第3話

署に戻った2人を待っていたのは細野部長の説教だった

部長の説教に不貞腐れる2人

課長の三原、係長の茶谷の両名もこうならないように普段から言い聞かせて居るが全く聞かないので2人が諦めているのでその負担の分、2人に矛先が向くが今回に関しては三原、茶谷も叱られた

「普段からお前ら2人が甘いからこうなる!」

「部長、あまり怒ると血圧が…」

三原が言うが

「怒らせてるの誰だ!ったくもういい!全員さっさと仕事に戻れ」

三原と茶谷は謝罪のポーズ、藤原と田原コンビは悪びれもなく部屋を後する

「そういやミナミポートの方にはなんで課長が?」

「逆巻は経費の使いすぎって経理課から呼びつけられて俺が行ったの」

雪に聞かれた三原は欠伸をしながら答えた

「で…?何か変わったこととかありました?」

Nancyが茶谷に問う

「変わったこと?」

茶谷は眉をひそめ?

「私達は今回の万引き…ただの万引きじゃない気がするんだ」

三原と茶谷が顔を見合わせると

「まぁただの万引き犯にHERMESの顧問弁護士…怪しむなってのが無理な話か…ただ万引きに関しちゃそこまで怪しい所はなかったぞ?」

茶谷が淡々と説明を始めた

「ミナミポートの防犯カメラを確認したら10月3日の13時02分に上野は来たんだ、その後映画館に行き13時25分の上映映画を見て15時03分に映画館を出て館内を歩き回ったりカフェでコーヒー飲んだりした1階のドラッグストアで簡易下着と女性用品、リップやハンドクリームを盗んだあとトイレに行きミナミポートを出ようした時に一般人が「あの人お金払ってない」と警備員に伝え、警備員が上野に声をかけたとき警備員から逃げようとしたので騒ぎを聞きつけた他の警備員が押さえつけて拘束…って流れだよ」

茶谷が説明したあと三原がスマホを見せた

「最近はなんでもスマホだな、上野が捕まる時がネットに出回ってるぞ」

雪とNancyがスマホを見ると警備員4人に押さえつけられてる上野、それを撮影する人間が映し出されていた。

「ただ…妙なのが上野を捕まえた時、ドラッグストアで盗むのを見たと証言した一般人が何人かいたんだ、警備員達は事情を聞こうとしたが名前も言わずにそれだけ言って立ち去った。普通はこんなに目撃者はいないと思う…まぁ上野の格好が派手だっ…」

「そこだよ!係長!」

Nancyが何かを思いつき口を挟む

「監視カメラで奈緒美の…上野の動きが把握できた、あれだけ頭が良いのに派手な服装で行き当たりばったりで万引きした…それが引っかかるの」

「あの…雪さんとNancyさんは上野の事知ってる感じなの?」

茶谷の問いに三原が答えた

「まぁ生きてりゃ色々あるってことだよ、俺も手伝ってやるから部長にバレない程度に動けよ、監視カメラ映像はコピーしたから署のクラウドに上げておくから好きに見ろ、さてさて係長、オジサン2人でコーヒーでも飲も」

三原は茶谷の肩を組み無理くりその場から離れた

「話をしてくれるかわからないけど…少し行ってみる」

雪とNancyは刑事課で調書を流し読み留置所の方へ


地下1階の留置所は閑散としていた

奥から手前1つ目に上野 奈緒美は留置され2人が牢越しに話しかけると奈緒美は作り笑いで答えた

「なーに?デンジャラスペアさん」

「どうしてこんなことしたの?」

Nancyが尋ねるが飄々と答える

「さっきの若いオトコにも言ったけど別に意味なんてないよ、欲しかっただけ」

「HERMESにいるらしいじゃん」

雪も口を挟む

「あぁ…うん、あたしみたいな社会不適合者を雇ってくれたからさ」

「調書目ぇ通した、反省してるとかないの?正直奈緒美は初犯だから公務…」

「公務執行妨害で捕まえたのは雪だよ?」

「あの時はアタシも気が動転してた」

「…ふーん…でこれは何?事情聴取?それとも世間話?」

「同期と軽く話をしたいだけだよ、奈緒美」

Nancyも会話に入る

「アタシなんか気にかける程暇の?デンジャラスペアのヒーローさんは」

「なんでそうなんだよ!3年何の連絡もなしで万引きして捕まって実はHERMES…裏で半グレのReZARDを仕切ってる所に入ってるなんて聞いたらさ心配なんだよ!何がしたくてここに戻ってきたんだよ!」

「心配ねぇ…それは何?アタシが元同期だから?」

「そうだよ、ダメなの?」


ドンッ!


奈緒美は右手で床を叩いた


「それってさ?自己満だよ、落ちぶれた私を見て「自分はこの人を助けたかった、自分は悪くない」って思いたいだけ、変わってないねぇ2人とも…正直アタシがこうなるまでアタシのことなんて忘れてたんでしょ?」

「忘れてねぇよ!あの時…正義を実行出来なかった自分に何度も嫌気が差した、まだ未熟だったんだ…だから今はどんな相手だろうが手錠をかける!相手が誰でどんなことをしようと…警察官として正しい事をし続け謝りたかった…奈緒美に」

雪は鉄格子を掴み思いを吐き出す

「だからさ?そういうのいいって…正直アンタら2人を憎んだよ…でももういいんだ、見てみなよ鉄格子が世界を割ってる…住む世界が違うんだよ、雪の言う通り…もう帰ってよ…」

奈緒美の告白にNancyは深呼吸をして問いかける

「…フーならここから警察官として質問するわ、HERMES…いや富田と神崎とはどういう関係なの?」

「は?富田さんは社長、神崎さんは専務…私は一社員」

「HERMESで何してるの?」

「ラウンジ3店の責任者だけど本当は揉め事解決分野だよ、アタシこんな顔じゃん?表に出られないけどハッタリが効くんだ」

「ラウンジ3店の責任者のくせに金に困ってたの?生理用品も買えないくらい」

雪が挑発するように口を挟む

「ん?そうだよ、アタシさー結構浪費癖がひどくてね」

「なんで12時にモールに入って直ぐにやらなかったの?」

「別に、映画見たかったしね〜久しぶりのハマだし…あー薬が効いてきたからさ?もう寝るね」


上野奈緒美は布団を敷き2人に背を向けた

これ以上は無理と2人は判断しその場を後にしようとすると


「ねぇ?さっきなんで戻ってきたって聞いたよね?知りたい?」

奈緒美は鉄格子の前に立ち大きな声で2人に声をかけると2人が鉄格子の前に


「何がしたくて戻ってきたの?」

雪が尋ねると


「私は私にケリをつけにきた…アッハッハッハッハッ!ハァーハッハッハッハ!」


奈緒美は雪とNancyを見据え大きく笑い続けた


2人を嘲笑し挑発的にただひたすら笑っていた



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


上野 奈緒美窃盗事件から約2ヶ月後


ハマから離れた藤沢の空きビルの火災報知器が鳴り響き消防が出動

同時にビルからボヤの通報も入った

消防隊員がビル3階に上がると


「なんだ…火災なんて起きてないじゃないか」

「イタズラかぁ…?古いビルだから報知器は誤報だったかもな、とりあえず見て回ろう」

数名消防隊員がフロアを捜索すると目張りされた部屋がありテープを剥がして中に入ると酷い腐敗臭、ハエが大量に漂い蛆虫も床に見られ、部屋の窓も目張りされ中央には大きなビニールシートがかかっていた

消防隊員は恐る恐るシートを剥がすと手首を拘束され首がちぎれそうな椅子に座る腐乱遺体、横には手を縛られ首がちぎれた腐乱遺体が横たわっていた



12月8日 午前10時



取り調べ中に悪態を付き悪質と判断され拘置所へ送られた上野 奈緒美の第2回公判が横浜地裁第25法廷で窃盗、傷害、公務執行妨害の罪状で裁判員裁判が始まった


所轄の取り調べでは反抗するも検察官調書には素直に応じ謝罪の言葉を述べた、接見弁護側は反省の態度、精神科の通院歴等で情状酌量を求めたが検察は上野 奈緒美は元警察官である事を問題視、無法を取り締まる側だった人間、しかも3年前に問題を起こした元警察官という事で社会正義的に罪は重いと主張、その主張が認められ上野奈緒美に下った判決は


「主文、被告を懲役6ヶ月、執行猶予2年に処す」


窃盗の初犯にしては厳しい判決だった、奈緒美は判決を聞いても表情1つ変えずに判決理由を聞いていた

最後に判事が奈緒美に控訴の意思を尋ねるも奈緒美はハッキリ否定

第2回公判は結審し各々が退廷しようと席を立った瞬間


「1ついい?」


裁判所の係官に腕を掴まれた奈緒美が退廷間際に口を開く


「ここ数日前に藤沢の空きビル3階で身元不明の死体が2つ出たでしょ?」


判事や書記官も奈緒美の声に耳を傾け判事が反応


「それが何か?」


「私知ってるの、県警本部や担当捜査本部に教えてあげて。1人は梶原 智一、もう1人は梶原 誠一郎…梶原 智一は3年前の連続強姦致傷の犯人…でっち上げの証拠、偽の目撃証言で無罪になった男、父親の梶原 誠一郎は元警察官僚で退官後、天下った株式会社ゼネラル警備の役員、退職した警官の天下りを引き受けていた男、当時の捜査本部で指揮をしていた大木警視正に指示を出し捜査を妨害させていた…息子可愛さに正義をねじ曲げた結果、息子の梶原 智一を世に放ち私の妹…上野麻美を強姦して動画まで撮り脅し、妹を自殺に追いこんだ。それだけでは飽き足らず父親の誠一郎は検死報告に薬物反応まででっち上げさせ妹の尊厳まで踏みにじったクズ…まさに万死に値する人間。そんなクズがのうのうして裁かれない。さっき検察官様が私に言った社会正義が聞いて呆れるわ!正義の女神像は目を隠してる、それは法の下万人は平等であり目の前の相手に騙されない為…でもそれがどう?目隠しなんてしてるから何も見えないのよ!法も正義も人間の皮を被った極悪人には役に立たない何も意味が無いの!アッハッハッハッハッ!」


第25法廷は騒然とした


判事は書記官と相談していると担当検事が奈緒美に叫ぶように聞いた


「笑いながら何を言っている!自分の言っている意味分かってるのか?!」

奈緒美は笑いながら答えた

「全て理解しているわ、法で裁けない獣が駆除されたの、大変結構な事よ!アッハッハッハッハッ」


真偽不明の告白だった為、執行猶予の上野奈緒美は裏口からすぐに用意されていた車に乗り込み姿を消した


判決が下った被告の告白


すぐにマスコミが飛びつきワイドショーが取り上げるとネットでとんでもない動画が公開された




画面には顔を隠す被り物をレインコートを着て刃物を持った人間


椅子に座らされ顔に殴られた傷がのある男


天井からロープに首を吊らされ台座に立たされいる男


動画には当時放送中の生放送ワイドショー番組も映っており画面には10月3日、14時16分の日時まで表記、ビルの外からは救急車のサイレンが大きく鳴り響いていた


「妹さんの件はすまなかった!謝る!自首もする!だから!命だけは!捜査に口を出した事も謝…」


首を吊るされた男の台座を被り物をした人間が思い切り蹴飛ばすと吊るされていた男はもがき苦しみしばらくすると動かなくなる


「勘弁してくれ…悪かった!悪かった!殺さないでくれよ!自首するから!命だけ!命だけは!」


椅子に座った男が必死で面の人間に命乞いをするも被り物をしている人間がナイフを構え椅子に座る男の後ろに立ちナイフを首動脈に突き立て一気に突き刺すと血が思い切り吹き出たが面を被った人間はそのままナイフを反対までもっていった


椅子に座った男が絶命すると面を被った人間がカメラの前に立ちゆっくりと被り物を外す


その人間正体はほくそ笑む上野 奈緒美だった…





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