第2話

「ロザリオさん、少し、状況を理解した方が良い」


ボクは静かに彼女の身を案じつつもそう告げる。

彼女の近くに居るゴーレムは、ロザリオさんに対する脅威を理解している為か警戒して攻撃はしてこないけれど、それでも彼女が自分一人では戦闘出来ないと知ると、即座に襲い掛かって来るだろう。


時間の問題であるし、ボクもその時間の限りを見極めて彼女を使う事を拒否している。


「は、あぁ!?わ、私を誰だと思ってるの?ロザリオ=インタングルメンツよ、スクールカーストのトップ、クイーンなのよ!?そんな私が、こ、殺されそうだって言うのに、何様のつもりッ!?」


金髪ロリの罵倒は人によっては趣味趣向に沿うものだろうけど、今のボクには効かない。

人格の矯正もまた、神代鍛冶師にとっては必要なものだ。

それを疎かにした、獅子斑くんは、神代鍛冶師としての才能にあぐらをかいていた様子だけど。

ボクが、彼女を扱う以上は、そんな真似はさせはしない。


「クズッ!!無能ッ!!馬鹿ッ!!早くしなさい、早くッ!!」


そうは言われても、まだダメだ。

ボクは、朴念仁の様な振りをしながら、彼女の言葉に耳を遮る。


「ボクはその様な名前じゃないよ、夜那岐やなぎルクス、と言う名で通っているからね……如何にキミが偉い存在であろうと、それ相応の態度と示しが必要だと思うのだけど、さて……ロザリオさん、キミの後ろに佇むゴーレムも、ようやくキミが無力である事を理解した様子だ」


ボクが見ている景色では、ロザリオさんの後ろに居るゴーレムが、ようやくロザリオさんが攻撃出来ない事を理解した様子で、唸り声を発しながら攻撃準備を行おうとしていた。

このまま放置し続ければ、ロザリオさんはあの凶悪なゴーレムの手によって破壊され尽くされる事が確定しているのだが。


「ひっ、あ、わ、分かった、わよッ!!使わせてあげるっ、や、ヤらせてあげるからっ!!」


彼女は蒼い表情をしている。

恐怖に顔を歪ませて、命乞いをする様に言っているけれど、それでもボクよりも優位性を崩さない言葉で話していた。


「何をだい?人から頼む時は、その様な口調で良かったのかい?」


にこやかに、ボクはロザリオさんに告げる。

脂汗を滲ませるロザリオさんの呂律は、さながら生まれたてのひよこの様に、可愛らしいく舌が回らない様子で、ボクにお願いをしてくれる。


「ひゃ、お、お願い、しまひゅっ、わたしっ、武器カラダ、ささげ、ますきゃら、お願いっ!!た、たすけぇてッ!!」


涙を流したと同時に、ゴーレムが彼女を狙い攻撃を開始した。

その表情と必死な姿を見たボクは、及第点だと心の中で浮かべながら、彼女の元へと一気に走り出す。

地面を駆け、ゴーレムが振り上げた鉄柱を複数固めた拳を、ボクは彼女の小さな体を抱き上げると共に即座にその場から離れた。


「は、ひゃっ!?」


速い、と誉め言葉を告げてくれたのだろうか。

まだ、恐怖で呂律が回っていない様子だけれど。

ボクは、彼女の体を抱き締めると共に、神代鍛冶師としての権能を使役する。

掌から発生する魔力は、創造妃を武器化する為の力として行使される。


その際に、ボクは彼女の肉体の情報を視覚化する。



『人態銘』ロザリオ=インタングルメンツ

『武装銘』スリサズ・ソニア

『武装状態』有刺鉄線バーブド・ワイヤー創造妃アーマード・イヴ

『鍛錬レベル』17/50

『スロット』

灼煉プロミネイス

武器に高熱を持たせる刻印。

密度が高ければ高い程、温度が上昇する。

刺月ピ・クー

刺突系武器専用の刻印。

切先が鋭く尖った部分を瞬間的に肥大化し敵を穿つ。

『武器ステータス』

〈破壊〉E 〈速度〉D 〈密度〉B

〈操縦〉C 〈射程〉C 〈会心〉E

『装備時上昇率』

〈筋力〉108.300%

〈敏捷〉221.003%

〈耐久〉110.439%

〈技量〉104.971%

〈耐性〉102.200%
















『性癖/性感帯』

〈首絞め〉

喉元を締め付けられながらの行為。

強く圧迫すればする程に主従関係を擦り込ませられる感覚が興奮を促す。

〈言葉攻め〉

自分よりも地位の低い相手からの罵倒。

女王と認識している自身が転落する様を想像し何度も果てる。

〈臀部の紅葉染〉

臀部を強く叩く事で起こり得る張り手のマーク。

強く叩けば叩く程にマゾ率が上昇する。

〈主従プレイ〉

立場逆転による行為。

普段自分が上であるのに関係性が逆転する事に興奮を覚える。

奴隷の様に扱われたいと思う願望。













成程。

因みに、装備上昇率から下の情報は神代鍛冶師として成長した者は『装備上昇率』より下の情報を得る事が出来る武器鑑定の眼が培われる。

尤も、この領域に達する事が出来る神代鍛冶師の存在は、ボク意外はあまり見た事が無いのだけれど。


さて。

彼女の情報を認識した所で、ボクは更に魔力を流し込んでいく。

そして、ボクの掌には一振りの、魔力で構築された大きな槌が展開される。


「え、な、なにその、おっきい、鍛冶師の、槌、はッ、そ、そんなの、れられたら……」


この期に及んで拒否をしようとする彼女に対して、ボクは静かに口にする。


「五月蠅いな……一人じゃ何も出来ない無能は、黙って従え」


その言葉と共に、ボクは魔力の結晶である鍛冶師の槌を創造妃である彼女に向けて叩き込む。

下腹部に向けて刺激を与える様に強打を行うと、彼女は痛みを覚えて足の先がピン、と伸び始めた。


「うっ、あッ、ィッ!!」


魔力を精確に流し込み、武装状態へと即座に展開させる為の、金打ちの儀。

これにより、彼女の肉体は全身が発情する様に熱を宿し……肉体が変化していく。

そして……ボクの鍛冶師の槌に絡まる様に、有刺鉄線へとロザリオさんは武装形態と化した。








有刺鉄線の創造妃バーブド・ワイヤーのアーマード・イヴ―――スリサズ・ソニア」








名を告げると共に、ゴーレムに視線を促す。

有刺鉄線状態の彼女を操作しながら、ボクはゴーレムと対峙した。

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