【一花咲かそう企画作品】月みぬそのおもひ竹取物語

雪月花

月みぬそのおもひ

——嫌いだ。

この世に生まれてきた自分が、病弱な自分が、迷惑をかける自分が………。





僕は生まれつき、体が弱い。


その上、貧乏な貴族として生まれたから、本当は働きに出なくちゃならなかった。


だから、僕の分までお母さんが働いた。


でも……それが原因で、お母さんは流行り病でこの世を去った。


「ごめんなさい」それすらもお母さんは遮りながら死んでいった。


僕に「あなたのせいじゃない」とでも言うかのように………。


しかし、悲しみにくれている暇もなく、お母さんの奉公先の九郎右衛門から「あなたの姉を家で働かせてほしい」と頼まれた。


父はそれを決めることになったが、九郎右衛門の悪評、お母さんがその犠牲になっていたことを黙ってお母さんを九郎右衛門のつれていっていたことをきっかけに、不甲斐なさで答えを出せなかった。


その後、何度も答えを聞こうと訪れた九郎右衛門だったものの、父は落ち込み、酒に溺れてしまったため、返答ができなかった。


姉はそんな父の様子を察して、何も言わないでついていった。




僕はついていけなかったものの、姉からの手紙で情報をもらった。


姉は「かぐや」と名乗り、遊女として生きていること。


また、九郎右衛門から売れる遊女となるために歌や演奏、舞などを習い始めたこと……。


定期的に送られる手紙から共通して読み取れたのは「姉が生きている」「遊女として成長している」ということがほとんどだった。




それからしばらくして、姉は瞬く間に都一の遊女となった。


同時に、父は姉にお金の催促を求めるようになった。


僕は………この頃から父が嫌いになった。


姉が九郎右衛門のところへ行ってからも、父は真面目に働かない。


それどころか、どんどん酒におぼれていった。


その上で今回の催促……。


そんな僕の思いとは正反対に、姉は黙って父へお金を渡し続けた。




姉の成長は止まることを知らないかのように続いていき、ついには帝に嫁ぐこととなった。


父はそれを鼻高々に自慢し続け、ますます僕は父が嫌いになった。


一方、姉は遊女となり、父へお金を渡すようになっても僕に対して優しく接してくれた。


休みを貰えば僕のところへと来てくれ、僕の悩みを聞いてくれたり、土産としてお菓子をくれる。


僕が野党に襲われたときなんて、姉は一人で僕のことを助けに来てくれた。


僕の家族は姉だけのように感じた。


…しかし、幸せと断言できなかった生活は一気に明確な”不幸”へとなった。


それは、帝の毒殺だった。


姉は犯人として斬首され、父も責任を同じく、首をはねられた。


僕は「かぐや様のおかげで助かったことがある」と話す女性に出家する形で命だけは助かった。




それからどれほどの月日が経っただろうか……。


その女性に出家し、普通な生活を行っていた。


しかし、僕は未だ「自分だけ助かった」「姉に生きてほしかった」「母にも死んでほしくなかった」………。


数え切れない後悔や申し訳無さに押しつぶされる。


そんな消せない後悔や「ごめんなさい」が僕の中をこだまする。


僕を出家させてくれた女性も、僕を助ける方法がなく、悩む毎日だった。


そんなある日、僕は筆を持つよう勧められ、その上で二、三言耳打ちされる。


「せめて、物語の中だけでも母と姉に幸せにしてみませんか……。」


その言葉で僕は筆を進めた。


その後、僕が執筆した物語は広く……広く、広まったと言う。


その題名——





『竹取物語』

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