第16話 調査依頼

 山本保志は、名刺を1枚取り出した。

「ここへ行け。俺の四井相互銀行で、表に出せない裏の問題で、本当に困った時に頼りにする男だ。」

 名刺には、『古田調査会社』とあった。


 翌日、深山壮太は、名刺を頼りに『古田調査会社』を訪ねた。

「すみません。深山と申します。」

「はい、四井相互銀行の山本さんから、連絡をいただいています。古田です。」

 年齢は40くらいの古田は、物腰は丁寧だが眼光は鋭い。

 深山壮太は、これまでの概略を話した。

「なるほど、かなり珍しいケースですね。私もあまり経験がない事案です。」

「そうですか。」

「1つお聞きします。深山さんは、この調査を依頼するにあたって、何を明らかにしたいのですか?」

 壮太は、意表を突かれた、そうだ。今、俺は何を調べているんだ。千草を愛しているのに、彼女を疑ってその嘘を暴いてどうするんだ、俺は。

「ちょっと考えさせてください。」

「どうぞ。」

 しばしの沈黙が会議室を支配した。

「おまたせしました。妻は、福島でこの神成祐介と会っていたのか?何のために会っていたのか?そして、なぜ、僕や家族に嘘をついていたのか、それを知りたいです。」

「知って、奥様とはどうされますか?」

「そ、それは、彼女の話というか気持ちを聞いて考えます。話ができるようになれば、ですけど。もし、裏切られていたら辛いですけど。」

「分かりました。」

 古田は、壮太の話を聞いてうなずいた。

「私の考えを申し上げます。深山さんは、この調査を依頼しないことをお勧めします。」

「ええ?な、なぜですか?」

「今、奥様とは少しコミュニケーションが取れるようになってきたんですよね。このまま、奥様の病状の回復を一緒に図って、お子様たちと幸せに過ごしていくのが、よいと思いませんか。」

「そ、それは・・・。た、確かに・・・。」

 壮太は、再度沈黙した。


 



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