第4話
上野 奈緒美の殺人動画で世間は大騒動
ネットの匿名掲示板には梶原親子と大木の個人情報が晒され「死んで当然だ」の意見が圧倒的で中には上野 奈緒美を賞賛する書き込みまで多い、SNSでは殺人動画がフェイクがどうかで大賑わい
刑事課強行犯係のメンバー全員殺人動画を見た
「これ…アイツかよ…」
「……」
雪は目を見開き驚きながら動画を見てNancyは口を抑えて絶句し動画を見ていた
「これ…ホンモンすか?」
「いや…流石に…でもフェイクだとしたら金がかかり過ぎだよ」
シンとカブはフェイクだと思っているようだ
「しかし…フェイクだとして生放送の番組を入れるまで…手が込みすぎてるだろう」
茶谷は落ち着いている
「奈緒美はどうせ探してもHERMESの連中が隠してる、先に大木元警視監の事も聞きに行こう、まずは…」
雪が提案するとどこから帰ってきた三原が口を開いた
「無駄だぞ」
そう言うと封筒を机に投げた
「10月3日に大木元警視正は電車に飛び込んで死んだよ、自殺だ」
デンジャラスペアの2人は頭を抱える
「クソ!自殺な訳…」
雪は怒りを隠さず口に出した
「だが確証がない!憶測で言うな!」
三原が雪の声を覆うように大声を張ると細野部長がやってきた
「県警本部から連絡がきた、この件、所轄は動くなだそうだ、逆らうとこの前み…」
「この前みたく全員辞表を出すことになるぞ?」
細野の言葉を代弁したのは内務査察部、大隈 大治郎警視正だ
「部長さんの言うことは聞いといた方がいい」
「お偉いさんがなんの用だよ!」
雪が大隈に詰め寄るが大隈全く相手にしない
「相変わずよく吠えるな…まぁいい、ここでハッキリさせておくか…お前ら所轄が上野を疑うなら勝手にしろ、ただHERMES及びReZARDには手を出すなよ。」
「内務査察部の警視正が何故外部の捜査に口を出すのかしら?」
Nancyが遠巻きから口を挟んだ
「HERMESには所得税法違反の疑いで内偵を進めてる、所轄に荒らされたら困るんだよ」
「そういうのは2課の仕事じゃなくて?」
「それと機密が漏れてる疑いがあるんだよ、ここの連中が怪しいと睨んでるからな、俺は」
「私らが裏切り者って言いてぇのか!アンタ!」
「そう言ってる、伝わらなかったかな?疑われたくなきゃHERMESとReZARDには手を出すな、いいな!細野部長、上の階の空いてる部屋を使わせて貰ういいね?」
細野は嫌々な顔をしながら頷くと大隈は運転手の高槻と数名の部下を連れて移動する時、三原と目が合った
「ん?君はたしか…」
「お久しぶりです、大隈さん」
「ここにいたか…前はバタバタで気が付かなかったが…そうか…ここにいたか、惨めだな、出世コースから外れた男というのは」
「俺は元々県警本部のエアコン設定温度が苦手でしたから、ここは好き勝手に温度を変えられるので居心地はいいですよ」
三原は大隈を睨むといつもの飄々とした態度に戻った
「ったく…ここの連中は…行くぞ」
「はい!
部下が一斉に返事をすると大隈一行は去っていった
「課長は県警にいたんでか?!」
カブが尋ねると三原はいつものようにのらりくらり
「まぁね、ま!雑用係さ」
「へーー!元キャリアじゃないっすか!」
「そうだぞーシン、だからもっと敬え…バカな話はここまで…さてさて、デンジャラスペアはこの殺人動画は本物と思ってるんだろ?」
雪とNancyは同時に頷いた
「ならさ、ミナミポートの防犯カメラかこの動画…どちらかが捏造となるよな、ま、検察、裁判所、県警本部は殺人動画を捏造と言うだろうな」
三原が言い終わると雪が食い下がる
「なんで!こんな生々しいのを!」
雪の言葉を遮るように細野が激を飛ばした
「バカもん!よく考えろ!警察が上野を送検して検察が起訴妥当と判断し判事が判決を下した、これは上野のアリバイを裁判所が…司法が認めたってことだ!司法がそれを覆すわけないだろう!それに上野を逮捕したとしても窃盗罪は確定してるのだから一事不再理でもう窃盗罪では控訴する以外何もできない…逆を言えばモールの防犯カメラのアリバイが作られた物と立証、もしくは限りなく黒に近いと証明できたらなんとか…なるかもな、ただし!上野を追いかけるならお前ら覚悟はしとけよ!内務調査がいる、しかもあの大隈だ、何も得られなかったらすみませんじゃすまんからな!無駄だと思うが分別もって行動しろよ!」
意外な激に2人は呆気に取られた
「なんだその顔は」
「いや…まぁ…ねぇ」
「斜め上のお言葉が…」
「俺だって3年前の事件は知ってる、お前らが前に進む為にやりたいんだろ?ならやれ、ただ下手を打つなよ!」
それだけ言うと細野は自室に帰って行った
「さて、じゃあ…まぁ防犯カメラをチェックしますかぁ〜」
茶谷が両手を叩きPCを操作して画面を出した
「ほら!手が空いてるのみんなで見るんですよ、なんでもいい、気がついた事をメモして後で共有しよう」
「「「ハイ!」」」
強行犯係にいた全員が各々のPCを使い防犯カメラをチェック
1時間もすると三原が
「すまん!俺今日歯医者なんだ!ちょっと抜ける」
謝罪のポーズをして強行犯係を後にした
その直後
「うーん…気のせいかなぁ…これ」
カブが何かに気がついた様子
「いやね?このマスクにサングラス姿の上野 奈緒美の周りにいる連中…全員ではないけどなんか入れ替わりで上野を監視してるように見えません?」
雪がカブのPCを覗くと
「あ…確かに、1人2人は入れ替わるように奈緒美を見張ってるような感じがする」
「うーん…」
Nancyが背もたれに寄りかかり伸びをしながら口を挟む
「雪ー?なんかさーこの周りの連中…どこかで見た気がすんだよなぁ…」
「どこかで見たって…どこで?」
シンが質問するがNancyは素っ気ない
「それを思い出せれば世話ないよ、童貞」
「童貞関係ないっしょ!もぅ!あれ?逆巻先輩は?」
「逆巻は4課の応援要員だと」
「ふぅむ…まぁあの万引きが偽装というならどこかで入れ替わるしかないと思ったけどカメラだらけ…でも一つだけ入れ替われる場所があるのは分かったよ」
茶谷はしたり顔で何かに気が付いた様子
「え?どこっすか!係長」
「こういう各階精算設備はさ?監視カメラが多いけど唯一防犯センサーだけでカメラがない所…」
「あ…化粧室!」
Nancyがその問いに答えると茶谷は指を慣らしながら
「正解、そこは秘密の花園だからねぇ…流石にカメラは設置できない…そこで…」
茶谷は上野がトイレに行く時間までカメラを早回しして画面を流すと上野と思われる人間が化粧室に入った後、ニット帽にサングラスをかけた女と思わしき人間がトイレに入っていった、しばらくするとマスクを外しサングラスだけ着けた上野 奈緒美がトイレから出てきて1階に向かい出口に行くと警備員に何か話しをしている男がいた
「あ!あーーーーー!」
「びっくりしたぁ!何?!雪!」
「この奈緒美が万引きしたって警備員に言った奴!どこかで見たと思ったら梶原の弁護士だ!」
「え?マジで?!」
カブとシンも驚いた様子
「それだけじゃないよ!雪!ここ男達は梶原のアリバイを証言した奴らだ!」
「え?じゃあ上野の窃盗事件の現場に梶原事件の関係者が集まったって事?!そんな偶然ある?!」
茶谷も驚いたのか目を丸くした
「偶然なもんか…偶然ならそれこそ天文学的確率だししかも大木が死んでる。間違いない、奈緒美はこの状況を意図的に作ったんだ、そしてわざと捕まった…自分のアリバイ作りの為に」
雪が悔しそうに言葉を吐くとNancyがそれに続いた
「だからわざわざ生放送のテレビをつかったのね…よくよくみたらこのテレビの司会者、3年前奈緒美を非難してた奴。コイツもネットで叩かれてるよ、あ、さっき殺人動画の後ろに聞こえてた救急車のサイレンの音が気になって救急車の出動要請調べたら確かにあの時間出動してたって、だから生放送のテレビが録画って可能性も消えた、完璧過ぎて逆にこの動画が本物だって事になったちゃったね…」
「Nancyさん、1つ聞いていい?」
茶谷はコーヒー飲みながら尋ねた
「その救急車はなんで出動したんですか?」
「ひき逃げみたい、残念だけど轢かれた人は即死だったって…犯人はまだ捕まってないみたい藤沢署が捜査してるよ」
「被害者の名前分かる?」
「ちょっと待ってくださいね…添付メールに…佐藤 祐介 23歳 」
「ちょっとそれも気になりますね…しかしどうやって調べれば…」
雪が頭を抱え自分のデスクに戻ると付箋が貼られていた
「行き詰まったらここにいる「古澤」って奴に聞いてみろ、俺の紹介と言っていい、とことんやれ」
三原の文字だった
「課長がこんなもん貼ってった…ここって何かわかる人いる?」
茶谷が付箋を読む
「あーここ昼飲みができる飲み屋ですね」
「Nancy行くよ!」
「うん!」
2人は走って署を出て車に乗りこみ目的地へ向かった
ここはReZARDもあまり立ち寄らない川沿いの立ち飲み横丁
目的の店は昼過ぎでも営業していた
ドアを開けると鈴がなり店内にいた客の視線が集まる
「ここに古澤って人がいるって聞いたけど」
雪が聞こえるように声を張ると奥のソファ席から
「それ、私の事ですね」
2人が声のする方に行くとソファに座っていたのは安スーツにつばの狭いハットを被った中年男だった
「ハマのデンジャラスペアが私になんの用かな?」
「アンタに聞きたい事がある」
雪がそう言うと店の客やバーテンが敵意をむき出しにした
それを感じた雪は刀に手をかけNancyはホルスターから銃を抜く
「これだけ聞かせてくださいな、どなたの紹介かな?」
「ウチの課長…三原 圭に聞いてここに来た」
「三原さんの紹介ねぇ…まぁいいでしょ」
ハットを被った男は卓にあった手帳を取り右手を大きく上げるとバーテン以外が店から出ていった。
「アンタ何モン?」
「のぞきや噂話を集めるのが大好きでね、それを仕入れ商売をしています、おたくの課長さんの専属の情報屋みたいなもんです、で何が聞きたいのかな?」
「10月3日に藤沢でひき逃げにあった佐藤祐介の正体」
「10月3日のひき逃げね…」
古澤が手帳をめくり2人に見せようとしたがNancyが手を出して止めた
「おや?どうされました?」
「やっぱりダメ、雪、帰ろう」
「え?」
「この人に借りを作ったら今度はこっちが何か求められる…私は…私の正義を貫く為に悪いヤツなんかに借りなんて作りたくない、ご気分を害してすみませんね」
Nancyが深々と頭を下げ雪の手を引くと
パチパチパチパチ
「合格です」
2人は驚いた顔をした
「この世界は貸し借り、ギブアンドテイク、警察だから「タダで寄越せ」「捜査の為だ」なんて言ったら三原さんの紹介とはいえども嘘を教えてここに来たことをリークしようと思ってました、まぁ三原さんから聞いてた通りの方々でホッとしました」
「課長が?」
「えぇ、ウチのジャジャ馬は手がかかる、いつも正しい事しかしない、でも線を超えない、絶対に。ああいう奴らがヒーローって呼ばれるのかもなと、貴女方…例の殺人動画と万引き事件を追いかけてるのでしょう?」
「…えぇ…まぁ」
Nancyが答えると古澤は続けた
「これから言うことは貸し借り無し、但し条件があります、それを守ってくれるなら貴女方が知りたい事をお教えします」
「条…件?」
雪が怪訝そうに古澤を見る
「条件とは貴女方の「正義」を貫く様を私に見せてください、どんな結果でも…3年前出来なかった正義…今度こそ腐らずに」
「…わかった…私達の正義はどんな奴にでもワッパをかける、誰であっても!」
雪は左手を右の拳で軽く合わせNancyは黙って頷いた
「さて…佐藤祐介はReZARDの末端です、ひき逃げした車はその日にHERMES系列の中古屋に持ち込まれ解体されました、轢いた犯人は…まぁご想像にお任せします」
「?!…あの殺人動画の片棒をHERMESが協力したってこと?!」
「HERMESというより神崎でしょう、富田がこれをする理由がない、ちなみにあの死体が出たビルは富田の所有するビルですよ、私も例の動画を見ましたが生放送番組だけじゃ信憑性が低い、だから救急車の出動でしょう」
「神崎って何者なの?」
「…神崎 達也……富田を担ぎReZARDを使ってハマの裏の実権を掌握、それと同時に大隈が作戦指揮した「反社会組織撲滅作戦」…あっという間に裏の元住人は追い出された。不思議に思いませんか?何故警察は入管と連携して海滨龙人やトルコの連中の不法滞在を次から次へと強制送還できたか?何故誠人会はあんなにガサ入れをされ弱体化したか」
雪もNancyも考え込むが全く検討がつかない様子
「繋がってるんですよ、神崎と警察が」
「はぁ?!そんか馬鹿な!」
「ReZARDだけで誠人会やトルコ人、海滨龙人の連中を倒せるわけないでしょう?でも…でも神崎が裏の世界の証拠を集め警察にリークしたらそれも可能だ…証拠を集め行動パターンを読みピンポイントで同時にガサ入れ…警察は「国家の兵隊」だからね、不法滞在ギャングを潰すなんて屁でもないよ。…それに今でこそ暴対法があるけど昔はヤクザと警察は仲が良かったしね、それの延長線上と言えばそうなのかも。」
「誠人会の村上が神崎に手を出すなってそういう事か…でも神崎が警察と繋がってたとしてもそれが今回の万引き事件に結びつかないよ…なんで万引き現場にあんなに梶原事件の関係者が集まったかが」
雪が考え込みNancyも少し肩を落とす
「確かにね…」
古澤がまた喋りだした
「万引き事件に大木元警視正の自殺…いくら上野 奈緒美が優秀だとしても梶原事件の関係者を人間を一斉に集められない、これは私の見立てですがね…上野 奈緒美に入れ知恵をしそれを計画したのは神崎だと思うんです、彼女のやり残した「正義」を成すために…もしかしたらこの状況を作るためにReZARDやHERMESを組織したのかもしれない、ま、なぜ神崎がそこまで上野に肩入れするか分からない状況なので戯言だと思ってくれていいですよ。で?仮にどうやって上野 奈緒美と神崎を逮捕するんです?何の罪で?これはある種の完全犯罪ですよ?」
「そんなもん関係ないね!奈緒美を殴ってでも自白させる、送検や公判なんて関係ねぇ!奈緒美の気持ちは分かるけど…どんな理由でも人殺しがダメな事、アタシが殴ってでも分からせてやる!行くよ!Nancy!古澤さん、色々ありがとう!」
「上野の神崎の場所をどうやって探すんですか?」
「足で探す!それが私達のやり方だから」
Nancyと雪は頭を下げ飲み屋を後にした。
少し経つとバーテンが古澤に話しかけた
「たしかに…警官としては珍しいタイプですね」
「そうだねぇ…三原さんが気にかけるのもわかる気がするなぁ」
「でもいいんですか?あんなにタダで教えて」
「わかってねぇなぁ、だからお前は二流なんだよ」
古澤は氷が溶けきったウィスキーを飲み干し手帳をカバンにしまった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
伊勢佐木町雑居ビル
「三原さん!助けてくれよ!」
両手に手錠をかけられ上野に拘束された富田が三原に助けを求めていた
「上野、もうやめよう…こんなこと」
「…貴方も私の邪魔するの?」
上野は静かにそう言うと三原に銃を構えた
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