第2章 新人冒険者フィアと、振り回される相棒

魔闘志――というJobが告げられてから、一年が経った。

 結論から言えば誰も、その扱い方を理解できなかった。それもその筈この世界では様々な種族が存在する

エルフ、ドワーフ、ドラゴニュート、獣人そして人種族、スキルに関しては総ての種族は持ち合わせているしかし“Job“に関してだけは、人種族のみに許されたものとなっている。これは、この世界のバランスを考えてとの事だと言われてる。

“Jobに対してのスキル“

となるものだから皆頭を悩ませてるのだ

「……で? 結局その“魔闘志”って何なんだ?」

 王都の一室。

 学者、司祭、魔術師、軍関係者が揃って首をひねる。

「魔力を纏って戦う……?」 「戦士系? 魔法系?」 「その前に戦いに向いてるのか?」「いや、そもそもJobとスキルが反映されてないのでは?」

 議論は紛糾し、結論は出ない。

 最終的に下された判断は、実に雑だった。

「……前例がない。

 よって、経過観察」

 結果…………つまり放置である。

 


スバル本人はというと。

「へぇ。じゃあ自由ってこと?」

 相変わらず気にしていなかった。

 父アルディオスは頭を抱え

「とりあえず経過観察、と言ったところだが」

 執事アルフレッドは静かに頷き、

 「これでは、お嬢様がどの方面へ進めば良 いか判断しかねますね」

来年には、学院への入学が控えてる為その方向性を決めかねてるのであった


ナミルだけが現実的なことを言った。

「なぁスバル。

 だったらさ、冒険者になればいいんじゃね?」

その一言が、すべての始まりだった。

「冒険者?」

「ああ。実戦で使えば、分かることもあるだろ?公爵様どうだろうか?」

ナミルは、アルディオスお抱えの鍛冶士の1人息子でポートレス家にはよく顔を出してる

「しかしなぁ…」

「俺もギルドには、入ってるしランクもそこそこだしスバルの面倒くらいは出来ますよ」スバルの目はキラキラに輝いてる、一抹の不安をよぎるノーマンこれは胃薬が増えるのではとアルフレッドと共にため息しか出なかった


■冒険者ギルド

 王都冒険者ギルド。

 昼間から酒の匂いが漂い、

 鎧と武器の音が常に鳴っている。

 スバルはフードを深く被り、受付に立った。

「……新人登録ですね。お名前は?」

 一瞬だけ、視線を横にやる。

 ナミルが腕を組み、小声で言った。

「貴族名は使うなよ。面倒になる」

「分かってる」

 スバルは、少し考えてから答えた。

「フィア」

「フィアさんですね。年齢は?」

「十一」

 受付嬢の眉がわずかに動く。

「……随分お若いですが」

「大丈夫。

 この人、俺が保証する」

 ナミルが割って入った。

 すでにランクは中堅。

 ギルド内でも顔は知られている。

「ナミルさんが?

 なら……新人扱いですが、登録は通します」

 こうして、

新人冒険者・フィアが誕生した。

 なお本人は、

(冒険者かぁ……なんかRPGっぽい)

 としか考えていなかった。ワクワクしていたのだ

(リアルでゲーム………まるでVRを経験するみたいな)

そうスバルにとっては、遊びだったのだ


■初任務、そして違和感

 最初の依頼は簡単なものだった。

「街道沿いのゴブリン討伐。

 数は三体。新人向けだ」

(キタッーーーー!ゴブリン討伐!)

スバルはナミルの横で、小さくガッツポーズ

「楽勝だな」

 ナミルは軽く言ったが、

 内心では警戒していた。

(スバル……いやフィアは強い。

 だが“戦闘”は別だ)

 剣を振る技量はある。

 魔力操作も異常。

 それでも――

 実戦は初めてなのだから。

 街道脇の森。

 ゴブリンが姿を現した瞬間、

 ナミルが前に出ようとした。

「フィア、後ろ――!」

「うん、分かってる」

 次の瞬間。左足を軸にクル!っと回り後ろを向いたと同時に地面が砕けた。

「……は?」

 スバルが踏み込んだだけで、

 土と石が弾け飛び、

 魔力を纏った拳がゴブリンの胴体を貫いた。

 一撃。

 ゴブリンの胴体には反対側が見える程の穴があきそこから血が溢れ出してる。

「……」

 ナミルの思考が止まる。

「え、今の……殴った?」

「うん」

「剣は?」

「持ってないよ?」

 残りの二体が逃げようとする。

 スバルは楽しそうに手を伸ばした。

「術式構築!」

 スバルの足下に魔法陣が拡がり魔法陣の上にある石が浮き、

 鉄のタガーに再構築される。

「え、ちょ、待て!」

 投擲。

 即座に命中。

 二体、同時撃破。

 静寂。

 ナミルは、しばらく口を開けたままだった。

「……フィア」

「なに?どうしたの?」

「おまえ……」

 言葉を選ぶ。

「あれから、本当に鍛練してたのか?新人の動きじゃねぇ」

 スバルは満面な笑顔で

「そう!身体を動かしてないと、なまっちゃうじゃん!」

「いや、仮にもお貴族様のご令嬢だろ

 というか、俺いらなくね!?」

「えー? 一緒の方が楽しいじゃん」

 ナミルは頭を抱えた。

(規格外……)

(いや、それ以上だ)

 これが“魔闘志”。

 “魔力を纏い、肉体で戦う“この戦法は獣人種等に多い物扱いが分からないわけだ。

スキルに於いても

本来“縮地“や“疾応“また“ 剛撃“や“壊撃“となる筈だがスバルに於いては、全く関係ない

だからこその規格外なのだ


 ギルドへの帰路。

 ナミルは、スバルの横顔を盗み見た。

(こいつ……自分がどれだけおかしいか、分かってねぇ)

 だが同時に、思う。

(……守る役は、俺だな)

 振り回される未来が、

 はっきりと見えた。

「なぁフィア」

「なに?」

「冒険者やるなら、勝手に突っ込むな」

「えー?」

「“えー”じゃねぇ!!」

 いつもの掛け合い。

だがナミルの胸には、確かな覚悟が芽生えていた。しかしナミルは知らないスバルは知っていた自分のちぐはぐなJobとスキルは総て―女神ルフェリオ―あのポンコツ駄女神のせいだと

(にしても、あの駄女神こんなちぐはぐって…………これ以上何も無いよな?………マジで)


 この少女は、いずれ世界を揺らす。

 その最前線に立つなら、隣にいるのは自分 だ。そう、決めた。

ナミルは、干渉に浸っていたがしかしスバルは知らないナミルのそんな思いを

“いずれ世界を揺らす“

2人は知らないあのポンコツ駄女神が既にやらかしてる事を…………そう史上最悪な出来事が待ち受けてる事を………………。


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2026年1月1日 16:00
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昂拳姫~英雄になりたくなかった転生者が、女神の尻拭いをする話~ 博夜 @hero57_nugei

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