第3話「悪魔の罠」

平穏なはず……いや、ラウムが現れるまで平穏だった僕の家に、到底理解しえない手段で現れた女性……

その美しい女性を気に留める様子もなく、平然とグラスを傾けるラウムに、僕は声を荒げる。

「どうするんだよ。あのジュリアンナさんは」

「ジョアンナです」静かなその声は僕の心に突き刺さった。

「あっ、ごめんなさい——」

淡々とグラスを傾けるラウムは、冷めた目で僕を一瞥した。

「其方の護衛とするのである」

「はっ?」思わず声を上げた僕は、ジョアンナを見る……たしかに護衛に向いていそうな体格だが、その前にいろいろと問題がある。

ラウムは現状のすべてが当然であるかのように、落ち着いた口調で話を続ける。

「某も伯爵の爵位を持つ身ゆえ、昼夜其方についておるわけにもいかぬ。だが、某がおらぬ間に、其方を救えぬようなことが起きぬとも限らぬ。ゆえに、其方の護衛とするのであるな。ジュリアンは其方の魔力と某の術の賜物ゆえ、其方に忠実に仕えよう」

「——ジョアンナです」

ラウムはジョアンナの訂正を気に留める様子も見せず、何かに納得したようにうなずいている。

「——護衛って言ってもさ」

自分に『護衛』が必要なほどの価値があるのか——そんなことを思ってしまうあたり、僕はまだこの状況を受け入れられていないのかもしれない。


ジョアンナは、諦めと呆れから小さくため息をついた僕をまっすぐに見つめて、「ご主人様のおそばに仕える栄誉、何よりも光栄です」と微笑んだ。その微笑みを僕は素直に美しいと思った。清楚な顔立ちに、曇りのない眼差し。腰の辺りまで伸びた、艶のある黒髪。

——だが、次に目を奪われたのは、その『肉体』だ。

二メートルを超える長身に、たわわな胸と引き締まったウエスト。そして、その存在すら霞むほど、大きな尻と力強い太もも。

「——デカいな」

「気に入らぬか?」

「そうじゃないけどさ……その前に……」

「私は、ご主人様のお好みではございませんか?」

ラウムとの会話を聞いていたジョアンナが、立ち尽くしたまま目に涙を浮かべていた。

彼女の声は甘美で、微かに震えていた。その瞳は僕の一挙手一投足を見逃さないかのように、真っ直ぐに僕を見つめたままだ。

「いや、そうじゃないんだ……」これは『ご主人様』と呼ばれたご褒美を否定するわけではない。彼女の震える声に僕の心が揺れ動き、この場を穏便に済ませるための時間を稼ぐつなぎだ。

何か彼女を傷つけずに伝える言葉はないかと、必死に思考を巡らせる僕を邪魔するかのように、ラウムがジョアンナに声をかける。

「ジョアン、そんなところに立っておらず主人に酌をせぬか」

「ジョアンナです!」

……もはやコイツは、わざと言い間違えているとしか思えなくなってきた。

少し怒った口調で「もう男性の名になっています!」とラウムを一瞥し、足を踏み出すジョアンナを、僕は思わず「待って!」と制止した。

「——ご主人様……私のことを嫌っていらっしゃるのですか?」

立ちすくんだジョアンナは、見開いた目に涙を浮かべ、今にも泣きだしそうなほど声を震わせる。その美しい顔に刻まれた切ない表情に、僕は胸が締め付けられ目を逸らした。

彼女はどこか必死だった。さっきまでの静かな従順さの奥に、何かを試すような、不安げな色を見た気がする。それに気づかず——いや、目を伏せて、取り繕うだけの言葉を探していた自らの浅はかさに失望すら覚えた。

僕の後悔にも似た心境を察したのか、ラウムが小さくため息をつき、グラスを一度傾けた。そして、今度は大きく息を吐き、冷静な口調で「汝は酌をせずともよい」とジョアンナに言い放った。

「いや、そうじゃなくて……あのさ……」


僕が言い終わる前に、再び黒い霧が立ち込め渦巻き始めた。さっきも見た光景だ。

この先の結果は完全に読める。無表情で霧を眺めるラウムに、僕は焦りを感じながら「何やってんだよ!」と声を上げた。

その声と同時に、今度は赤く輝く何かが霧に飛び込むのが見えた。

制止の意味を込めた僕の声は、霧が晴れると同時にむなしくかき消され、そこには予想どおり、女性が一人立っていた。

「汝、名をなんと申す」そのラウムの声は彼女に届かなかったようで、驚いたようにぱちぱちとまばたきをしている。

興味深そうに周囲を見回す彼女の瞳が僕を捉えた瞬間、はっきりと光を帯びた。

「——兄様っ!」歓喜の声とともに、彼女はジョアンナを押し退け、まっすぐ僕に飛びついてきた。

「兄様?えー!」彼女を受け止めた僕は、グラスをひっくり返し、椅子ごと派手に転倒してしまった。

「いたたた……」

「ああ、兄様なんとおいたわしいお姿に……」

そのおいたわしいお姿になったのは、どう考えても自分のせいだろう。


「女、名を申せ」

ラウムの声は聞こえていたはずだが、彼女は視線すら向けることなく、僕に抱きつく腕に力を込める。

「レイチェルと申しますわ、兄様」

レイチェルと名乗った女性は、僕に抱きついたまま離れる様子はない……が、気持ちいい——いや、悪い気はしない。

「うふっ、兄様は温かいですわ——兄様……さあ、愛しのレイチェルですわ。どうぞ遠慮なく、存分に愛でてくださいまし」

僕を派手にひっくり返して、意味不明なことを言いながら、抱きついて離れないレイチェルを、ジョアンナが引き離してくれた。ちょっと惜しい気もするが、今は「助かった」と言っておこう。

「何をしますの!兄様はレイチェルに会いたかったのですわ!」

「ご主人様……この様な女がお好みなのですか?」

レイチェルを脇に抱え、仁王立ちするジョアンナは、僕を見下ろしながら、声を震わせた。

「いや——そうじゃなくて……ちょっと聞いてほしいんだけど……」

「兄様、レイチェルのことがお嫌いですの?」

百五十センチくらいの小柄な体に、控えめながら整った胸、くびれたウエスト、そして主張しすぎないけど形のいいお尻。そんな女性に『兄様』と呼ばれ、潤んだ瞳で見つめられるなんて、とんだご褒美——いや……罪悪感が湧いてくる。

「そうじゃないんだ!」

「では、どうなのですか?ご主人様」怒りを堪える表情さえも、心を奪いにくるジョアンナ。

「兄様!レイチェルを嫌わないでくださいまし」涙目ですら、全力で可愛さを主張してくるレイチェル。

「其方はこれも気に入らぬのか?」空気を読まない元凶のラウム。

もう言葉を選んでいる場合じゃない、僕はこの三人にはっきり聞こえるよう、大きな声で叫ぶ。


「二人とも——服を着てくれ!」


仁王立ちのジョアンナも、彼女に抱えられたレイチェルも、一糸纏わぬ姿なのだ。

「急なことで……ご主人様にとんだお目汚しを……失礼いたしました——」

レイチェルを解放し、急に恥ずかしそうな表情を浮かべて、両腕で大きな身体を申し訳程度に隠すジョアンナ。

「ふ、服を着ていないことに気がついていませんでしたわ——は、裸で兄様に抱きついてしまいましたの……」

ジョアンナから解放され、顔を真っ赤にしてしゃがみ込むレイチェル。

「——そうであったな」

もはや、わざとやったとしか思えないラウムが呟くと同時に、ジョアンナが光に包まれた。

彼女を包んだ光が蒸発するかのように霧散すると、彼女の身体を真新しい服が包んでいた。

「なぜメイド服……」

「其方の好みであろう?」

「——はい」

ジョアンナは胸元が大きく開いた黒のワンピースに、白のピナフォア、袖口には白のカフス、頭にはホワイトブリムを装備した完全かつ魅惑的な装い。見る者の視線を、自然と胸元に引きつけてしまう不思議な力を持つメイド服のようだ。


続いてレイチェルが光に包まれた。「——これは」霧散した光の中から現れた彼女の姿に息を呑む。

肩開きで白をベースに、ピンクの縁取りがされたフリル付きブラウス。胸元を黒の可愛らしいリボンが彩り、フリルのついた黒いスカートがふわっと揺れる。全体でレイチェルの可愛さに、ちょっと小悪魔的要素を加えるコーディネート。その完璧さに僕の目が奪われる。

「其方にはご褒美であろう?」

「——ありがとうございます」

空気を読まないラウムに対して、僕は心の底から自然に感謝の言葉が出た。

「その服は傷んでも勝手に治る。主人の魔力が続く限りであるが」

ラウムは立ち上がり、ジョアンナとレイチェルに目を向けた。

「汝らは主人の護衛であるが、まずは主人の酒の相手をせぬか」

「——言われなくともいたします」

僕の右隣の椅子に座るジョアンナ。

「兄様はお酒より、レイチェルがお好きなのですわ」

僕の膝に座ろうとしたレイチェルを、ジョアンナが「あなたの席はあちらです」と止めると、レイチェルは「イヤですわ!」とそっぽを向いた。

結局、レイチェルはラウムが座っていた隣の椅子を、僕の左隣に運んで、「今日はここで我慢しますわ」と腰を下ろした。

この状況をどうするべきか戸惑いつつ、ラウムを見ると、彼の身体を黒い霧が包み始めていた。

「某は一度領地に戻る」

「領地?」

「其方ら人間が地獄と呼ぶ場所であるな」

そう言い残してラウムは、その身を完全に包んだ霧と共に消えた。

なぜだろう、一人きりになったわけじゃないのに、急に世界が静かになった気がした。


——ラウムが去り、三人が残された部屋に、「やっと邪魔者が去りました」とジョアンナの呟きがやけに大きく響いた。

「もう一人邪魔者が残っておりますの」レイチェルがジョアンナを睨む。

そんな二人に挟まれて、僕は何を話せばいいのか分からず、じっと座っている。二人を見ることすらできず、地蔵のように正面を見据えて、心を無にしようと深呼吸を繰り返す。そうだ、僕は地蔵だ。見目麗しい女を侍らせて、酒を煽るとんでもない地蔵だ。

冷静に考えると、この状況はラウムがあえて作ったのだろう。『死』という言葉で一度絶望に落としてから、正反対の快楽を与えることで、僕の魔力を借りると言いながら、完全に支配するつもりじゃないか?


「ご主人様どうぞ——」

ジョアンナが睨むレイチェルを無視して、僕のグラスにウイスキーを注ぐ。

「あっ、ありがとう……ございます……」

近づいたジョアンナは、地蔵と化したはずの僕の視線を奪う。

黒髪は光を反射した部分が、濃い緑色に輝き、瞳は深緑の宝石のようだ。

「いかがなされました?」

ジョアンナは見惚れる僕の顔を、首を傾げ、不思議そうな表情で見つめ返す。その美しくも可愛らしい表情と、おどけたような仕草に不意打ちされ、僕はなぜか恥ずかしくなり思わず視線を下げた。だがそこには、指一本のお手伝いで、メイド服から簡単に解放されそうな、双丘が待ち伏せていた——

「ご自由に弄っていただいても、構いませんよ?」

良からぬ思考を見透かしたかのように、ジョアンナが僕の耳元で囁いた。

「まさぐ……」女性は自らに向けられる男性の視線に敏感だと聞いたことがある——迂闊だった……恥ずかしくなり、僕は顔を伏せてしまった。

「ご主人様、遠慮なさらず……」ジョアンナの誘うような声は、耳を撫でる吐息が僕の心を優しくこじ開け、甘く自然な香りで幾度も鼻孔をくすぐり、開いた心を少しずつ奪っていく。

こ……このままでは地蔵失格だ!落ち着け。よし、僕は紛うことなきお地蔵さんだ……これも全て狡猾な悪魔の策略だ……地蔵と化した僕に色仕掛けは通じない。


僕は煩悩を振り払うように、グラスを一気に煽った。

空になったグラスに、「お強いのですね」とジョアンナが再びウイスキーを注ぐ。

「レイチェルが注ぎますわ!」

ジョアンナが僕に向けるのとは、明らかに違う冷ややかな視線でレイチェルを睨む。

「レイチェルは先ほどこぼしたでしょう」

レイチェルは僕の腕にひしと抱きつき、ジョアンナに視線を返す。

「兄様、ジョアンナがいじめますの……」

「レイチェルッ!」

ジョアンナの苛立ちに対抗するように、更に強く腕を抱きしめ、上目遣いで僕を見つめてくる。実にあざとい……だが僕は、鋼鉄のように固く強い心を持っている。ラウムの思い通りにはならない。

「次はレイチェルが注いでくれる?」

——固く強い心とは裏腹に、優しくレイチェルにお願いしてしまった。このままではラウムの思う壺だ。意思を強く持たなければ……だが、あの吸い込まれそうな瞳を正面から見てしまえば、拒絶なんて不可能だ。僕が甘いのではない——人間である以上、仕方のないことだ。

「はい!兄様、早く飲んでくださいまし」そう言って微笑むレイチェルの肩より少し上で切り揃えた黒髪は、光を暗い赤色に反射している。白く滑らかな肌に、ピジョンブラッドルビーを思わせる深紅色の瞳が妖しく光る。

「甘やかしてはいけません!」

突然かけられた声に驚き振り向くと、ジョアンナが不機嫌そうな顔で僕を見ていた。

どのような表情でも美しさは変わらない。だが、この美しさは僕を篭絡するため、酒との相乗効果を最大限得られるよう作られたものだ。分かっている。ここは話の主導権を握るべきだろう。

「アンナは綺麗だな」

一瞬静かになったアンナは、「アンナ?」と首を傾げ僕を見つめた。

「親しみを込めて、そう呼びたいんだけど……だめかな?」

親しみを込めたいのであって、呼びにくいとか、舌を噛みそうとか、そんな理由ではない。いや、そんな些細な思惑はバレないはずだ。仮にバレても今なら酒のせいにできる。

「アンナ——はい、私のことはアンナとお呼びください。ご主人様……嬉しゅうございます」

アンナは僕にそっと寄り添ってくる。アンナが触れた瞬間、柔らかくて温かいものが、僕の理性を一気に崩壊させた。

しまった、主導権を握るつもりが墓穴を掘った……喜びの中にも淑やかさを損なわない表情と、色気の中に上品さをも感じさせるしぐさ。

——地蔵失格……煩悩地蔵はラウムの策略に陥落した……


地蔵を諦めた僕の後ろから突然、「なぁー!ずるいですわ。ずるいですわ!」と大きな声が聞こえた。

振り向くと『私、激オコです!』と主張した顔が、「兄様!親しみを込めた名をつけてくださいまし!」とぐっと近づく。

『えっ何、この可愛い生き物!愛らしい……実に愛らしい!』この妖しさを纏う可愛さも、ラウムが自らの大望を達する目的のために作られたものだ。それは、十分に理解している——地蔵は陥落したが、いまだに鋼鉄の心を持つ僕は、これ以上、悪魔の思いどおりにはならない。

「レイチェルじゃダメなのか?」

「そんな名前、もう忘れましたわ」

頬を膨らませ、そっぽを向いたレイチェルの顔も、また違った可愛らしさを見せてくる。

「じゃあ、レイでどうだろう?」

「レイ——ああ、兄様の話す言葉に馴染む素敵な名前ですわ。兄様はやっぱりレイのことを愛しているのですわ!」

適当に名前をつけたんじゃない。呼びやすくて、少しだけ甘えた響きが気に入ってつけたんだ。そう開き直った僕の腕を、レイは柔らかいもので包むかのように、しっかりと抱き締め、うっとりとした表情で見つめてくる。

可愛さの中で妖艶に輝く瞳と、腕に伝わる柔らかな感触に、僕の鋼鉄の心は甘く溶かされ、ラウムの張った罠にすくい取られた……


溶けた鋼鉄の心を持つ煩悩に陥落した地蔵……もはや、『人間らしくてよかったじゃないか』と自分を慰めることしかできない。

「うるさいですわよ。レ・イ・チェ・ル」

「あら、誰ですのそれは?レイのことではありませんわ。さあ、兄様、早くそれを飲んで、レイにお酌をさせてくださいまし」

レイの期待に応えるように、僕はグラスを一気に空けた。

レイは満足げな笑みを浮かべながら、すぐにウイスキーを注いでくれる。もうこんな罠なんて自ら落ちてやろうじゃないか。どうせ罠に落ちるなら、少しはこの二人のことを知っておこう。そして、隙あらば逃げ出せるよう準備しておけばいい、我ながらいい考えだ。

思えば、二人は悪魔が僕の目の前でこの姿を作ったのだから、サキュバスとかいうものを土台に作られた、悪魔かその親戚の類なのだろう。だからといって、外見はともかく行動も人間の女性にしか見えない二人に、『お前ら実際何者なんだ?』なんて聞くのは無粋だ。


——よし、先ずは無難かつ紳士的な質問から入ってみよう。

「ところで、二人はいくつなの?——」

しっ、しまった……女性にいきなり年齢を尋ねるなんて、紳士としてあるまじき言動ではないか……

「私は長く彷徨っていたのですが、死んだのは二十三歳の頃でした。処女でございますが、それも今夜で終わりになりそうです……」

焦る僕に、アンナが優しく答えてくれた。若いな——でも……処女は関係あるのか?護衛だよね?

僕を挟んで、レイがアンナに勝ち誇ったような笑顔を浮かべる。

「器用な阿婆擦れが起きたまま寝言を言っていますわ。兄様、レイが死んだのは十八歳ですの。もちろん処女は兄様のために守っておりますわ」

もっと若いな——でも、純潔は護衛の必須条件なのか?いや、やはり護衛と称したラウムの狡猾な罠……

いや待て……そうじゃない、二人の答えにとんでもない単語があったじゃないか!——死んだ?ということは生きていたってことか?

……あまりに自然に言われた『死』という言葉に、僕の背筋が一瞬だけ凍った。まるで、それが日常会話でもあるかのような軽さだったから。


「えっ、二人とも人間だったの?」驚いて聞き返した僕に、二人は「そうです」「そうですわ」と同時に答えた。

二人のことを、悪魔のような良く分からない存在だと思い込んでいた僕は、年齢以上にとても失礼なことを聞いてしまったような気がして、申し訳ない気持ちでいっぱいになりうつむいた。

「ごめん、悪いことを聞いちゃった。気にしないで」

うなだれる僕の背中に、二人が優しく手を添えてくれる。

「大丈夫です、ご主人様。むしろ、こうしてお仕えできることを光栄に思います」

「兄様、気にしてはいけませんわ。兄様と巡り会えたことに、レイは感謝していますの」

「そこは同感です」

「気が合うこともあるのですわね」

「態度は気に入りませんが」

「やはり気が合うところもあるようですわ」

「ご主人様?」

「兄様?」


——黙ってうつむく耀を、二人が覗き込む。

「——寝てしまいましたわ」

「ええ、お疲れだったのでしょう」

「素敵な色ですわ」

「ええ、素敵な色です。とてもいい主人に巡り合えました」

アンナとレイは見つめ合い、微笑み合った——

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