちっ、誰なんですか?」


低い声で小鳥遊が問いかける。


「化け物に教える名前などない。」


そう言って男は小鳥遊の手のひらを刀で貫く。


「__っ!」


痛みを感じたのもつかの間、男の仲間が統率の取れた軍隊のようにアサルトライフルを撃ってきた。


腕を重ねてそれを防ぎながら彼らに近づく。

ダンプカーのような力を引き出し、腕を振るうようにして隊員をまとめて蹴散らした。

一人一人はあまり強くないものの、

銃弾が常に当たるのは”少し”痛い。


「…隊長、撤退を望みます。」


「拒否する。進め。」


「”プレデター”の身柄をなんとしてでも拘束しろ。」


「違う、僕は人間だ!」


迫り来る隊員を腕で跳ね除けながら徐々に男に近づく。


「そうか、人間か。」


「そう、僕は」


「__でもな。現役軍隊と差し支えないうちの隊員をいとも簡単に倒しながら、かすり傷程度のやつを」


「世間は人間と呼ばないんだ。」


そう言い終わった刹那、

刀が耳元を通る音がし、

僕の二の腕に三日月のように深い刀傷が付いた。

やはり、こいつの攻撃だけ何か違う、他の奴らより…


「他の奴らより痛いだろ、化け物。」


「これはな、月の欠片でできた刀だ。」


はっ、と目が開く。白目のない真っ黒な目が。


「…なにか気づいた顔だな。そうだ。お前らプレデターの弱点だ。」


「だから僕は、プレデターじゃ…」


そう言い終わらないうちにまた刀が僕を切りつける。

月のような白い刀傷が、身体中に広がる。

だが、耐えられないほどでは無い。


「ここだっ!」


刀と刀の隙間に腕を通し、男の顔面に一発決める。

小鳥遊は吹っ飛ばされた男へと足を踏み込んで走り幅跳びのように追いついた。


そしてもう1発、重い拳を入れた。

男は職員室まで吹っ飛ばされた。

男が耳元の通信機に指を当てる。


「隊長、再度撤退を要求します。」


「…許可する。総員直ちに撤退しろ。」


「だが、俺はあいつに一泡吹かせてから帰る。」


そう言って男は通信機を足で踏みつけた。


小鳥遊が男までもう少しという所まで来る。


「もういいだろう。そろそろ”満ちる”頃だ。」


小鳥遊の拳が男の顔を捉えた瞬間、


「奥義、月下美人。」


ザシュッ


小鳥遊の右肩から左脇腹にかけて、斜めの深い刀傷が入る。

小鳥遊の胸から噴水のように黄緑色の血が噴き出してきた。


「はっ……?」


理解が追いつかないうちに男が話し始めた。


「まさか奥義を使う羽目になるとはな。」


「俺の攻撃は相手を切り付ける度に威力が強くなるんだ。」


ハァ、ハァ、と小鳥遊が胸を抑えながら小刻みに息を吐く。


「まるで月の満ち欠けみたいにな。」


「”月下美人”はその最大火力の技。立ってるだけで大したものだ。」


そう言って男はやってきたヘリから垂れ下がるハシゴに捕まり、去っていく。


「31日後にまた来る。今度は逃がさん。」


僕の胸に、消えない恐怖と傷跡が残った。


第5話 〖Accident〗

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