転生前に魔術を極めた魔術師、『無限』なる最強の魔術を手に入れたので、2度目の人生は静かに暮らしたい

冰藍雷夏(ヒョウアイライカ)

第1話 転生魔術師

 俺の死因は毒殺だった。魔術師ソーマは毒をられて死んだ。


 現代日本で最高の魔術師なんて言われた俺が毒殺で最後を迎えるとはな。


 まぁ、仕方がない。あの薬屋は可愛いかったのでれていた。

 完全に油断していた俺が悪いだろう。


 そして、死んであの世に行くと思われたが、そうではなかった。

 

 目が覚めると俺は赤子の姿になっていた。そして見知らぬ若い女性に優しくかかえられていた。


「………ぁぅ……ぁー……」

「意識が戻った?!旦那!お子さんのの意識が戻ったわ!」

「何?!それは本当ですか?!良かった!産まれて直ぐに動かなくなったから、死んでしまったものかと心配で。心配で……」


 白衣を着た医者と、茶髪のチャラそうな男が俺の事を心配そうに見つめている。


「……ぁぅ……ぅぁぁ……オギャー!!オギャー!!」


 そして、俺は言葉が喋れない。なので、とりあえず叫んでみるかと思い、叫んだら泣き叫んでしまった。


「……良かった……息してくれてる」

「あぁ、花梨カリンの出産が上手くいったと思ったら、全く動かなかったから俺も焦ったよ。よく頑張ってくれたな」

「貴方……ありがとう」

「あぁ、こちらこそ、無事にソーマを産んでくれてありがとう。花梨」


 俺を間にはさんで、嬉しそうに抱き合う若き男女。どうやら、この2人が俺の母と父らしい。


 ふむ、成る程。どうやら俺は死んだ後、この赤子に産まれ変わったのかもしれん。


 なんせ、俺の生前の力の全てが、この赤子には宿っている。なぜ分かるかって?考えるな感じるんだの精神……つまり根性論で理解した。


 つまり俺は1度死んだはずの2人の子供の代役として、この身体に入れられたわけだな。


 生前、俺を嫌っていた魔術師から受けていた何かの呪いが関与して、こうなってしまったのかもしれないな。どうしたものか……とりあえず泣き叫んでおくか。


「……オギャーオギャー!」



◇◇◇


〖世界各地で暗躍する異能者や怪異のせいで、世界人口が年々、減少傾向にあり……〗

〖異能者による民間人への殺害が日常的に……〗

〖近年、怪異が活発化し。魔術師が足りなく……〗


 赤子に産ま変わって、早くと3年の月日が経った。今は、ボーッとしながらテレビを眺めている。


「このセカイ………とんでもないセカイ」


 どうやら、この世界も魔術が存在し、魔術師がいる。俺が生きていた現代魔術師社会に似ている世界の様だ。


 そして、生前の世界と違うのは、この世界はモンスターでなく"怪異"と呼ばれる存在がひしめいて悪事を働いているらしい。


 そのうえ連日の様に"異能者"と呼ばれる犯罪者が大事件を起こし、とある国の都市は世紀末の様な光景が広がっているのをテレビで見てしまった。


「………てんせいしゃきマチガエタ〜!」


 生前の世界は優しい世界だった。秩序がちゃんとあり、皆が平等の平和な魔術師の世界だった。


 しかし、ここは世界各地の治安が悪い世界だ。


 ……産まれた時、薄々うすうすは気づいていた。父の喜一きいちは顔にいくつも傷があったし。白衣の医者も片足が無かった。


「あら、ソーマ〜!外は危険だけど。テレビばっかり見ちゃ駄目よ。嫌なニュースばかり流れて来て、嫌な気分になってしまうもの」

「………うぅ〜!」

「はいはい。ごめんね〜!夢乃ゆのちゃ〜ん」


 母の花梨が、去年産まれたばかりの妹を抱っこしながら、俺に忠告した。


「リョウカ〜イ!ママ〜!」


 などと返事をしながら、このでの娯楽は、テレビを見るかとか暇潰しの脳内魔術遊びしかないんだがな。


「……メイソウでもしよう」


 俺は、いつもの暇潰しを始めた。目をつぶって、体内の膨大な魔力を練り上げる。


 産まれたての頃は暇だった。毎日毎日、ボーッとシミだからけの天井を眺めていたものだ。

 

 外は危険がいっぱいだからと、1ヶ月に数度ある外歩き以外の、民間人による外出は政府により禁じられている。


 そこで俺が考えた暇潰しをする為の遊びが、魔術融合だった。


 生前に得た『奇跡』の魔術と、転生した身体に宿っていた『崩壊』の魔術を融合させて新しい未知の魔術を作る遊びを産まれた時からずっとしていた。


 そのせいかしらないが、自身の魔力は増える一方だった。そう、まるで無限の魔力の様な力を――――


「ムゲン?!…………ちゅかんだ。ボクの魔力のほんしちゅ……」


 魔術の才能というのは、いついかなる時に目覚めるか分からない。

 そう、ふとした瞬間に真夜中にお漏らしをするような3歳児が『無限』という最強の力に目覚める可能性なんてことがある。


 俺は『無限』という世界最強の力に目覚めた。


「………イドウモできそう。クウカンイドゥ」


 そう告げた瞬間。俺は地下シェルターから、危険な地上へと瞬間移動した。



◇◇◇


「……………ここはどご?」


 外に移動し、周辺を見渡すとケンシロウよろしく。世紀末の世界だった。


「あん?兄貴〜!長島の兄貴〜!ガキが居ますぜ!!捕まえてますかい?!」

「あん?ガキだぁ?!バカ言え!こんな所にガキなんて居るかよ! それよりもさっさと依頼の九条家の娘をあの人に……て!マジじゃねえか。早速、捕まえ……」


「うるしゃいとんでけ……『カムイ』」


「は?ガキ。お前今、なんて言っ……」

「いいから黙って捕まれ」……


 俺は、うるさいヤンキーみたいな2人組を太平洋の大海原の遠くに飛ばした。運が良ければ、鯨に乗って帰って来れるかもしれない。



「ウワプッ!なんでいきなり海に居るんだ?!俺等はあぁ!!」

「た、助けろ!!俺は泳げないんだよ!」

【ケケケケケ!!!】

「うわぁあ!!怪異ですぜ!兄貴」

「バカ!なんで俺を盾にしやがるお前……ギャアアア!!」



 遠くの大海原で叫び声が聴こえた気がした。


 しかし、この『無限』の力、凄く使えるな。


「これでニホンのおおそうじ……う、うん。セカイノおおそうじできる」


 そして、俺はとあるを思いついた。


「………なんですか?私をさらって何をする……の?アナタダレ?」


 暇潰しに向かおうとした時だった、ヤンキーの1人が持っていた服の中から金髪の幼女が現れた。


「えっと……お…ボクソーマ」

「そう。なら、わたしをほごしなさい。わたしは今、ひとりボッチなのよ」

「え〜!」


 何故か、女の子を保護する事になった。仕方がないから、その後は女の子を連れて、俺の暇潰しに付いて来てもらった。


 ヤンキーみたいな人達を大海原へと放流する暇潰しに。



 そんな暇潰しを数ヶ月しながら、日本中を瞬間移動して遊び回ってたんだ。



〖日本全国で犯罪を働く異能者が、次々に行方不明になり。日本の治安が以前よりも良くなりつつあります〗

〖……悪質な財閥が解体され、地下シェルターの解放が……〗

〖このまま、日本の治安が良くなれば。地上再建も夢ではありません〗


 テレビから最近のニュースが流れてくる。


「なんだか。最近、明るいニュースが増えたわね〜!ソーマ〜!アリスちゃん。あんまりテレビに近付いて見ちゃ駄目よ〜!それと、地下シェルターから地上に移住するから準備しなさい」


「「は〜い!」」


 なんでか知らないが。以前よりも日本の治安が良くなったらしい。不思議である。



 


最後まで読んで頂きありがとうございます。

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