第15話 俺は



頭の中が、グルグルと回る。


これは、現実だ。


夢じゃない。


俺は、女になった。


そして、りおに支配されようとしている。


ダメだ。


誰かに連絡しなきゃ。


助けを呼ばなきゃ。


スマホ。


スマホはどこだ。


ボディバッグ。


確か、ボディバッグに入れていた。


「スマホ…」


私は立ち上がって、荷物を探す。


バッグを開ける。


財布、充電器、ペンライト。


でも、スマホがない。


「どこ…」


焦る。


リュックも開ける。


着替え、タオル。


でも、スマホはない。


「どーしたの?」


りおの声。


振り返ると、りおが立っている。


その手に。


私のスマホ。


「これ?」


りおが、にっこりと笑う。


「それ…返してください」


私は手を伸ばす。


「返してほしいの?」


「はい…」


「いいよ?」


りおは、あっさりと言った。


良かった。


返してくれる。


私は、ホッとする。


でも。


りおは、スマホを持ったまま、トイレに向かった。


「え…?」


追いかける。


りおが、トイレのドアを開ける。


便器を見下ろす。


そして。


「ほら」


ぽとん。


スマホが、便器の中に落ちた。


水の音。


「あ…」


私は、固まった。


「え…嘘…」


トイレを覗き込む。


水の中に、スマホが沈んでいる。


画面が濡れている。


もう、使えない。


「なんで…」


声が震える。


りおは、何でもないように言った。


「だって、スマホがあったら、誰かに連絡しちゃうでしょ?」


「でも…」


「この3日間は、私とのぞみちゃんだけの時間なの」


りおが私の肩に手を置く。


「誰にも、邪魔されたくないから」


その笑顔は、可愛い。


でも、冷たい。


「大丈夫。3日後には、ちゃんと元に戻してあげるから」


「本当に…戻るんですか?」


「うん、約束するよ」


りおが、私の頬を撫でる。


「だから、今は、私の言うこと聞いてね」


選択肢はない。


スマホもない。


逃げ場もない。


私は、ただ頷くしかできなかった。


「いい子」


りおが満足そうに微笑む。


「じゃあ、のぞみちゃん」


「は、はい…」


「まず、お風呂入ろうか」


「お風呂…?」


「うん。露天風呂、あるんでしょ?一緒に入ろう」


一緒に。


お風呂。


「あ、あの…」


「ん?」


「一人で入ります…」


「ダメだよ」


りおは、首を振る。


「女の子同士なんだから、一緒に入るの」


女の子同士。


確かに、今の私は、女だ。


でも。


「さ、行こう」


りおが私の手を引く。


露天風呂へ。


脱衣所に入る。


りおが、自分の浴衣を脱ぎ始める。


「の、のぞみちゃんも」


「は、はい…」


私も、震える手で、浴衣の帯を解く。


浴衣が開く。


下着姿。


淡い紫色のブラジャー。


黒いパンツ。


さっき、りおが間違えて渡したもの。


いや、間違えじゃなかったのかもしれない。


最初から、これを着せるつもりだったのかも。


りおが、ブラを外す。


豊かな胸が露わになる。


私は、目を逸らす。


「のぞみちゃんも、脱いで」


「あ…はい…」


私は、ブラのホックに手をかける。


初めての感覚。


どうやって外すんだ。


背中に手を回して、何度か試す。


「ふふ、手伝ってあげる」


りおが背後に回る。


指先が、背中に触れる。


カチッ。


ブラが外れる。


胸が、重力に従って揺れる。


重い。


柔らかい。


これが、私の体。


「はい、次はパンツ」


りおが、楽しそうに言う。


私は、震える手で、パンツを下ろした。


全裸。


女の子の体で。


全裸。


「可愛い体だね、のぞみちゃん」


りおが、私の体を見つめる。


恥ずかしい。


手で隠そうとする。


「隠さなくていいよ。これから、もっと色々、見せてもらうんだから」


りおが、私の手を取る。


そして、一緒に露天風呂へ。


お湯が、熱い。


でも、体の感覚が、いつもと違う。


肌が、敏感だ。


りおが隣に座る。


「ねえ、のぞみちゃん」


「はい…」


「これから3日間、楽しもうね」


りおが、にっこりと笑う。


その笑顔を見ながら。


私は、自分の運命を受け入れるしかなかった。


俺の人生は、完全に変わってしまった。


もう、元には戻れない気がした。

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