第7話


「……なぁ」


「ん?」


 細い隙間に入って出て来るのを嫌がって逃げている白蝙蝠を、

 ミルグレンが触って遊びたいからと引っ張り出そうとしている。


 そっとしておいてやればいいのに。


 そう思ったが、口に出せば睨まれるのは分かっていたのでエドアルトは黙っていたのだけれど、どうしても気になっていて、手元の本に集中出来なかった。


「さっきのラムセスさん、ちょっと様子変じゃなかった?」

「あいつはいっつも様子が変よ」

 ミルグレンは全く意に介してない。

「お前に言われたくないと思うが……」

「なんですって! エドアルト!」

 ミルグレンが折角掴んだ白蝙蝠をエドアルトに向かってボールみたいに投げて来た。


「いて! 投げるなよ蝙蝠を!」

「だってそいつ丸いんだもん♡」


 ぴゅーん! と一瞬目を回していた白蝙蝠が逃げていく。


「でも、それまでくつろいで寝そうな勢いだったのに急に……」


「メリク様遅いなぁ~」


 もう白蝙蝠を追い回すのには飽きたらしくミルグレンは窓辺で乙女の顔で頬杖をつき始めた。


 なんだろう。


 ラムセスが側を通り過ぎた時、エドアルトは何かを感じたのだ。

 例えばそれは、魔力を感じる時のようなもので、


(けど、俺は魔力なんてロクに感じとったりしたこと無いんだけどな)


 ただメリクやラムセスから聞く、魔力を感じる時の感覚を思い出すと、

 多分ああいうことなのかもしれないと思うような、そんな感覚だ。


 魔力を感じたのではないか、という気がしたのだ。

 一度そう思うと、もう足がむずむずして来た。


「ごめん! やっぱ俺、ちょっと見て来る!」


「はぁ? ちょっとエドアルト?」


 さすがにいきなり飛び出して行ったエドアルトにミルグレンは目を丸くした。



「……見て来るって……なにをよ?」



 彼女はきょとんとしながら首を傾げたのだった。



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