第23話 i.sの意味
りおが、にっこりと笑う。
「じゃー、次も簡単だよ?」
簡単。
本当に、簡単なのか。
「5択だからねー」
5択。
選択肢が増えた。
でも、ファンなら知ってる。
きっと、知ってる。
「問題」
りおが、指を立てる。
「i.sの意味は?」
i.s。
グループ名。
その意味。
知ってる。
確か。
「選択肢、いくよー」
りおが、指を折りながら言う。
「1番」
「私の本名のイニシャル」
本名?
りおの本名は、星咲りお。
星咲…ほしざき。
いや、芸名だ。
本名は、公開されてない。
「2番」
「私の初恋の人のイニシャル」
初恋?
そんな話、聞いたことない。
「3番」
「アイシテル、という意味」
これだ。
確か、これ。
デビュー時のインタビューで言ってた。
「i.sは、愛してる、アイシテルの『アイ』と、複数形の『s』を組み合わせた造語です」
そう言ってた。
覚えてる。
「4番」
「私の複数系という造語」
複数系?
いや、複数形の『s』は入ってるけど、それだけじゃない。
「5番」
「私の世界」
私の世界…
いや、これじゃない。
「さあ、どーれだ?」
りおが、楽しそうに笑う。
「簡単でしょ?」
簡単だ。
3番。
間違いない。
でも。
本当に、それでいいのか。
もし間違えたら、リセット。
1時間が、消える。
いや、大丈夫。
絶対に、3番だ。
「3番」
私は、答えた。
「アイシテル、という意味」
りおの顔が、パッと明るくなる。
「正解ー!」
拍手される。
「さすがー、のぞみちゃん!」
りおが、私に抱きついてくる。
柔らかい体。
温かい体温。
「よく知ってるね」
「デビュー時の、インタビューで…」
「そう!覚えててくれたんだ」
りおが、嬉しそうに笑う。
「ファンの人でも、意外と忘れてる人多いんだよね」
「そうなんですか…」
「うん。でも、のぞみちゃんは覚えてた」
りおが、私の頬にキスをする。
「ご褒美」
「あ…ありがとう…ございます…」
「はい、これで2時間減ったよ」
りおが、スマホを操作する。
「残り、61時間15分」
2時間。
減った。
でも、まだ61時間以上。
2日半以上。
長い。
「でもね」
りおが、意味深に笑う。
「これから、だんだん難しくなるよ」
「難しく…」
「うん。さっきの2問は、サービス問題」
サービス。
ということは。
「次からは、本番だから」
りおが、私の顎を持ち上げる。
「頑張ってね、のぞみちゃん」
その笑顔が、怖い。
「次の問題は、いつ出すかなー」
りおが、私の体に手を這わせる。
「楽しみにしててね」
私は、小さく頷いた。
2問正解。
あと、22問。
全部、正解しなきゃいけない。
1つも、間違えられない。
プレッシャーが、胸を押し潰す。
「さ、続きしよっか」
りおが、また私の唇に自分の唇を重ねてきた。
長い夜は、まだまだ続く。
私の試練も、続いていた。
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