第6話
2人を乗せた車が横浜港に到着
「あのさ…Nancy」
「ん?」
「どうなるかわかんねぇから言っとくわ、Nancyとコンビ組んで楽しかった、アタシに付き合ってくれてありがとう」
雪は窓ガラス越しにうつるNancyにそう伝えると肩に軽い衝撃
「痛ッ!なにすんだよ」
「何弱気になってるの?らしくないよ、奈緒美と神崎…2人がどれだけか分からないけど私達は負けない、今度こそあの子と向き合うの」
そう言いながらNancyは愛銃のM&P9の弾倉を確認
「…だな、ひよっちゃった…ヨシ!行くか!」
2人は車を降り第17番倉庫へ向かった
第17番倉庫
思い扉を2人が開けるとコンテナがまばらに放置されていた
「よう!刑事さん達」
コンテナの奥から神崎の声がした
「そろそろ船の時間なんだよ、で何?用事は?」
刀に手をかけた雪が声を張る
「富田 勝殺害、及び三原 圭殺人未遂で神崎 達也、上野 奈緒美を逮捕しに来たんだよ!」
「勇ましいなぁ、聞いたか?奈緒美?」
奥から神崎と上野が現れた
「奈緒美、お前を捨てた奴が今度はお前を捕まえるらしいぞ?どうする?」
「三原さん生きてたんだ、証言したの?私とお…神崎さんが撃ったって」
「?!」
「…」
2人は三原からは状況を聞いてない
「線状痕は?アタシ達の硝煙反応は?そもそも撃ったとされる拳銃…どこにあるの?弾が発見できたとしてもそれを発射した拳銃が無きゃどうとでもなる、日本は精密司法、疑わしきは罰せず。逮捕ができてもこんなもん公判が維持できないわ」
上野は淡々と話を続けた
「ほら?法なんて何の役にもたたない、法なんて誰も守ってくれないの、強い者の味方なの。実際私がやった動画…認めないでしょ?警察も検察も裁判所も。私を逮捕ようともしない、情けないね、正義なんてのは何もできないの。だから制裁は必然、なんでわからないの?涙を飲んできた人達…法で守られない人達を黙認し、「仕方ない、しょうがない、仇をとっても何も変わらない、復讐なんて意味が無い」と頭がお花畑の他人様が弱者を押さえつける…無念のまま死んでいった人達も大勢いるの!なのに法で裁かれないクズが死んだ途端、なぜ法を持ち出すの?そんなもん正義でもなんでもない!」
「そうやって主観で人を判断した先の世界は法が機能しない世界よ!法が万人に平等なくなったら誰も従わなくなるの!そんな事もわからない奈緒美じゃないでしょう!」
「ハッハッハ、100点満点の綺麗事だな…」
「黙りなさい!神崎!」
Nancyが銃をホルスターから抜き構えようとした瞬間
「おっと…そのまま両手を上げろ、田原・Nancy・香織」
神崎がサプレッサー着きM9を瞬時に構えNancyの頭に狙いをつけた
「お前も射撃が上手いらしいがな、俺もそれなりに上手いんだ、勝手に動いたら次はない、いいな?」
「それに私を捕まえたかったらあの動画が本物とあんた達が証明すればいいじゃない」
奈緒美は表情変えずに淡々していた
「もうわかってんだよ!モール内で入れ替わったんだろうが?!」
雪はかき消すように声を張ると2人が笑い出した
「アッハッハッハッハ…憶測じゃねぇか、そんなもん、なぁ?奈緒美」
「本当笑える、裁判所が私を窃盗で有罪にした時点で完全犯罪なのよ。そんな事もわからないの?」
「今のは自白だろうが!絶対にアンタに手錠をかける」
雪は刀に手を当てる
「奈緒美ー?この刑事さんはやる気マンマンだぞ?どうする?」
奈緒美は隠し持っていた特殊警棒を取り出し振って構えた
「気に入らない人間を殺すとね?案外スッキリするんだよ…私の事を正義ごっこと言い放ったコイツにそれを教えてやるんだ」
奈緒美が雪の右側を狙い警棒を振り下ろし刀を抜いた雪がそれを受け流した
「警棒ごときでアタシをやれんの?」
「おめでたいやつね…刀…見てみなよ」
雪の刀が刃こぼれをしていた
「刀は基本一撃で決めないとそうなる、でも警棒はさ?当てりゃ良いだけなんだよね!」
奈緒美の連続攻撃を雪は受け流し即座に応戦するも奈緒美のスピードが早く防戦一方、一瞬の隙をつき左肩を狙うが見事に捌かれた
「フフ…甘い甘い、ほら?警官は殺せないから急所は狙わない…だから攻撃も読めるの」
奈緒美は隠し持っていた小型のナイフで雪の左肩を突き刺すと雪は傷口を押えた
「アァ!…」
「雪!」
Nancyは本能的に雪の支えになろうとしたが神崎に静止された
「動くな!」
「片手じゃあ刀握れないねぇ」
「フン!お前なんざァ素手の片手で充分だ、正義ごっこ女」
雪は刀を捨てるとファイティングポーズ
「どこまで私をイライラさせたら気が済むのかなぁ?本当にぃ!」
警棒を捨てて奈緒美は雪に殴り掛かる
「奈緒美!何やってる!そいつの言い分なんて耳に入れるな!」
神崎は叫ぶが言葉が届く事はなかった
お互いが防御を捨てて素手で殴る蹴るの連続
「強いじゃん!見た目だけかと思ったよ、金髪なんかにしてさぁ!」
「強がんないで倒れろよ!もう!」
バチン、バチン、バチン、バチン
雪も奈緒美の顔もみるみる腫れていく
「なんで!倒れないの!」
「もう奈緒美から逃げない、全部受け止める!もっと打ってこい!」
「そこまでしてアタシを捕まえたいの?!雪の正義をしたいの?!」
「アタシの!正義は誰も!見逃さない!見捨てない!」
肉がぶつかる音が続き途切れ途切れだが言葉を交わす2人
「正義で麻美もお母さんも守れなかった!何が見捨てないだよ!私を見捨てたクセに!」
「あの時あんたの手を取らなかったたこと、ずっと後悔してきた、許して欲しいなんて思ってない!いつかまた奈緒美と…会えたら胸張れる警官で居られるために…あたしは悪党に手錠をかけ続ける!」
「それがあんたの正義な訳?!手錠かけたって有罪にならなきゃ意味なんて!無い!」
奈緒美がハイキックを雪の顔面に叩き込こむが雪は腕でガード
「有罪とかどうとか…正義がとうとか関係ねぇ…手錠かけるってのは悪い事した証明の重しなんだ…ハァ…手錠の重みを分からせる事が正義の1歩なんだよ!だから…人殺しした奈緒美!お前に手錠をかける!」
雪の右ストレート奈緒美を捉えた
「痛ッ!こっの…何が胸を張れる警官よ!何も守れない、何も助けられない警官のくせに!偉そうな事…」
奈緒美が大ぶりの掌底を放つが雪はしっかりガードし
「違う!アタシは警官としてじゃなくて友達としてアンタを止める!いい加減!目ぇさませぇ!」
言うと同時に雪の右掌底が奈緒美の鳩尾を捉えた、渾身の一撃をくらい奈緒美は膝から崩れ、雪もまた力尽きて倒れた
「ハァ…ハァ…もうダメかも…身体動かないや」
「雪!立って!」
「無理だ…Nancy…後たの…」
雪が言い終わる前に奈緒美が立ち上がり雪に馬乗りになった
「ハァ…ハァ…正義なんて最後に勝ったやつが言っていいんだ、何が手錠の重みだ…なにが…なにが…」
奈緒美は弱々しい拳を雪に叩きつける
「なら奈緒美…の勝ちだな…好きにしろよ…でもよ?なんで泣いてんだよ…」
「どうして!あの時こうやって私に向き合ってくれなかったの…こうしてくれれば…私は…私のままで居られたの!アンタやNancyがいてくれたら…なのに…もう戻れない…人を殺してしまったの!もう…」
「やめろ!戯言に耳をかすな!お前は間違えてない!あのクズはまた誰かを不幸にする!それを止めたんだ!奈緒美、お前は正しい!」
「…もうわかんないよ…雪達や三原さんを利用し富田に大木を殺させ梶原も殺した…もう疲れた…でも」
雪が奈緒美の手を握る
「償うなら手伝う、自首するなら付き合う、何年かかってもアタシもNancyもアンタを待ってる、だからもうやめよう…こんなこと…何より麻美さん…妹さんが今苦しんでる奈緒美を見たら悲しいよ、自分のために生き方を変えたってなったら悲しすぎるだろう?」
「まだ間に合うかな…」
「間に合うよ…なぁ?Nancy?」
「うん!奈緒美!だからもう自分を責めるのやめようよ!奈緒美は1人じゃないんだから!」
「やめろ!こいつら2人はお前の事をまた捨てるぞ!奈緒美!お前には俺がいる!俺が…」
珍しく神崎が感情的になり上野の説得に意識がいきNancyを狙っていた銃が下がったのをNancyは見逃さなかった
「神崎!あの子を惑わさないで!」
Nancyは銃を抜き神崎に発砲した
パァン!
乾いた音が響いたその瞬間
Nancyの構えた銃の先に立っていたのは上野だった
「ゲホッ!」
呆然とする2人、事実が呑み込めない様子
「奈緒美!どうして!」
Nancyが駆け寄るも先に神崎が倒れる奈緒美を支えた
「近づくんじゃねぇ!バカ…何してんだ…」
「ごめんね…色々…してくれたのに…」
「いいよ、もう…俺なんか庇って…どうして…」
神崎の目に涙があふれる
「見つけ…てくれて…ありがとう…嬉し…かった…思い出してくれて…」
「喋んな…分かったから…」
「ダメな……でごめんね…何も…」
奈緒美は力を振り絞り神崎を突き飛ばした
「梶原殺しも大木の事も…全部私が…やった…だから…この人は…関係ない…全部…全部…私が…」
「分かったから!ごめんね!ごめんね!奈緒美!」
自責の念かられたNancyは泣きながら謝っていた
「気に…しないで…私が勝手に…やった事…だ…から…相変わらず射撃…凄いね…」
「どうしてこんなやつのために!」
「近づくんじゃねぇ!誰も!コイツに!」
雪も奈緒美に近づくが神崎が怒鳴り銃を向ける
「ねぇ…誰も見捨てない…って言ったよね?なら…神崎さんも助けてあ…げ……」
「バカ、俺の心配なんてするんじゃねぇ!」
銃弾を受けた奈緒美の身体から血が湧き出る
「人…殺しちゃった…から麻美やお母さんの…ところには行けない…かなぁ…また1人に…なっちゃう…いや…だなぁ…怖いなぁ」
「もう1人になんてしない、約束したろ?!なぁ?!なぁ?!」
「何…?もう…聞こえない…よ…お……ぃ…ちゃ……ばいばい」
奈緒美の手から力が抜けた
「奈緒美!奈緒美!」
神崎は奈緒美の身体から出た血を両手につけ髪をかきあげる
「てめぇらの薄っぺらい正義感でコイツをどこまで惑わせば気が済むんだ?!許さねぇ…殺してやる……こい…第2ラウンドだ…俺の…大切な…大切な人間にふざけた事を吹き込んで…タダですむと思うなよぉぉぉ!」
神崎が銃を構えまずは雪を狙う
瞬時にNancyが動き体当たりをして雪をコンテナまで飛ばした
「Nancy!」
「雪は隠れてて!」
「1人で俺を相手するか…田原!」
Nancyは威嚇射撃をしながら神崎と距離を詰める、神崎をコンテナに移動させない為の戦略
「ほぅ、所轄のデカにしておくのは勿体ないな!いいだろう!お前のやり方でやってやる!」
神崎は瞬時にNancyの目の前に移動し銃を構える、瞬間Nancyは神崎の銃を持つ手を弾き自分の銃を向けるが神崎も同じような動きをした、相手の銃を持つ手を弾き自身の銃を相手に向ける、お互いの銃口が入れ代わり立ち代わり雪はそれを目で追うのがやっとだったが神崎が1枚上手だった、Nancyが体勢を変える瞬間、神崎が相手の軸足を蹴り体勢を崩させた後銃口をNancyに向けた
「まずは1人…奈緒美の所に行って謝ってこい」
「ウァァァァァ!」
パァン!
雪の叫び声が聞こえ神崎が背中の衝撃に驚き目をやると出血
その先にはG19を構えた雪だった
「クソ…俺とした事が…お前銃持ってたんだな」
「Nancyは…やらせない!」
雪が銃を構えながらNancyを引き起こした
「大丈夫?!」
「うん、ありがとう」
「ゴホッゴホッ!クソ…奈緒美の仇も取れねぇとは…俺もヤキがまわったな」
「こんな復讐計画をどうして奈緒美にやらせたんだよ!答えろ!」
「復讐したって変わらないと言いたいんだろ?とことんてめぇらは綺麗事だな…お前らにはわかんねぇよ…復讐を糧に立ち上がれる人間もいるんだ…善悪をお前らの物差しで測んなよ」
「神崎 達也、貴方がS…大隈の情報屋なのは分かってる、大隈の狙いは何?どうして街の裏組織を貴方がまとめたの?それに奈緒美とどういう関係?」
雪が問うが神崎は鼻で笑う
「…Sか…そう思いたいならそう思え」
「違うの?!」
「警察官としてお前らは立派だよ…だがな?ガチガチに凝り固まった桜の正義で何を…誰を守れんだ?」
神崎は血を吐きながら続けた
「俺は何度も何度も人を裏切って利用してきた、だがそうやって守られる社会がある…法律ってのはな?社会を守るかもしれねぇが目の前の恐怖や悪党から個人を守ってくれねぇんだ、特に弱者はな…だから俺は個人を守るために情報を仕入れそれを大隈に流した…人の為と…正義のためと信じてな…だがそんな誰からも感謝されない…ゲホッゲホッ…仕事にかまけた結果…奈緒美は俺の知らない所で壊れちまった…いや、壊されちまった…もっと早く見つけてれば助けてやれたのに。お前ら…大隈に目ぇつけられてんだろ?気をつけろ…警察の桜の色はお前らが思ってる色じゃない…出世、権力争い…警察ってのは真っ黒だ…その真っ黒い中でお前らがどこまでやれるか見たかっ……」
「撃てぇ!」
大きな号令が倉庫内に響き渡ると乾いた銃声が連続しその都度神崎の身体から血が吹き出しその場に倒れた
2人が銃声のした方を見ると多人数が銃を構え中心には大隈がいた
「なんで撃った!」
雪が大隈に叫び声に似た声で問い詰めた
「なんで?これはおかしい事を…神崎はHERMESを使い街を荒らし梶原殺しに関わった人間、そんな人間が所轄の刑事を殺そうとした…君らを守るためなのに心外だな。それにHERMESは追うなと言ったはず…スマホの電波を追っかけてたらこんな状況…これは問題…」
バチン!
Nancyが大隈の左頬を平手打ち
「問題にしたきゃすればいいわ!」
「…処分…楽しみしとけよ…」
そう言うと大隈は神崎に近づいた
まだ辛うじて息がある神崎は奈緒美の遺体に近づこうと必死で身体を這わせ奈緒美の手を掴む
「俺も…すぐに行く…もう……1人にしない……って…約束…ダメな……でごめんな」
それだけ言うと神崎は事切れた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます