第2話 〖Algorithm〗

「それでは今から採用試験を始めまス。」


「……?」


何が起きているのか分からない。

僕はこの人、マスターに僕の個人情報を紙に書かされた後、彼の経営するの喫茶店のトイレで待ってて欲しいと言われて、

戻ってきたらこれだ。


マスターの隣ではクラスメイトの保科さんがプルプル身体を震わせ、僕と頑なに目を合わせようとしない。


「ことりあそ…なんて読むのこれ。」


「たかなしです。」


「なかなかインタレントな名前だネ。」


インタレントな見た目をしてるあなたに言われたくない。

アフリカ系かと思ったら坊主に着物、

個性以外の何者だよ。


「では、小鳥遊クン。面接を始めまス。」


「まず年齢と志望動機、教えてネ。」


「年齢は16で、志望動機は…というか保科さんがここに連れ込んだのでは…?」


ブフッと保科さんが吹き出す。


オッホン、とマスターが咳払いをする。


「職業を教えてくださイ。」


「学生、と強いて言うならプレデター?」


「政府に見つかったら一発モルモットのネー」


「一応恐怖の象徴ですよ僕…」


「そんなのいつの話だと思ってんノ。」


マスターの手に持つボールペンがクルクル回る。


「…恐怖でプレデターに変身する人間、ネ。」


「やっぱ気味悪いよキミ…」


ごんっ


保科さんのげんこつがマスターに下される。


「いいから、さっさと面接してください。」


「オーキドーキ…」


「でもその前二、明日の期末試験には出られるように何トカしよう。」


そう言うとマスターはカウンターへと向かい、

ひとつのコーヒーマシンを出してきた。


「…これは?」


「そんなに焦るのはドントハフトゥ。」


「マズハ小鳥遊クンにいくつか質問。」


「プレゼント制度ってナンだと思う?」


「確か、ポイントを貯めれば欲しいものと交換出来る、みたいな…?」


「あーあのプレゼント制度の決済みたいなの?あれは1部はプレゼント制度を使ってるけど…本質はそこジャナイ。」


首を傾げる僕の目の前でマスターが手をパンと叩く。


「それじゃあ小鳥遊クンに一つ、君の知らないことを教えてあげよう。」


「プレゼント制度は星のエネルギーをプレゼントに変換してるノ。日光とか、地熱とか。プレデターは星のエネルギーを糧にする化け物。だからこれを餌にしてエネルギーを効率良く吸収する。」


「昔はこれでプレデターは地球を乗っ取ろうとしたんだけどネ。今は逆に経済発展の礎になってるし、使うエネルギーもなるべく沢山あるやつを使ってる。」


「それとコーヒーマシンになんの関係が?」


「グッドクエスチョン、小鳥遊クン。」


「今日本でメジャーなプレゼントの生成方法はレアアースとかカナ。吸収したエネルギーを媒介にしてプレゼントを作る。」


「これは言わばそれの小型化。自身でのエネルギーの吸収速度はゴミだけど、これはエネルギーそのものをプレゼントにできたり、色々利点がアル。」


そう言ってマスターはポケットから石を二つ取り出した。


「例えば、今メモリは0ダロ?」


「デモ、コーヒーを入れるみたいに石を入れて、ボタンを押すと」


「メーターが30になった。」


「今入れたのはリチウム鉱石と、月の欠片。」


「そして、これを使うモウひとつの利点はコレ。」


そうして色々ボタンを押し、紙コップを機器の中心にセットしてボタンを押した。すると


「___っ?!」


眩い光が一面に広がる。

それは閃光弾のようで、目が開かない。

やっとの思いで目を開けると


「注射器…?」


「そんな感ジ。」


「政府の管理するプレゼント制度は、作れるものに限度があるんだよネ、だけどこれにはそれがない。」


まだ目を瞑ったままのマスターが喋る。


「これをどうするんですか?」


目を擦りながら保科さんが呟く。


「コレはね、プレデターにトッテ劇薬。だから一時的にプレデターの変身を抑えられる」


「…はずだよ、ウン。」


いや、


「そんな訳わかんないもん体に入れられませんって…」


「じゃあ根拠を教えてやるヨ!!」


マスターがやっけになる。


「まず、プレデターは星のエネルギーを好む。これはさっき説明しただろう。」


「けど、エネルギーにも好き嫌いがあるらしい。特に月のエネルギーは彼らにとってはかなりマズかった、というかもはや毒みたイ。」


「これはその月のエネルギーを体に入れられるヤツだよ。」


…何を言ってるのかさっぱりわからない。おそらく分からないところは保科さんと同じだろう。それは__


「マスター、”ツキ”ってなんですか?」


保科さんが怪訝そうに問いかけた。


「あーソッカ…月知らないのカ…」


そこから2時間弱、マスターによる月の熱弁が始まった。

まるで親が子供に自分が子供の頃のアニメを紹介してるみたいだ。


月、漢字ではこう書くらしい。元々空にあって、太陽が沈んで夜になると出てきたとか。言われてみれば教科書で聞き馴染みがある気がする。


いまいち月を理解できないが、1度見てみたいと思った。


というのをマスターに話したらとても嬉しそうな、でもそれと同じくらい悲しそうな複雑な顔をしていた。


注射器を眺めながら家に帰る。あの後色々細かい計算式や資料が出てきたが、要するに月はプレデターにとって弱点で、これを取り込むと一時的にプレデターになるのを防げるようだ。


それと同時に、マスターの忠告を思い出す。


「デモこの薬はほんとに何が起こるかわかんないから、あんまり自分を刺激しないように。特に怖くなっちゃダメ。」


あれ、そういえば面接ってどうなったんだ……?

喫茶店の方向を振り返る。

街灯で僕の角は鈍く深く輝いていた。


第2話 〖Algorithm〗

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