ファニーバニー

槇本大将

ファニーバニー……FUNNY BUNNY いかれたウサギ

震える指で丸い錠剤をなかなか掴めず苦労して、やっと指先が掴んだと思ったら。

自分の指の震えがそれを打ち消して。

また、錠剤はコロンと手のひらに落っこちた。


もうメンドクサイと左手を受け皿代わりにして。

錠剤を何個かいっぺんに口にねじ込む。

続いて水を飲む。いや、これは水じゃない、ココアだ。


大人のクスリは少し苦いので、あまり口の中に残らないように一気に飲み下す。


大人になるために飲みなさいと。毎晩飲みなさいと医者はこのクスリを処方していっていた。

自分だって飲んでいるのならまだ許せるけど、自分自身は1錠だって飲んでないシラフだ。


アンタは知ってるだろうか?


ウサギって寂しいと死んじまうんだぜ。

それを揶揄するかのように、孤独や寂しさに対する耐性のない奴らを「ラビット症候群」って言うらしい。


孤独な夜に一人黙って

ふるえて眠る。ウサギみたいな赤い目は、実はさっきまで泣いていたからだ。


さっき飲んだクスリが効いてきた気がする。


4階のベランダでタバコをふかそうとベランダに出た。

タバコなんて持ってないしライターもマッチも持ってないことに気づいて、ふーっとため息。


冬だったら真っ白な息が煙のかわりになって少しくらいタバコ吸った気になって気が紛れたんだろうけどあいにく今は冬じゃなかった。


クスリが効いてきたみたいだ。


最近になってわかったことだけど、クスリは飲んでから効いてくるまで少し時間がかかる。


少しの時間って?


アンタは訊くかもしれないな。


正確に時計を見てたわけじゃないから正しくはわからないけど、10分か15分かそこらだと思う。


なんで効いてきたのかわかるんだ?ってアンタは追い打ちのように訊くかもしれないな。

頭の中のアンタはほんとに次々質問を投げかけて来るな。


5歳児かよ。


でも、その問いに、いちいち答えてやる。暇だから。


クスリは効いてくるとアタマの働きが弱くなり少しボーッとするけど、厄介なのは、そのボーっとした状態を自分で中々自覚できないという点だ。


例えるならTV観ながらポテチを食うときみたい。パリパリと口の中で咀嚼していると、いつの間にかアァ腹いっぱいって感じるけど、その時にはもう満腹を通り越して吐き気になってしまってる。そしてもったいないけどトイレに入って楽になるため全部リバースしてしまう。


えっ?例えがわかりにくい?

じゃあ、実際やってみてくれ。Netflixでも観ながら挑戦するといい。


閑話休題。

クスリの効果の話だったな。

精神に作用する薬だそうだから、脳にもきっと影響するんだろう。

ところで、アンタは心はどこにあると思う?

脳か?胸?それともどこ?

医学的には脳にあるとするみたいだけど、ほんとにそうなのかな?


「アタマおかしい」って人が言う場合は、この、アタマっていうのは脳だろうか?この場合のアタマというのは精神なのだろうきっと。


じゃあ精神って一体どこにあるのだろう?脳?


さっき飲んだクスリは精神疾患の薬なんだけど、飲むとアタマがボーっとするってことは精神ってアタマなんだろうか?

でも、思考と精神と心ってのは全部違う気がする。


さみしい気分でベランダでいかれたウサギみたいなこの話の主人公ファニーバニーは息を吐く。

ゆっくりと息を吐く。


ウサギを数えるときは1羽、2羽と数えることはアンタも知ってるだろ?

アイツらあのデッカい耳でバタバタ羽ばたいて飛ぶからだそうだ。




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ファニーバニー 槇本大将 @makimotodaisuke

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