第24話 異変



りおの唇が、私の首筋に触れる。


甘い吐息。


柔らかい手が、私の体を撫でる。


抵抗できない。


力が入らない。


その時だった。


キュルキュル。


お腹から、音がした。


「ん…?」


りおが、顔を上げる。


「今、音した?」


「あ…」


また。


キュルキュル。


お腹が、鳴る。


いや、鳴るだけじゃない。


痛い。


違和感。


中から、何かが動いている感じ。


「あ…お腹が…」


「お腹?」


りおが、私のお腹に手を当てる。


キュルキュルキュル。


音が、大きくなる。


「どうしたの?」


りおが、心配そうに見る。


でも、その目は。


笑っている。


「痛い…です…」


冷や汗が出る。


お腹の中が、ねじれるような感覚。


「トイレ…行きたい…」


「トイレ?」


りおが、にっこりと笑う。


「そっか」


そう言って、りおは立ち上がる。


「じゃあ、行っておいで」


私も、慌てて立ち上がる。


でも、脚がふらつく。


お腹が、痛い。


我慢できない。


トイレに向かう。


ドアを開ける。


便器に座ろうとした、その時。


「あ、ちょっと待って」


りおの声。


振り返ると、りおが立っている。


「なに…ですか…」


早くしないと、間に合わない。


「さっき、飲んだ水、覚えてる?」


「水…?」


ジュースを飲んだ後。


りおが、水をくれた。


「あの水にね」


りおが、楽しそうに言う。


「下剤、入れといたの」


「え…」


頭が、真っ白になる。


下剤。


だから。


だから、お腹が。


「なんで…」


「だって、面白いでしょ?」


りおが、クスクス笑う。


「女の子になったのぞみちゃんが、お腹痛くなって、トイレに駆け込む姿」


「そんな…」


「可愛いよ。すごく」


りおが、私の頬を撫でる。


でも、お腹は限界だ。


「り、りおさん…トイレ…」


「あ、うん。いいよ」


りおが、ドアを開ける。


私は、慌てて便器に座る。


「あ、ドア閉めないで」


「え…」


「閉めないで、開けたまま」


りおが、にっこりと笑う。


「見てるから」


「そんな…」


「大丈夫。女の子同士だよ?」


恥ずかしい。


でも、我慢できない。


お腹が。


限界だ。


りおが、ドアの前に立つ。


見つめている。


その視線を感じながら。


私は。


恥ずかしさと苦しさの中で。


用を足すしかなかった。


音。


恥ずかしい音。


りおが、クスクス笑っている。


「可愛い」


涙が出そうだった。


惨めだ。


屈辱的だ。


でも、止められない。


下剤の効果は、強烈だった。


何度も。


何度も。


りおは、ずっと見ていた。


楽しそうに。


にこやかに。


ようやく、終わった。


体から、力が抜ける。


「終わった?」


「はい…」


「じゃあ、拭いて」


トイレットペーパーを取る。


手が震える。


拭く。


りおが、見ている。


全部、見ている。


恥ずかしい。


でも、どうしようもない。


「流して、手洗ってね」


「はい…」


水を流す。


手を洗う。


鏡に映る自分を見る。


顔が、真っ赤だ。


涙目だ。


「のぞみちゃん」


りおが、後ろから抱きしめてくる。


「可愛かったよ」


その言葉が、胸に刺さる。


「これも、女の子になった証拠だね」


りおが、私の耳元で囁く。


「恥ずかしいこと、いっぱいあるけど、大丈夫」


「大丈夫…じゃ…ないです…」


「でも、これも経験だよ」


りおが、私の髪を撫でる。


「女の子って、色々大変なんだから」


私は、ただ泣きそうになるのを堪えていた。


これが、女の子。


これが、りおの言う「経験」。


屈辱的で。


惨めで。


でも、逃げられない。


「さ、戻ろう」


りおが、私の手を引く。


リビングに戻る。


ソファに座らされる。


「大丈夫?まだお腹痛い?」


「少し…」


「そっか。でも、もう出るものないでしょ?」


りおが、クスクス笑う。


「じゃあ、もう大丈夫だね」


大丈夫じゃない。


心が、ボロボロだ。


「次の問題、出そうか?」


「え…今…ですか…」


「うん。タイミング、いいでしょ?」


りおが、にっこりと笑う。


私は、まだお腹の痛みが残る中で。


次の試練に、向き合わなければならなかった。

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