第6話 これでコイツの人生はめちゃくちゃだ!

《※5話がないのは仕様です》




「ん……」


 俺が起きると、そこは勝手知ったる自室のベッドだった。


 いつもと違うところと言えば――隣に葵が寝ているところだろう。


「ククク……」


 昨日のことを思い出せば自然と笑いが出てきた。


 一人の女をものにした達成感。白い柔肌を蹂躙した背徳感。


 まるで最愛の人のように俺の名を呼ぶ葵。


 初めてとは思えないほど積極的に俺を求める葵。


「ククク……」


 ……おっといけない。

 まさか自分が悪事以外を考えてここまで笑うとは思わなかった。


 とりあえずあくびをして、俺は立ち上がって外に出ようとしていると、「んう……」と声が聞こえた。


「葵、おはよう」

「あ、おっくん……おはよう。えへへ」


「なに笑ってんだよ」

「いやあ、おっくんに全部はじめてをあげちゃったな、と」


 照れる葵がいつも以上にかわいらしく見えるのは、初体験マジックというものなのか。


 まあ葵のこの姿を知っているのは俺だけなのだ。そうもなるだろう。


「ククク……まあ今はゆっくり休め。これからハーレムを作っていけば、負担は減るぞ」


 さあ、これから忙しくなるぞ。

 次はどのヒロインを食ってやろうか?


「……」

「葵?」

「昨日はちゃんと言ってなかったから、今後について話していい?」


 俺がうなずくと、神妙な顔の葵はベッドの上で正座した。とても真剣だ。


 葵は深呼吸をしてから、言った。


「私はおっくん……鬼苺虎魚おこぜくんが好きです。脅されたからじゃない、菫のためじゃない。私は私の気持ちを大事にした上で、おっくんを愛してる」

「――――」


「好きなの。大好きなの。おっくんじゃないとイヤなの。おっくんの全てがほしいし、おっくんに全てをあげたい」


 だから、と葵は言った。

 顔を赤くして、目をうるうるとさせて、俺を見つめる。


「ハーレムじゃないといけない? 私一人にだけ悪いことするのじゃ、だめ……?」

「……」


 ……ああ、そういうことだったのか。


 俺はやっと気づいた。

 いつもその表情で見つめてくる理由が、ようやく理解できた。


 なるほど、俺が怖いんじゃなくて――


「ハッ」


 俺は鼻を鳴らす。自分の鈍感さ加減に。


「――ダメなわけないだろ」

「あっ……」


 ベッドに戻り、ただ抱きしめる。

 きつく、それでいて優しく、大切なものを守るように。


 腕の中で震えた葵を全身で感じてから、俺は首元に口づけを落とした。


「もう約束しちまったからな。お前が望むならずっとこのままでいさせてやるって」

「……うん!」


 まあ、その、なんだ……一人の女を生涯かけて絶望の底に落とすのも、また極悪というものだろう。


「おっくん……」


 俺の返事に安心したのか、また期待したような目をして葵が呼んできた。


 倦怠感のある体を伸ばしてから、俺はかわいい彼女をこの世界から隠すように覆い被さった。


 二人の体が重なり合う。


「……」

「……」


 そして一度口を離して互いを見た俺たちは、どちらからともなく囁きあう。


「――愛してる」

「――ああ、俺もだ」




 こうして。


 これから愛する彼女の人生をバラ色めちゃくちゃにしていく俺の、最初の悪事が始まった。







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不良に転生した俺、おもむくままに悪事を働いて狙った女を得た件 雄牛小石 @ousikoisi

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