第13話 男の正体

「壮太、もう1回、嫁さんのスマホを調べてみろ。」

「うん。」

 千草のスマホを出して電話帳を調べる。

「あったか?」

「あった!」

 そこには、『神成』の登録があった。履歴も調べる。神成の名前があった。日付は・・・・バス事故の数日前だった。

「神成から、妻に電話があった。事故の数日前だ。」

「そうか。」

 班目康太が、焼き鳥を1口食べ、ビールをのどに流し込み口を再び開いた。

「じゃあ、ここまでを整理しよう。」

「そうだな。」

 保志も同意する。康太が続けた。

「壮太の妻、千草さんは、東北自動車道で福島行の高速バスに乗って事故に遭った。

 壮太には実家に行くと言っていた。実家は静岡で逆方向。高速バスのチケットの購入履歴からは、年に数回、福島に行っていたことが分かった。ただし、福島を訪れることは隠していた。

 では、千草さんはなぜ福島に行ったのか?仕事上に関わりのある人間は、福島、東北方面にはいない。親戚もいない。大学時代の同じサークルに所属していた、山本祐介という男が福島にいてかつてみちのく銀行で働いてた。その男は、現在は『神成』という姓に変わっている。そして、千草さんのスマホには、事故の数日前に神成からの着信があった。さあ、諸君、これから推測できることは?」

「壮太の奥さんは、神成と連絡をとっていた。福島に行った目的は、おそらく神成に会うため。そして、これまでも神成に会っていた。」

 保志が言うと、壮太も

「俺も、そう思う。普通、そうだ。」

 康太も、うなずいた。

「さあ、壮太。これからどうする?」

「とりあえず、この神成という男に連絡をとってみようと思う。電話番号も分かったし。それと、千草に神成のことを話して反応を見てみる。」

 ブーッ!!

 康太と保志は、2人とも同時に吹き出した。

「おいおい、壮太。どこまで馬鹿正直なんだ。嫁さんが嘘をついてまで会っていた男に、『妻に会っていましたか?』って聞くつもりか?」

「だめか?」

「『電話はしたけれど会ってません』とか言われたら、それでおしまいだろ。嘘をついているということは、もし、会っていたとしたらそれを隠すためだろう。」

「そうか。そうだな。じゃあどうする?」

「よし。俺の仕事は分かるな?」

「ゴシップネットニュースの記者だろ?」

「ゴシップは余計だ。まあ、そうだけどな。事件調査も専門だ。まず、相手を知らなければならない。神成祐介についてできるだけ調べてみる。だが、専門プロの調査も必要になるな・・。保志、探偵とか調査員とかの当てはないか?」

「俺も、四井相互銀行の法人審査部だ。そういう裏情報の調査に詳しい人物がいるって聞いたことがある。」

「じゃあ。そっちを頼む。壮太。俺たちが調べている間、もう一度、神成の名前は出さないで、奥さんの方の反応などを見たらどうだ?」

 康太の提案に、壮太も

「分かった。悪いな2人とも。」

 2人は黙って、グラスを合わせた。



 

 

 

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