第4話 選択

糸は、二本あった。


細く、

光を通さない。


色だけが違う。



「赤は、終わりの糸」


「紫は?」


「待つ糸」



糸は、

みどりに触れていない。

だが、近くにあるだけで、

結合の速度が変わる。


赤は、速める。

紫は、揃える。



お姫様は、

二本の糸を見比べていた。


「どっちがいい?」


「どっちも、いや」


少し間を置いて、


「通されるなら、紫」


理由は言わなかった。



水路の音が、

いつもより大きく聞こえた。


「待つって」


彼女は言う。


「選ばない、じゃない」


水守は黙って聞いている。


「選ばせない、ってこと」


水の音は、

まだ流れていた。

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