第10話 大学時代
土曜日、指定された珈琲店で、千草の大学時代の友人の高山利加さんに会った。千草と同じ年齢とは思えない若々しい感じの美人だった。千草も美しい方だと思うが、それ以上だった。
「初めまして、千草の夫の深山壮太です。今日はありがとうございます。」
「高山利加です。千草のことでご相談があるとか。」
「はい。高山さんは、千草とはどんなお友達関係なんでしょうか?恥ずかしながら、妻とは会社に入ってからの仲で、学生時代の交友関係は分からなくて。」
「私と千草は、大学のサークルで一緒でした。」
「何のサークルですか?」
「ワンゲルのサークルです。彼女と一緒のおかげで楽しい学生生活を送ることができました。」
「あのう、ワンゲルとは?」
「ごめんなさい、ワンダーフォーゲルの略で、登山、ハイキング、キャンプ、サイクリングなど、春夏秋冬、一年中、自然の野山を駆け回っていました。」
壮太は、意外な答えに驚いた。千草がアウトドアを専門にやっていたなんて?確か、付き合い始めた時に野山を歩くことが好きとチラっと聞いたことがあったような気がする。でも、結婚してからは、確か山は苦手とか言って、子どもたちのキャンプやバーベキューは、尻込みしてはずだ。
「ということは?千草は、あのキャンプとかバーベキューとかは?」
「ええ。もう得意中の得意ですよ。私なんかいつも彼女に頼っていました。」
満面の笑顔で答える高山さん。
「大丈夫ですか?顔色が悪いようですけど、私に聞きたいことって?」
「ああ、大丈夫です。すみません。実は、お伝えしたとおり、福島へ向かう高速バスで事故に遭ったのですけれど、どうして福島に向かっていたのか分からないんです。仕事関係では、なさそうで。もし、友達に会う約束などをしていたら、心配しているかと思いまして。事故でけがをした人の名前などは公表されてませんので。それで、まず、大学時代のお友達から当たってみようかと。」
「ああ、そうですか。なるほど。福島ですか。そういえば大学時代、よく福島で活動しました。サークルに福島県出身の学生がいて。」
「何という方ですか?」
「え?そ、それは・・・。」
高山さんが言い淀んだ。
「お願いします。他に手がかりがないんです」
「分かりました。
「その方と千草は仲が良かったんですか?」
「はい。学生時代は付き合っていました。で、でも!卒業する時に別れたって聞いています。彼は地元の福島にもどるので、東京の彼女とは別れたって聞いてました。」
「そ、そうですか。ありがとうございました。一応当たってみます。山本さんの携帯の番号とかお分かりになりますか?」
「ごめんなさい。彼が携帯を新しくしたみたいで、つながらなくなってしまって。あの、もし何か分かりましたら、私にも教えていただけますか?それと、回復したらお見舞いもしたいんです。」
「はい。分かりました。」
頭を下げて、高山さんと別れ珈琲店を後にした。
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