第10話 りおの荷物
りおは、リュックとボディバッグを持っていた。
それだけ?3日間なのに、荷物少なくない?
そんなことを考えながら、俺はまだドアの前で固まっていた。
りおの服装が、また衝撃的だった。
白いニット。そして、ミニスカート。
ミニスカート。
やばすぎるだろ。
細い脚が露わになっている。
目のやり場に困る。
でも、りお本人は全く気にしていない様子で、部屋の中に入ってきた。
「わあ、広い部屋!」
明るい声で言いながら、りおはリビングを見回す。
そして、寝室に入って。
「あ」
立ち止まる。
キングサイズのベッドを見つめて。
「ベッド、1つだけですね?」
小首を傾げる。
その仕草が、可愛すぎる。
画面で見るより、何倍も可愛い。
「あ、あの…」
何か言わなきゃ。
「俺、ソファで寝ます」
「え?大丈夫ですよ。一緒で」
一緒。
一緒って。
頭がパニックになる。
りおは、にこにこしながらリュックを開ける。
「じゃあ、田中さん!」
「は、はい」
「皆もしてるので…」
え?皆も?
「館内着に着替えて♡」
そう言って、りおは浴衣を手渡してきた。
その瞬間。
指先が触れた。
りおの手に。
柔らかい。
温かい。
心臓が爆発しそうだ。
ドキドキが止まらない。
「私も着替えるね」
え?
ここで?
「あ、あの…」
「大丈夫、ちゃんとバスルーム使うから」
りおはそう言って、自分の荷物から服を取り出す。
俺は手渡された浴衣を見る。
紺色の浴衣。館内着らしい。
でも。
持った瞬間、違和感があった。
重い。
浴衣だけにしては、重い。
広げてみる。
中から、何かが落ちた。
黒い布。
拾い上げる。
固まった。
ブラジャー。
黒いレースのブラジャー。
そして、セットのパンツ。
え。
え?
これ。
これって。
「あ、ごめんなさい」
りおの声。
振り返ると、りおが困ったような顔で立っている。
「間違えて、私のと一緒に渡しちゃった」
「あ、いや、その…」
慌てて下着を差し出す。
手が震える。
りおは、クスッと笑って受け取る。
「ごめんね、びっくりさせちゃった」
「い、いえ…」
顔が熱い。
絶対、真っ赤になってる。
「じゃあ、私先に着替えてくるね」
りおはバスルームに向かう。
ドアが閉まる。
俺は、その場に立ち尽くした。
手のひらに、まだ感触が残っている。
りおの手の温もり。
そして、さっき触れてしまった、黒い下着の感触。
「はあ…」
深呼吸する。
落ち着け。
落ち着くんだ。
でも、無理だ。
心臓が早すぎる。
浴衣を見る。
着替えなきゃ。
でも、ここで?
りおがバスルームにいる間に?
バスルームのドアを見る。
中から、微かに物音が聞こえる。
りおが、今、着替えている。
その向こうで。
「ダメだダメだダメだ」
頭を振る。
変なこと考えるな。
俺は急いで、リビングのソファの影で着替え始めた。
シャツを脱ぐ。
パンツを脱ぐ。
浴衣を羽織る。
帯を結ぶ。
慣れない動作で、何度も失敗する。
その時。
バスルームのドアが開く音。
「着替え終わったよ」
りおの声。
振り返る。
そして、また固まった。
りおが、浴衣姿で立っていた。
薄いピンク色の浴衣。
髪を片方の肩にかけて。
さっきより、色っぽい。
いや、色っぽすぎる。
「田中さん、似合ってる」
りおが微笑む。
「あ、ありがとう…ございます」
敬語になってしまう。
りおは、ソファに座る。
「じゃあ、これから3日間、よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
3日間。
この部屋で。
りおと。
二人きりで。
俺の人生で、こんな展開、想像したこともなかった。
これは、夢なのか。
それとも、本当に起きていることなのか。
りおは、にこやかに言った。
「ねえ、田中さん。これから、色々お話ししましょう」
色々。
何を話すんだろう。
不安と期待が入り混じって、俺はただ、頷くことしかできなかった。
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