エピローグ

「どうだ?具合は」

「まぁ…なんとか生き残りましたよ」

三原の病室にやってきたのは細野だった

何かを察した三原の妻は適当な理由をつけ退出

「あの手紙…読んだんですよね?」

「まぁな」

「俺…辞めます、辞表出します」

細野は目線を逸らす

「みんなを裏切ってたんだ…上野 奈緒美の事も隠してた…知らなかったとはいえ情に流されあの二人の計画に協力した…警官失格だよ」

「1度しか言わんぞ?俺はこの事を上に言う気はない、それにお前が撃たれる前にあの二人に電話を繋げなかったら何も解決しなかった、あの二人を信じたんだろう?仲間として…ならお前は刑事課強行犯係にいていい、それにお前に辞められるとあの二人…いや…あのめちゃくちゃな連中の面倒を俺1人で見なきゃならない、それはごめんだ。だから早く帰ってこい」

三原は涙を堪え黙って頷いた





上野 奈緒美の殺人動画は捏造と県警本部は発表


事件そのものは上野 奈緒美、神崎 達也両名は被疑者死亡で送検

HERMES、もといReZARDは富田と神崎が居なくなり散り散りになり街は誠人会や海滨龙人の残り連中がReZARDの残りメンバーと対立、皮肉にも均衡が神崎の死によって崩された


「なんか分かった?」

雪が4課の応援から帰ってきたばかりの同僚、逆巻 修平に尋ねた


「ん?あぁ神崎の事か?県警本部の知り合いに聞いたが前歴者リストに神崎 達也はヒットがなかった」

「…そっか…」

「だが終わりじゃない、サイバー課の奴に頼み込んで顔認証で調べて貰ったらビンゴ、遠山 達也って奴が6年前に退職してた…しかも元警視庁公安部だ」

「公安部?!」

「あぁとりわけ優秀だったらしいぞ、国立大学を無担保返済無しの奨学金で卒業ときたもんだ。その優秀さに目をつけた大隈が拾ったんだろうな」

「しかしまぁ優秀な人なんですねぇ、私の方でも少し調べてみたよ」

茶谷がノンシュガーコーヒーを飲みながら話に入ってきた

「噂だけどね?どうやら警察のある部署が優秀なスパイを裏社会に送り込みその街の裏社会を掌握させる事をさせてたらしい、それが神崎だったんじゃないかな」

「なんでそんな事を警察が?」

カブも話に入ってきた

「うーん…暴対法でシノギが変わったからなぁ…フロント企業とか偽装破門とかも増えたら警察はヤクザを把握しきれない…なら警察のスパイが半グレみたいな暴対法が適用されない裏社会のトップに立ち管理すれば把握しやすいって事だろうな、まぁ神崎が死んだ今、そんな証拠はないんだけどねぇ」

雪は納得してない様子で話を続ける

「でもなんで奈緒美…上野は神崎をあそこまで信頼して神崎も上野を守ったのかな?」

「参考になるかわからんが神崎のデータ」

逆巻が個人端末の画面を見せる

そこには遠山 達也の経歴が映し出されていた

「ふーん…小学生の頃に母親が失踪…父親はその直後に交通事故で死亡…で施設行き…か」

雪は逆巻の出したデータに納得はしてない様子

茶谷が飲み終わったコーヒーをカップをゴミ箱に投げ入れ話に入ってきた

「上野さんのお父さんの事、何か知ってる?」

「あんまりそのへんを話す子じゃなかったからなぁ…でも物心着いた時にはお父さんは居ないって聞いたな」

茶谷がホワイトボードに神崎生年月日や母親の失踪時期、上野の生年月日等を書き出した

「ここみて、上野 奈緒美が生まれる約8ヶ月前の時期に神崎の母親が失踪してる時期が重なってる…もしかした神崎の母親は何かしらの事情があって家を出たのかもしれない…そしてその先で上野 奈緒美が産まれた…」

「?!てことは!父親違いの兄妹?!」

「なんとも言えませんけどね…現場にいた雪さんから見て神崎と上野さんってどんな感じだったの?」

「うーん…でも大切な人間とは言ってた…それも盲目的に」

「上野さんは神崎を庇ったんですよね?それって並大抵な精神力でできませんよ」

その場にいた全員が呆気にとられた

「まさかぁ〜」

シンは呆れ顔

「でも…そう言われれば神崎は「お前を1人にしない」「俺がついてる」「奪う?返してもらうんだよ」とか言ってたな、どういう意味かと思ってたけとど…そう思えば何となく腑に落ちるな」

逆巻は伸びの姿勢しながら

「上野は警察を辞めたあと自殺未遂で度々入院していたらしい…病院の記録を調べたら遠山 達也が身元引受け人になり退院させてる、これはもうほぼ確定じゃんか、縁もゆかりも無い他人をいきなり受け入れねぇだろ。」

喋り終わるとタバコ代わりのガムを口に放り入れた

雪はどことなく切ない顔

「クソみたいな仕事にかまけなければ奈緒美を救うことが出来たとも言ってた…」

茶谷も物憂げな表情で口を開く

「悔しかったでしょうね…もし本当に公安部の潜入捜査官なら人を裏切り蹴落とす仕事…もしかしたら大隈に言われるがまま、不都合な人間を処分した事もあるのかもしれない…そんな人様に誇れる仕事ではない事をしてたら妹さんが…今回の計画はやはり神崎が立てたんでしょう、大隈に内緒で。街の裏社会を動かせる立場で警察にも顔が効き法律もわかっているからこそ法律の不備をついた計画…法律を嘲笑い、正義を貶める…でも本音は誰かに止めてもらいたかったのかもしれないなぁ…じゃなかったから上野さんは雪さんと戦う時警棒は選ばなそうな気がする…そういやNancyは?」

「屋上で電話してるよ」




「なんかさ…正しい事をするって難しいね…」


ーなんだよ、急にー


「私はさ、警察官であることを誇りに思ってる、でもその誇りが崩れたら正しさの定義が崩れそうで怖いよ」


ー珍しく弱気じゃないかー


「そりゃ弱気にもなるよ…私が撃っちゃったんだから」


ー狙ってた訳じゃないだろ?上野が自分の意思で庇ったんだ、俺はNancyが死なせたなんて思ってない。俺の惚れた女はそんな事しねぇよ。それにそもそも正しさなんて捉え方次第でなんとでもなるんじゃない?ー


「私の正義感って薄っぺらいのかな?」


ーうーん…意外な一面って慣用句を考えた奴は人間を立体だと思ってて、薄っぺらいって悪口を考えた人は人間を平面だと思ってたんだよ、どちらにせよ裏と表、大小が人によって捉え方が違うんだ、警察官なんだろ?薄っぺらくても正義感を持つことは大事だぜ?ー


「なんか史、言うことが誰かに似てきたよ」


ー誰のことだよー


「ふふ、内緒。声聞けたら元気出た、ありがとうね」


ーまたいつでも電話しろよ、じゃあなー


電話を切るとちょうど雪が屋上へ


「電話終わった?」

「うん」

「なぁ?今度奈緒美の墓参りに行こうか」

「そうだね」

「なぁ?Nancy、アタシ目標ができた」

「何?急に?」

「いつか大隈に手錠をかける、人の人生めちゃめちゃにしたツケは払わせる、手伝ってくれる?」

「当たり前じゃん、私達はデンジャラスペアなんだから」

そういい2人は肩を組空を見上げた


空から見てるかもしれない友達に誓うように…




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今回は誤算でしたが梶原親子を始末できたのは大きな収穫でした、このままいけばいつかマスコミに嗅ぎつけられますしね………えぇ……えぇ…大木も…はい……神崎は優秀でしたがまさか妹のためにここまでやるとは………今回が彼の最終試験だったんですがね……今後はもっと感情を殺す訓練をさせるのが重要かと……はい………はい……人選は…まぁ心当たりがありますからご心配なく……それでは…副総監失礼致します」

大隈は車の後部座席で電話を切った

「副総監はなんと?」

大隈付き運転手の高槻がミラー越しに尋ねた

「まぁ最終試験とはいえ神崎は良くやったと副総監も認めてくれた、また誰かを育てる事で合意したよ」

「お電話で心当たりがあると仰ってましたが…次はどこから引っ張るんです?」

「それはお前は知らんでいい」

そういい大隈はスーツの裏ポケットから数枚の写真を出しほくそ笑むのだった……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


誰もいない駅


時刻表は真っ白


奈緒美はベンチに座り電車を待っていた


その姿は昔の


警察官だった時の姿


「ごめんな、待たせて」

声をかけたのは髪を下ろしジャケット姿の神崎だ


「ううん、大丈夫」


「バレたかな?俺たち兄妹だって」


「たぶんバレてるよ、ひとつ聞いていい?」


「何がききたい?」


「どうして2人を直ぐに撃たなかったの?」


「ハンデをくれてやっただけ」


「強がっちゃって…本当はあの二人に私を止めさせたかったんでしょ?」


「ばーか、んなわけあるか」


「ごめんね…巻き込んで」


「気にしてねぇよ、それに奈緒美が居なくても梶原は処分リストに入ってた」


神崎の右手に力が入る


「梶原の事をお前に言うべきじゃなかった…俺は…お前にも麻美にも何もできなかった…施設に行くんじゃなくて母さんから逃げずに支えてれば…違った未来だったかもしれない… 」


「どうしてあの時ウチから出てったの?」


「父親が違う俺…母さんは親父が嫌いだった…だから俺も置いて消えたんだ…俺がいる事で母さんを追い込む気がした…3人の生活を崩したくなかった」


「ばーか、気にしすぎだよ」


「でもよ?なんかスッキリした、あの2人は良い奴だな。もう死んじまったけどよ…ああいう奴が警官やってれば俺みたいな奴はいらねぇよ」


「うん、2人とも良い友達、もう会えないけどね」


ホームに1両編成の列車が到着しドアが開く


「さて、乗るか」

神崎が先に立ち上がると


「置いてかないでよ、お兄ちゃん」


「置いてかねぇよ、それにそう呼ぶのはダメだって言ったろ?」


「別にいいじゃん、もう誰も見てないし」


「それもそうか…行こうか、麻美と母さんの所に。行って2人で謝ろう」


「うん」


2人が列車に乗り込むとドアが締まり列車は光の中へ消えていったのだった



ーーーーーーーー完ーーーーーーーーー




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