第2話 うちのねこはこわい
胸を弾ませて帰ると愛しい息子はおやつを頬張りながらゲームに夢中だ
少し前なら流行りのゲームなんて買うんじゃなかったと後悔しながら怒るけど、今日は猫なで声が抑えても出てくる
「良太が書いた作文、お母さん読ませてもらったよ!お母さんも先生も続きが読みたいな、良太書いてみてくれない?」
いつもと違う対応の母に慌ててゲーム機を隠していた良太は手を止めてまん丸な瞳で
「つづきって?」
と答えた
「あの怖い猫ちゃんはこれからどうなるの?それを書いてみてくれない?まさか良太が猫が好きとは知らなかったよ~いつも野良猫怖がってたじゃない、いつ好きになったの?」
由美はワクワクとドキドキ、好奇心と喜びに裏返りそうになる声を必死に隠しながら聞いた
「ぼくねこはすきじゃないよ…だってうちのねこはこわいもん…つづきもわからない...」
由美は息子の言葉に何だか急に氷水をかけられたような気がした
「え…?あぁ…そうなの…つづきを書くって難しいよね、そっかあ、怖い話だったんだ~お母さんてっきり可愛い猫が出てくるんだと思ってた、ごめんね、でももし続き出来たら見せてね」
矢継ぎ早にそういい優しく息子の頭を撫でる
そして周囲をキョロキョロと用心深く捜した
猫なんているわけないのに…
夕食の支度をしながら、由美はさっきの言葉を反芻していた。
「うちのねこはこわいもん…」
リビングの明かりはいつもより暗く感じる。
学は由美のラインに喜び、今日は遅くなることを残念がっていた
夕食は祖母と良太の3人でいつも通り良太は今日はこんなことがあった、ゲームはここまで進んだよと嬉しそうに話している
いつまでこんな風に家族に色々話してくれるのかなと一生懸命たどたどしい言葉で伝える息子をほほえましく眺めながら、机の下をそっとみる
何もいるわけないのに…
幼い息子の創作が由美の心に爪をたててる、バカらしいと思う反面、ぞくぞくと背筋が凍る
少し前から起きている日常の些細な怪我を気にし始めている
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