第5話 取っ掛かり
帰りの車を運転する間、壮太は、千草との夫婦仲を思い返していた。
2人は、千草が今も勤める大日生命保険会社で出会った。同じ営業部員、同期入社。仕事や飲み会などで親しくなって、交際して結婚した。結婚して、最初に千草が妊娠した子は流産したが、その後、3人の娘を授かり、夫婦仲、家族もみんな仲がよかったと思う。千草が自分に不満をもっているように思えなかった。
帰宅した、壮太の手に、千草のスマホがあった。妻の病状からスマホを預かっても問題なかった。家に帰ってスマホを手に取る。必ずこの中に疑問を解明する手掛かりがあるはずだ。
電源を入れると現れるパスコード。妻の誕生日違う、次は、結婚記念日、思いがけず、あっさり開いた。
罪悪感を感じながらも、調べていく。
最初はLIMEのトーク。最初に義母とのやり取りを確認した。確かに、義実家を訪ねるやり取りはない。義母の腰痛の連絡もない。他には、妻の友人や会社の同僚とのやり取りなどを見た。もともと友人も少なく男友達なども聞いたことがない。webメール、SMSなども、それらしいものはなかった。電話番号は、家族と限られた友人の番号登録しかなかった。着信もそれだけ。
保険の営業職なので、社用のスマホがある。顧客はほとんど男性で、登録も膨大なので、不倫の連絡に社用スマホを使われたらとても特定できない。自分の営業用のスマホも同様だったからよく分かる。
写真フォルダも開いてみるが、家族の写真がほとんどで、目立ったものはない。景色の写真が数枚あって目を引いたが、手がかりにもならない。
壮太は、がっかりして、スマホをソファーに放り出した。
「何も分からないか・・・。」
つぶやいた。調べる取っ掛かりも見つからない。そこに、芙由が自室から出てきた。
「今度いつ、福島の病院に行く?ママが治るまで何回も行かなきゃだね。」
「ああ、そうだね。」
そう返事をした、壮太は、1つの可能性が頭に浮かんだ。
(何回も・・・・。福島は初めてじゃないのかもしれない。)
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