Chapter.3-『NEXT-HERO』
ジェイが視界を潰され、チェンソーを周囲に振りかざす。《ウサギノ》に体を譲った俺は、それを何なく躱すだけでなく、壁に跳び、蹴った後、ジェイの頭に強烈な蹴りを入れた。
「ぐぁ゛ッ……!」
ジェイは額から血を流し、チェンソーを容赦なく音がする全ての方向に振る。家が壊れ始め、外からキョンシーたちが入ってきた。
「『ハンドガンにスイッチ機能は付いているか?』」
「……スイッチって?」
「『はあ、銃が変形する機能のことだ』」
「それなら、一応あるけど……」
《ウサギノ》と会話を繰り返し、体の主導権を譲り合う。ハンドガンを強く握った後、《ウサギノ》はハンドガンに向かって叫び、ハンドガンの黒いパーツなどが取れ始めた。
「『スイッチ──!』」
取れたパーツは全て、上手いように付け替えられ、あっという間にショットガンが完成。持ち手を握った後、キョンシーたちを吹き飛ばし、最後にジェイに向かって一撃放つ。
──バァンッッ!
重い鈍器の音が鳴り響き、ジェイがチェンソーでガードした。弾は二つに割れて転がり、俺たちの足元へ。
「『……目、潰しただろ……!』」
ジェイは気付けば瞼を持ち上げており、そこから覗く不気味な瞳が、
「『あいつの弱点を探さないと。おいお前、このクソボロスーツ、何か便利な能力は?』」
「お前じゃない、《ゼロ》だ。それと、スーツにはないけど、カバンの中に銃専用のアタッチメントが……」
「『わかった、使わせてもらうぞ。《ゼロ》だったか、お前は寝とけ』」
それから俺は《ゼロ》の視界を切り、ジェイが迫り来る中、陰でカバンを降ろし、中からアタッチメントと思われる物を取り出す。赤と黒の四角形のようで、先端には穴が空いていた。
「『これを銃口にはめれば良いのか、俺の時には、こんなのまだなかった気がするな』」
ショットガンを《スイッチ》して、ハンドガンに変形させる。銃口にアタッチメントを取り付けた直後、背後から気配を感じ、リュックを持って、転がりながら躱した。
振りかざされたチェンソーは土を抉っており、ジェイは塗った後、すぐに俺の方を見る。
「『何が変わったか分からないが、物は試しだ──』」
再び目を狙い、引き金を引いた。
──パァンッ!
銃弾がジェイの瞳に当たり、小さく爆ぜる。かと思えば、顔一面を火傷させており、凄く痛そう唸り始めた。
「ウゥ……ウウウウウゥ!」
「『これで終わりだ──』」
そんなこともお構いなしに、跳び上がり、回し蹴りをまた顔面にお見舞いする。瞬間、血飛沫が舞って、ジェイが転がり倒れて、動かなくなった。
「『……しぶとさはローグ並みだな』」
その後、体を《ゼロ》に返し、俺は心臓に戻る。
「…………もう、倒せた?」
『ああ、こんなに戦い辛い体は初めてだった』
「でも、今利用できるのは俺しかいない。そうだろ?」
『……そうだな、もうちょっと筋肉が欲しい』
会話をしつつ、俺はジェイを通り過ぎた。どこに行けば、《ルナ》に会えるだろうか。
『……村の奥を見てみろ。すぐにでも分かる』
《ウサギノ》の指示に従い、開けた場所に行って、村の奥を見つめる。
そこには、明らかにさっきまではなかった、巨大な城が建っていた。
「…………《ルナ》!?」
周囲を取り囲む、キョンシーたち。頂上は、空の下辺りで、《ルナ》が映されたモニターが、浮遊していた。
《ルナ》は、鉄格子に囲まれたような場所におり、隣にはあのハット男ーーローグが。画面が切り替わったかと思えば、「come」という赤文字が映された。
『……《ゼロ》、どうする?』
「決まってる、《ルナ》を取り戻す……」
『どうやって? あのキョンシーの量に、ローグもいるんだ。考えなしに突っ込めば、生きては帰れない』
正面突破は難しそうだ。なら、どうにかして、どこかの窓から入るしかない。
『…………《ゼロ》、確認させてくれ』
「……こんな時に? なんの確認だ?」
問いかけると、《ウサギノ》が俺の左手を動かし、胸に手を当てる。
『お前……君は、《第二の英雄》として、この世界を救いたいと思うか?』
「……《第二の英雄》? いきなりなん……」
『いいから質問に答えろ』
「…………そりゃ、救いたいよ。けど、俺の実力じゃ、絶対……」
『……このまま《落ちこぼれ》として、永遠に馬鹿にされ続けて良いのか? 変わりたいとは、思わないのか……?』
《ウサギノ》が知るはずもないことをベラベラと喋る。恐らく、記憶を読んだのだろう。
「……変われるなら、変わってる。俺なりに頑張って、ようやく《特殊部隊》に入ったんだ。それだけでも……って、え……?」
《ウサギノ》が目の前に姿を現し、俺の胸ぐらを掴む。黄土色の兎が、ダイヤの瞳を輝かせ、俺に言った。
『……《英雄》になれ、《ゼロ》。君が、俺の意思を継ぐんだ──』
真剣な瞳で訴え掛けてくる。よく見てみれば、《ウサギノ》は脚がない。魂から上手いこと分離して、姿を現しているのだろうか。
「……俺なんかで、務まるのか……?」
『務まらない奴に、こんなことは言わない』
昔、憧れていた英雄に、今こんなことを言われている。それだけで、嬉しいことなのに。
ウサギノがどこからか、とある物を地面に投げ、体に戻る。脳内で『それを着ろ』と指示を受け、俺は白いプレートに手を伸ばした。すると──
「……これって」
白いプレートが指先に移り、体が白い鉄を纏う。間の隙間が血管のように伸びるところは、水色に発行し、白い兎のマスクが頭に装着された。そして、視界には《プログラム起動》の文字が現れ、体が身軽になっている。
『…………俺が生前最後に着てたスーツだ。これなら、窓からだって入れるだろ』
「……どうして、ここまで……?」
その問いかけに、《ウサギノ》は黙り込んだ。沈黙が続いた後、しばらくして声が響く。
『……君の祖母、リンリンの孫だから。っていうのもあるな』
「……本当に、おばあちゃんを救ったの……?」
小さい頃は信じていたが、成長してから嘘だと思い込んでいた。しかし、実際は本当らしい。
『……記憶を失った後か。《ゼロ》が殺された村で彼女を見つけ、救い出した。記憶を失う前は、彼女の祖母も救っていた』
「……ひいひい、おばあちゃんまで……」
『……俺にはもう訳が分からない。どうやっても、君の一家を救う運命らしい。……話は、これぐらいで良いか? 手遅れになる前に、急がないとな』
話の後、俺はハンドガンを腰にしまい、その隣にあったボタンを押す。すると、後ろにあるパーツからロープが伸び、城の一室、窓の近くに、ロープについている針金が刺さった。その後、ボタンから手を離すと、ロープに引っ張られ、気付けば俺は壁に張り付いている。
「……これ、どういう仕組み?」
『……さあな。いいから、中に入るぞ』
俺は窓を殴り、割って中に侵入。すると、音で気付かれたのか、長い廊下の奥から、大量のキョンシーと、鳥の化け物が迫ってきていた。
「これは何でも、量が多すぎない……?」
『《英雄》になったら、こんなの当たり前だぞ』
「……本当に継がせる気なのか」
俺はハンドガンを握り締め、キョンシーたちに弾を撃ち込んでいく。爆発のアタッチメントがついているおかげか、一気に蹴散らすことが出来た。が、黒い鳥ーーカラスのような化け物は華麗に躱し、俺に突進してくる。
『左腰にナイフがある、使えッ──!』
俺はナイフを取り出し、スライディングしながら頭上を飛ぶ鳥にナイフを刺した。鳥は自分で進むことで腹を開き、落ちていく瞬間にハンドガンでトドメを刺す。
「……なんとか倒せた……」
『ああ。だが、油断はするなよ』
俺は立ち上がり、廊下の先へ進む。巨大な扉を開けば、その先には、ジェイに似た男が二人。チェンソーを持って、こちらへ走り出した。
『……さあ《英雄》、復習だ』
「……まだ《英雄》じゃないけど……!」
ハンドガンで二体の顔に爆発を起こし、視界を奪う。鉄の壁を蹴り、跳んだ勢いでそのまま蹴りを──
「ちょっ……!?」
二体とも自分の頭にチェンソーを持ってきて、俺は脚を止められないでいる。このままでは、脚が体と別れてしまう。というか、今の光景がスローに見える。
このチェンソー、少し錆びているな。もしかしたら、壊せるかもしれない。
俺は右手に握っていたハンドガンで、二つのチェンソーに発砲する。瞬間、爆発で刃先が折れ、顔が見えた。
次の瞬間、世界が速さを取り戻し、俺の蹴りが二体の頭を捉え、鉄の壁に蹴り飛ばす。危機的状況での覚醒、ジェイ似の二体はその場で動かなくなった──。
『HERO-VILLAGE 2』 詩羅リン @yossssskei
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