第31話 りおの話の続き
## 第31話 りおの話の続き
りおが、立ち上がりかけて、止まった。
また座る。
顔を伏せる。
「リーダーだけじゃない」
その声が、震えている。
「え…」
「あのボーイズグループの、メンバー全員から」
りおの拳が、震える。
「私は…」
言葉が、続かない。
私は、息を呑んだ。
まさか。
「純粋に、好きなだけだったのに」
りおの声が、泣いている。
「ただのファンだったのに」
「スカウトされて、嬉しかった」
「憧れの人たちと、仕事ができるって」
りおが、顔を上げる。
目が、赤い。
「でも、違った」
「私は」
りおの声が、途切れる。
「回された」
その言葉に、私は凍りついた。
「何回も」
「何十回も」
「何百回も」
りおが、震える声で言う。
「リーダーから始まって、メンバー全員」
「代わる代わる」
「私を」
「私は、もう…」
りおが、項を抱える。
「人間じゃなかった」
「モノだった」
「おもちゃだった」
私は、何も言えなかった。
言葉が、出てこない。
「だから」
りおが、顔を上げる。
涙で濡れた顔。
でも、目は、強い。
「アイドルになったら、私が、あいつらに復讐するんだって」
「誓ったんだ」
「有名になって」
「あいつらを、潰すんだって」
りおの声が、力を持つ。
「でも」
りおが、小さく笑う。
「その前に、一人、逃げた」
「逃げた…?」
「うん。メンバーの一人」
りおが、私を見る。
「怖くなって、グループを抜けたって」
「そして、会社を起こしたって、聞いてね」
会社。
「IT関連の」
りおが、私の目をじっと見る。
「m3+って会社」
その瞬間、私の心臓が止まった。
m3+。
それは。
「知ってるよね?のぞみちゃん」
りおが、にっこりと笑う。
でも、その笑顔は、冷たい。
「あなたが働いている会社だもんね」
違う。
嘘だ。
でも、りおの目は、嘘をついていない。
m3+。
私が働いている会社。
上司の。
あの人が。
「そう」
りおが、頷く。
「のぞみちゃんの上司」
「あの人が、メンバーの一人だった」
私の頭が、真っ白になる。
「だから」
りおが、私の手を取る。
「のぞみちゃんを選んだの」
「くじは、最初から仕組まれてた」
「全部、私が決めてた」
「佐々木さんたちも、全員、事務所の人間」
「のぞみちゃんだけが、本物のファンだった」
「そして」
りおが、私の顔を覗き込む。
「のぞみちゃんの上司に、復讐するため」
「のぞみちゃんを、選んだの」
私は、震えた。
全部。
全部、計画されていた。
私は、偶然選ばれたんじゃない。
最初から、ターゲットだった。
「ごめんね」
りおが、私を抱きしめる。
「でも、のぞみちゃんに罪はない」
「だから、3日後には、ちゃんと元に戻してあげる」
「でも」
りおが、私の耳元で囁く。
「この3日間の記録は、全部撮ってる」
「え…」
「隠しカメラ」
りおが、部屋を指す。
「色んなところに、仕掛けてある」
「のぞみちゃんが、女の子になって、色々されてる映像」
私の血の気が引く。
「それを」
りおが、にっこりと笑う。
「のぞみちゃんの上司に、送るの」
「『あなたの部下を、私のものにしました』って」
「やめて…ください…」
「大丈夫」
りおが、私の頭を撫でる。
「のぞみちゃんの顔は、モザイクかけるから」
「でも、上司には、わかるように作る」
りおの声が、冷たくなる。
「あいつに、見せつけるの」
「私が、どれだけ苦しんだか」
「私が、どれだけ傷ついたか」
私は、りおの腕の中で、ただ震えていた。
全てが、繋がった。
私が選ばれた理由。
この状況の意味。
全部。
りおの復讐のため。
「ごめんね、のぞみちゃん」
りおが、もう一度言う。
「でも、私は、もう止められない」
私には、何も言えなかった。
りおの傷が、深すぎる。
りおの痛みが、大きすぎる。
でも。
私まで、巻き込まれていく。
この復讐の連鎖に。
「さあ」
りおが、私を離す。
「罰ゲーム、続けよう」
涙の跡が残る顔で。
でも、笑顔で。
りおは、そう言った。
私は、ただ頷くことしかできなかった。
もう、逃げられない。
この復讐劇の、一部になってしまった。
3日間。
私は、りおの復讐の道具。
そして、上司への、メッセージ。
全てを理解した今。
私にできることは。
ただ、耐えることだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます