第2話 暇潰しの拡大

 転生して数年経ち、俺は5歳になった。今日は、俺とアリスの七五三しちごさんらしい。


「まぁ!まぁ!ソーマもアリスちゃんも着物姿素敵よ〜!」

「おにしゃま。アリスおねしゃん。しゅてき、しゅてき」

「だな!これも日本の異能者が減って平和になってきたお陰だ。ハハハ!!」


 ウチの両親は俺とアリスを溺愛しているのだろう。俺達の晴れ着姿をパシャパシャとカメラで撮っている。


「……ソーマ。どう?私、綺麗?」

「ん〜?綺麗綺麗。アリスはなんでもにあ……ごはぁ?!」

「……ソーマ。それ褒めてないわ。だからお仕置き」


 2年前に出会ったアリスは新しい家族になった。最初に会った時、外にアリスを放置していても危ないので、地下シェルターに一緒に連れて来て。母に紹介した。



(オンナノコ。ツレテキタ)

(ワタシはアリス)

(誰?!この可愛い女の子?!)


 母も最初は驚いていたが、天然な性格な為、行くても無いアリスを引き取って家族に受け入れた。


 香取神宮という由緒正しい神社に来ている。


「この世界にも香取神宮ってあるんだね……危ない感じが凄いけど……」

「この世界にも?何を言っているのソーマ……あれ?居ない?」


 前の世界にはモンスターは居た。現代魔術世界なら当然か。そして、この世界も前の世界と同じ分類。現代魔術世界だった。


 まあ、モンスターは存在しないが怪異は居るらしい……


【ギャアアア?!】


「『神威・牢』……なんだ君は?僕とアリスに何をする気だった?」


【上手そうな子供……食べたい。食べた……イギャアアア!!】


 長い8本の足。蜘蛛くもの様な姿に人に身体……そういえば、前世で脚長おじさんという都市伝説があったのを覚えている。


「今日は七五三とやらで、めでたい時らしい。ママとパパが気づく前に会えて良かったよ。怪異さん。『虚色きょしき』」


【ケケケケケ!!お、お前。その力は?!まさか。お前が、あの神隠……】


 脚長おじさんは消えた。いや、僕が消した。跡形もなくこの世界から別のどこかへと消した。これも『無限』魔術の力の1つ『虚色きょしき』。


「香取神宮の怪しい気配が消えた?空気が清浄化していく……おっと。ママとパパの所に戻んないと」


 なんだか知らないけど。神社内に渦巻いていた気持ち悪さが無くなった。



「いよおぉ!!お祭りじゃ!今日はなんたる日か!めでたい!めでたい!この神社内に居た大怪異が払われた。今日は祭りじゃあ!祭り!」

宮司ぐうじ様。落ち着いて下さい~!」


 家族の元へと戻ると、禿げたお爺さんが発狂しながら踊っていた。


「貴方、来栖くるす先生がおかしくなったわ」

「おかしいのはいつもの事だろう。それよりも今日は祭りだとよ。酒を貰おう。花梨かりん

「今日の主役は子供達よ!七五三なんだから我慢しなさい。フン!」

「がはぁ?!ご、ごめんよ。花梨」



「何あれ?」

「夫婦喧嘩とお祭りだって……また何かの暇潰しをしてきたの?ソーマ」

「暇ちゅぶし、暇ちゅぶし~!」


 帰って来たら、母と父は一目もはばからずイチャつき。それを少し離れた場所でアリスと妹の夢乃がリンゴあめをなめながら見ていた。


「何でリンゴ飴?」

「お祭りですって、悪霊退散ですって……リンゴ飴甘」

「はい!おいちぃ~!」


 アリスの言っている意味が分からなかった。


 が、とにかくお祭りらしい。確かに香取神宮の神幸祭しんこうさいは有名だ。かなり盛大にり行われる。


「悪霊退散~!悪霊退散~!怨、モノノ怪……」


 懐かしい歌が本殿から聴こえて来る。前世の世界で流行っていた"レッツゴーお師匠さん"に曲に似た歌を和尚が唱えている。


「確かに日本の治安も良くなってきてる。なんでかな……リンゴ飴」


 その後、七五三のイベントは無事に終わった。



◇◇◇


 そうそう、俺は今でも暇潰しを続けている。毎日の魔力鍛練のせいか、体内の魔力が増加。それを発散しないと体調を崩すという最悪な状況になってきている。


 まぁ、これも今だけの話で、身体がちゃんとした魔力のうつわとして成長しきれば改善されていくのだが。

 

 夜になるとアリスを引き連れて、日本全国をどこへでも瞬間移動。悪いヤンキー達を太平洋の大海原へと放流している。


 しかし、最近はヤンキーの数が激減し困り果てていた。


「や、止めろ!俺達が何をしたっていうんだ!クソガ……」


「はいはい。『神威』『神威』と……とうとう沖縄のヤンキーまで太平洋に放流しちゃったから」

「ソーマ〜!……サーターアンダギー美味し」

「……また食べてるし。それよりもどうしよう。日本のヤンキー居なくなっちゃったよ。アリス」

「ん〜?……それなら海でも渡る?私、韓国行ってみたい。キムチ食べたい」

「韓国?……そうか!移動距離を伸ばせば魔力消費もできるし、海外産ヤンキーも放流できる。いいね。行こう韓国」

「やった〜!キムチ〜!キムチ〜!」


 こうして、日本のヤンキーを放流しつくした僕達は、韓国に瞬間移動し海外産のヤンキーを放流し始めたんだ。



数ヶ月後……


〖アジア圏の強力な異能者達が次々に行方不明になっております。これにより、アジアの主要国は日本同様に居住区域を地上へと移す為の……〗

〖日本も支援団体から数名の魔術師を派遣し。アジア各国の支援に乗り出していく予定です〗

〖衰退していた世界が日本……いえ、アジアを中心に抜け出しつつあります。今後は連合軍として組織を立ち上げを行うと政府関係者は……〗


「まあまあ。日本だけじゃなくて、アジアでも異能者さん達が居なくなり始めてるのね。これじゃあ、パパの仕事もハンターから教師になっちゃうかもしれないわね〜!」


 連日流れてくるニュースを見て、喜ぶ母。


「うん。どんどん平和になっていくね。良いことだね。ママ〜!」


 可愛い子供らしくそう告げる俺。良かった。なんだか知らないがこの世界も少しずつだが良くなっているらしい。


「……四川しせんの麻婆豆腐美味しい!!」


 そして、アリスは昨日の夜に行った。中国・四川の麻婆豆腐を美味しそうに食べていた。


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