第2話
「で?アンタは何時間もバカみてぇにモール内をウロウロして、ご丁寧に映画まで見て欲しくなったから?!金持ってんのにこんなしょーもないもん盗んで暴れるとかどういう神経してんだよ」
調書をシンが書き取り調べはカブが担当
カブは盗んだ物のリストをマジマジと見てながらコーヒーを飲んでいた
「しょーもないて…てか仕方ないじゃんナプキンとか下着は女にとって大切なんだよぅ?まぁ男はそんな事もわかんないとかさぁ?アンタら童貞?」
調書を書いていたシンはむせて咳き込み
カブはコーヒーを勢いよく噴いた
「汚!」
「ゴホッゴホッ!ちげぇし!」
「へー…そうなんだぁ…もし…未経験ならお姉さんが…」
奈緒美は足を組み舌を少し出して何かを舐める仕草をする
「これ書いた方がいいんすか?カブさん?」
シンはその姿に見とれてしまい少し前かがみになりカブが頭を叩いた
「バカ!書くなこんなもん!」
「アッハッハッハッハッ!可愛いねぇ〜」
奈緒美は大笑い
その様子が冠城の神経を逆撫でする
「アンタふざけんなよ?ここ警察!あんた被疑…」
奈緒美の雰囲気が一瞬で変わる
「そんな事はわかってんだよ…容疑認めてんじゃん、盗みましたって、それで良くない?それにアンタさ?さっきバカみてぇとかこんかしょーもないもん盗んだとかさ…どういう神経とか…被疑者の人格を否定するようなこと言ってるけどそれ服務規程違反と人権侵害だよ?わかっ…」
ドンっ!
「何を知ったような口効いてんだよ!人権侵害だぁ?そっちこそ警察相手に舐めた態度とりやがって!なーにが服務規…」
奈緒美は声色を変えた
「服務規程ってね、破ると警察に居られなくなるよ?誰かさん達みたいにね、アンタら…そうなりたいの?」
冷たい風のような声にシンとカブは寒気がした
ギィィ…
ドアが開き制服を着た警官が入ってきてカブに耳打ちをする
「上野、HERMESの顧問弁護士を神崎が連れて署に来た。今日はもういい、接見室に連れてく…来い」
カブは奈緒美を連れて取り調べ室を後にした
署の入口では雪とNancyが神崎に食いかかっていた
「なんでてめぇの所の顧問弁護士が奈緒美の弁護をすんだよ!」
「うちの社員が窃盗で捕まったんです、顧問弁護士に依頼するのが普通でしょう?あと社長からの差し入れもありますしね」
神崎がしたり顔で反論
「奈緒美がHERMESの社員?!馬鹿なこと言うなよ!お前らみてぇなクズの巣窟に奈緒美が入るんわけ…」
雪も負けじと食い下がるが神崎は挑発に乗らない
「これは酷い言われようですね、まぁいいでしょう、別に貴女方に理解されなくてもね。これ差し入れです。彼女は向精神薬を服用しておりますのでこっちも必ず渡してください、処方箋もありますのでお疑いであればどうぞ検査してください、では先生、彼女の事よろしくお願いいたします」
神崎が顧問弁護士に一礼し車へ戻ろうとするも雪が神崎を掴んだ
「さっきの件といいまだ話は済んでねぇよ、富田もアンタもどういうつもりだ!」
「質問の意味を理解しかねます、うちの社員を社長の富田が守る事に何を疑問に思うのですか?それに…貴女方はうちの上野と3年も会ってないでしょう?久しぶりに会って何か思うことでもあるのですか?随分とまぁ都合がいいことですね」
雪は拳に力を込めた
忘れていた訳でない
神崎の言う通り奈緒美の事は頭の片隅に追いやっていたのは事実だ
雪の不安を消すようにNancyも食いかかる
「随分と含みのある言い方ですね、私達の事も調べたのかしら、でもね?もうあの頃の私達は違…」
神崎の雰囲気が一瞬変わる
風が吹いたように視線がささった
「そうですか…でもね?3年という時間は人が腐るには充分過ぎる時間、時が経ち己が変わろうが貴女達2人が彼女を見捨てた事は変わらないんです…だから…偉そうな事を言うなよ…っと失礼、社長に報告もあるのでこれで失礼致します、あ、不当な扱いを上野が受けたと聞いたら何度でも貴女達を県警本部に抗議させていただきますから、では失礼」
2人は感じた
憎悪にも似た殺意の塊が神崎から浴びせられ一瞬たじろぐがすぐに神崎はいつもの作り笑顔に戻り服を直し車に乗り込んで敷地内から出ていった。
「Nancy…感じた?」
「うん…」
「正直ビビった、なんなんだアイツ…とんでもない殺気だった…」
「私もだよ、あんな気迫…不気味過ぎて」
2人は大きく息を吐くが力を抜くと言うより得体の知れない「何か」に一瞬狙われ見逃された安堵だった
「嫌な感じがする…上手く言えないけど…」
「気が合うね、私も。…奈緒美がHERMESにいた事が信じられないし…それに富田の命令とはいえ神崎がいちいち出張る必要あるとは思えない」
「少し調べてみようか、富田と神崎の事」
「そうだね」
2人はお互いの顔を見つめ拳を合わせたあといつも使う警察車両に乗り込み敷地を後にした、その頃刑事課強行犯で細野の
「あの2人はどこいった!」
の怒号が鳴り響いてた
繁華街雑居ビル前に車を停め2人は中へ入りエレベーターへ
行先は4階「誠人興産」
雪が勢いよくドアを開けると中にいた数名の人相の悪い男が怒鳴り声を上げ警戒したが責任者らしき男がそれを止める
「うるせぇ!ギャーギャー騒ぐな!」
そう言ったのは誠人会 若頭 「村上 優」
「刑事さん、ドアぐらい静かに開けてくださいよ、で?今日はなんすか?」
雪とNancyは室内を見回し雪が煽る
「なんだよ、前は街を歩けばみんなが恐れる顔役でケツ持ちからも評判も良かった誠人会が今じゃ見る影もねぇなぁ」
村上が頭を掻きながら不機嫌そうだ
「…で?要件なんすか?」
「組長さんいる?」
Nancyが村上の前に出ながら尋ねる
「…オヤジは身体を壊してな、引退して入院してるよ」
「ん?じゃあ今はアンタが?」
「一応代行だよ、俺が」
「なら村上さんに聞くよ、昔、誠人会にいた富田 勝…どういう組員だったの?」
雪が尋ねると村上はタバコを出して咥えると若い組員が火をつけた
「アイツは組員でもねぇよ、そんときは、まだ盃も交わしてなかったした。フー…富田は腕っぶしも強くて度胸もあった、部屋住連中には厳しかったがその分食えない若い奴らに飯連れてったりしてたな、ただシノギは持ってたがそこまで金稼ぎが上手いタイプじゃなかったよ」
Nancyが額に入れ飾られている書を見ながら村上に質問
「でもその富田が誠人会を抜けた後、誠人会は急に失速した…幹部でもない組員なのに何故?腕っ節だけで半グレ連中を味方にして戦争ふっかけたの?」
村上はタバコを荒々しく消していた、何故か苛立ち不機嫌な様子
「さぁな、なんで富田があんなにゴロツキ共をまとめ上げてウチらや他の移民ギャングに喧嘩ふっかけたかなんて知らねぇよ、それにアンタら警察が暴対法を盾に俺たちを締め上げたからじゃねぇか!なのに他人事みてぇに俺たちをバカにしやがって!」
「じゃあ質問を変える、富田にくっついてる神崎…アイツは…」
神崎の名前を聞くと村上の顔が曇った
「…神崎ってHERMESのあの神崎達也か?」
「そう、何か知ってる?」
「なんでもいいの、教えてくれない?」
村上は深呼吸をした後、口を開く
「…富田がウチを抜けた後くらいかな、どこからやってきたかは俺も知らんがその頃噂でハマに東京の神座町からこっちきた神崎っていう半グレがいると…ここハマの裏の世界じゃ聞かない名前だった。その後、富田がReZARDのトップになりウチと海滨龙人(ハイタァンロンレェン)…大陸系移民ギャングとトルコ系の連中のシマをReZARDが荒らしまくった、当然俺達も反撃しようとしたさ、だがな?そこでできたのが神崎だ、奴はまずウチのオヤジと海滨龙人の総帥、トルコのリーダーとの会合の席に1人で来てこう言った
「ハマの利権は今後、ReZARDの富田が仕切る、アンタらの時代はここで終わり、でもタダで引けとは言わない、今までアンタらが吸い上げた金の30%はくれてやるから仲良く分けろ、そしたら悪いようにしないし仕事もやる…これは提案でない、命令だとも言ってたな。もちろん全員断ったさ、ReZARDなんて半端モンの半グレ、負けるわけが無い…そしたら神崎はこう言った「ReZARDと俺を甘く見ると後悔するぞ?」と…海滨龙人とトルコの連中、加減を知らねぇ奴らは大笑いし神崎を殺そうとしたが逆にあっという間にやられちまったよ、アレは強いなんてもんじゃなかったな…そのあと準備をしてReZARDを潰そうと計画したと途端に「反社会組織撲滅作戦」で海滨龙人とトルコの連中がどんどん強制送還されていった…うちの連中もどんどん捕まったり逃げたり…神崎と富田がどういう関係かは知らんがとにかくあの二人がReZARDを組織して街の勢力図が一気に変わっちまったんだ…刑事さん、俺はアンタらは大嫌いだが同じハマの人間として忠告する、神崎 達也に手を出すな、絶対に!」
Nancyと雪は顔を見合わせた
「何故アタシ達にそんな忠告を?」
「神崎は得体が知れない…不気味なんだよ、ただ喧嘩が強いとか頭が良いだけじゃない…こう…なんていうか…底が見えねぇんだ」
「底…?」
「そうだ、富田は欲が丸見えだ、大方アイツはHERMESの王様になって荒稼ぎして飽きたら堅気になって悠々自適…なんて考えてるだろうが神崎は何がしたいのかわからん、いつも自分を隠す不気味な奴だ。」
雪は話が面白くなかったのかやや不機嫌
「忠告どうも、でもアタシは悪党は絶対捕まえる、あいつは悪いヤツだ、絶対に尻尾掴まれるさ、なぁ?Nancy?」
「えぇ、神崎が何をしてようが絶対に捕まえるわ」
「…勝手にしろ、もう話はねぇ帰ってくれ、おい、下まで刑事さん達をお送りしろ」
合令をかけると組員達が2人を外へ促しエレベーターへ
2人は車に戻りエンジンをかけ車を発進させる
「大した事は分からなかったね…」
「まぁ仕方ないか…でもわかったこともある」
「何?雪?」
「村上の話を聞く限り、富田に人をまとめるような器量は無い、少なくとも組では末席だった、でも今じゃ表向きはHERMESの社長…間違いなく神崎が富田をコントロールしてる」
「目ざといね、雪は」
「何度か富田に違和感を感じたのはそこだったんだなと今なら分かるよ、富田に神崎は勿体ないくらいのレベルの人材だ」
「…まだ、わからないけどあの時の殺気が不気味過ぎる、もう少し探ってみようか、あ、そろそろ逆巻と茶谷のオッサンが帰ってくるから奈緒美の万引きした件、情報聞いてみよ」
「うん」
そう言うと2人は車を署に向けて発進させた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます