第1話

「大人しくしろ!このクソ野郎!」

「離せよ!警察だからってこんなもん有り得ねぇだうが!」


長い髪を束ねMA1を羽織、腰から刀を下げ手錠がかけれられた派手な服装の男を連れているのは藤原 雪 刑事


「意外とまだ暴れられるんだねぇ」

軽口を叩きあくびをしているが愛銃のM&P9に手をかけ何時でも抜けるぞと威嚇をする田原・Nancy・香織 刑事


あの事件から3年が経ち2人は刑事に復職していた

偶然居合わせた県庁舎立てこもり事件で人質を救出した事で知事の一声で異例の復職

どんな悪人でも逮捕するデンジャラスペアと新聞の見出しを飾って以来以来そう呼ばれるように



「おー怖!最近の警察はなんでもありかよ」

装飾品だらけのオフィスの机に座りブランド品のスェットに身を包みタバコをくぐらせる男の名前は「HERMES」代表 富田 勝

富田の近くに立っている男は綺麗に髪を整えパリッとしたオーダースーツにフレームレスのメガネをかけおおよそ富田とは相容れない容姿をした男、「HERMES」専務 神崎 達也が止めに入る

「刑事さん?アポもなし社長室に来るとは…少なくとも礼状ぐらいはあるんでしょうね?特高警察じゃあるまいし…こんな乱暴は看過しがたいですよ」

「ん?うちら警察はなぁ?何をしてもいいんだ…よっと!」

雪が押さえつけていた男を富田の目の前にたたき出した

「フー…で?このチンピラがウチとどういう関係が?」

Nancyが富田の前へ

「この人ね、最近都市開発計画予定地区の小料理屋に車で突っ込んだの、事故だって言うけどさ?小料理屋の店主が言うには嫌がらせをしていた男にそっくりなんだって、そういえば津原さんの会社があの辺買い漁ってるよね?調べりゃわかるのよ」

富田と神崎が目を合わせると2人は大笑いをした

「これはこれは…」

「ダッハッハッハ!こんなチンピラがウチとどう関係あんのよ?うちはね?真っ当な会社っすよ?刑事さんたち」

「フン!なにがまともな会社だ、テメェらが裏で「ReZARD」の連中を束ねてるのはとっくに裏取ってんだよ」

雪も腰の刀に手をかけて声を張る

「ならウチがReZARD?ってのと関係あるって証拠とフダ持ってこいよ、いつもいつもウチを目の敵にしやがって…ウチら民間企業はオタクら公僕と違って忙しいんだ、さっさと帰れよ、じゃねぇと顧問弁護士立てててめぇらまた刑事から引きずり下ろしてやるぞ?今じゃデンジャラスペアだなんて持て囃されてるけどよぅ?なんだっけ?3年前てめぇら訴えら…」


ガチャン!

津原が喋り終わる前に雪は抜刀し飾られていたツボを切った


「この部屋にこんな綺麗なもん要らねーと思ってさ、この方が見栄えがいいわ、…舐めた口きくなよ?あの頃のアタシらとは違うんだ、悪いヤツにはどんな手ぇ使ってもワッパをかける、覚悟しとけよ」

雪が啖呵を切り終えるとNancyも声色を変えて続く

「薬や売春がシノギの連中が弁護士とは笑わせるわ、誠人会の元下っ端組員の富田さん」

「そんなツボ如きどうでもいいわ、それにHERMESがそんなもん扱ってる証拠あんのか?ねぇよな?!ウチは真っ当な会社なんだよ、それに誠人会はほっときゃ潰れるクソヤクザだ、暴対法にビビりちらして何も出来ねぇ連中と沈むのはゴメンだっただけ、共存だなんだとヤクザのくせに海外の連中とも手打ちなんかしやがってよ、揉めねーヤクザなんぞヤクザじゃねぇよ、それに俺がHERMESを立ち上げてから不動産やボロマンション買い漁る害虫ゴロツキ共も居なくなったろうが!感謝してもらいてぇよ、アッハッハッハッハッ…そういや最近訳わかんねぇ事故多いよな?最近は駅近くの大交差点で道路に飛び込んだバカがいたよなぁ…アンタらも働き過ぎると頭おかしくなって道路に飛び込んじまう前に気楽に仕事やった方がいいぜ!親方日の丸は倒産しねぇしな!」

神崎がスマホで誰かを呼ぶと警備員らしき人間が数名入ってきた

「今日の事は大目に見ますよ、ただ…今後はきちんと礼状をお持ちください、それでは…おい!外までお送りしろ」

神崎の号令に警備員達がデンジャラスペアの2人を囲む

流石にこれ以上は分が悪いと感じた雪とNancyはそれに従い外へ

「チックソ!あの野郎、舐めやがって!」

「雪、流石にやりすぎだって…帰ったら部長に怒られるよぅ」

「でもあのReZARDの下っ端つれてHERMESに行けって言ったの課長だぜ?自分は呑気に新聞読んでるフリなのによ、まぁしゃーねーか」

オフィスビルを出た2人は車に乗り込みエンジンをかけると無線が入る


ーミナミポート駅ショッピングモールで窃盗事件発生、警備員に暴行しているとの通報、近くにいる捜査員は至急向かわれたしー


「だってさ、こっから近いし行くかぁ」

「えーめんどくさいなぁ…まぁ仕方ないかぁ」

Nancyが無線を取り返信


「えーこちら東7号の藤原と田原、現場にいきまーす」

雪がアクセル全開で車を走らせ隠していた赤色灯をつけサイレンを鳴らし現場に急行した


ミナミポートショッピングモール地下駐車場にパトカーを乗り付けると待っていた警備員に連れられ関係者専用通用口へ

関係者詰め所に入ると金髪の女が背中を向けて足を組み座っていた、責任者らしき人間が雪とNancyを見てホッとした様子で駆け寄った

「刑事さーん!早くこいつ連れてってよ!暴れて大変だっんだから!」

「はーい、ったく…タバコなんて吸ってんじゃねぇよ」

雪は頭を書きながら座っている女に近づき顔を見ると言葉を失った


「あ…あ…アンタ…どうして」

「…あれ?有名人だ」

目を丸くして驚く雪を不審に思いNancyも駆け寄ると目を丸くした

「へぇ…記事で読んだよ、本当だったんだね、刑事に復帰したなんでもありの危険コンビ、デンジャラスペア」

「奈緒美!なんで…こんな…」


そこに座っていたのは顔の頬に切り傷、髪を金髪染め派手な服装に身を包んだ上野 奈緒美だった

責任者らしき人間が奈緒美が盗んだと思われる物を指を指しながらまくし立てる

「ほら!こんなに万引きして!しかも反省もしない!暴れるし!早く連行してくださいよ!」


「これ本当にアンタがやったの?!」

雪は奈緒美の胸元を掴み問い詰める

「そうだよ、悪い?欲しかったんだもん、ほら?アタシ公務員辞めてさ?借金だらけで買う金が無かったんだ、調書取るんでしょ?認めるよ、アタシがやった、やりました。盗みましたー!」

そういい雪の手を掴むと無理矢理絞め技を決め雪を拘束した

「いきなり首根っこなんて掴むから、また訴えられちゃうぞって…あ!これで公務執行妨害もついちゃう!やだー!拘留期間20日になっちゃう!あ、でも3食昼寝付きか…やった、これで屋根がある所で寝られるわ」

「奈緒美!雪を離しなさい!」

Nancyが強めの言葉で警告する

「離せって言って離すバカいる?あ…でも泣いていた「元」仲間の手を掴む事もなく突き放したよね?私の手は掴まなかったクセに…はー嫌だ嫌だ」

そういい奈緒美は雪の拘束を解くと雪は瞬時に奈緒美を固め技で拘束

「Nancy!時計とワッパ!」

Nancyは手錠を奈緒美にかけて腕時計の時間を読み上げる

「10月3日、16時48分、上野 奈緒美、窃盗の疑い及び公務執行妨害の現行犯で逮捕する!」

奈緒美の両手に手錠がかかると奈緒美は無言になった

「調書を取るのでお時間取らせて申し訳ないのですがウチの刑事がすぐに交代でここに来ます、防犯カメラ等の確認もしますのでよろしくお願いいたします」

「署に連行する、こい」

「はぁーい」

奈緒美の身体を雪とNancy両側で固めパトカーまで連行し後部座席に押し込み無線で応援要請後2人は東部署へ向かうのだった。

車内は重苦しい空気

奈緒美は気にもせず鼻歌を歌っていたがそれを止めた

「ねぇ?お喋りしない?」

Nancyと雪は何も答えない

「シカトか…まぁいいや、記事で読んだんだけど…凄いじゃん、庁舎立て篭り事件で犯人取り押さえたんでしょ?そのおかげで刑事に復帰…良かったね、おめでとう」

ハンドルを握る雪の手に力が籠る

「皮肉かよ…それ?」

「別に、本心だよ」

「どうして…警察辞めたんだ!辞めなきゃ…」

「諦めなきゃどうにかなる…か…諦めなかったら麻美は生き返るの?お母さんも…諦めるなって簡単に言う奴はさ?甘いんだよ、何もかも…でもどうにもならない…だからアタシは逃げたんだ」

Nancyも口を開く

「逃げたなんて誰も思ってないよ、あの時は…私達も…」

「落ちぶれたアタシに2人は同情してくれんの?嬉しいなぁ…涙が出るよ」

「どうしてそんな言い方するの?」

Nancyも堪らず口調が強まる

「どうして…アハハ、公務員様にはわかんないよ」

「なぁ?奈緒美?ずっと何してたんだ?警察辞めた後も…なんで連ら…」

「なんで?バカ言わないでよ、連絡?バカバカしい、私の手を掴んでくれなかった人に何を話さなきゃいけないの?でもね?今は2人に感謝してるんだ」

「感謝?」

Nancyが眉間に皺を寄せミラー越しに奈緒美を見た

「みんな自分が可愛い、正義なんて自己保身の為なら平気で捨てられる薄っぺらいモノだって分からせてくれたから…かな。そんな2人に窃盗で逮捕…神様ってのは随分残酷なんだなぁ〜ま、わかってたけどね」

そして一呼吸

「…この世に神なんて居ない…いるのは人の皮を被ったイキモノだけ…なぁんてね」

そう発した奈緒美の言葉には感情がこもっておらず何か喋る機械にも見えた2人は何も言えなかった

重い空気のまま車は東部署敷地内へ入っていく

車から降り刑事課強行犯係へ

出迎えたのは後輩の「冠城 寛人」通称 カブ、「香山 新一」 通称 シンだった

「あれ?先輩達はHERMESに行ったんじゃ…」

「うるせぇ、さっき無線で流れてた窃盗犯と傷害の疑いと公務執行妨害の被疑者」

カブは2人が連れてきた被疑者をマジマジと見ると女は軽くウィンク


バチン!


「痛!なにすんすか!」

「見てんじゃねぇよ」

雪がカブの頭を軽く叩くとカブが少しムッとしたが割って入ったのは部長の細野だった

「お前ら!HERMESの弁護士から苦情が来てるぞ!勝手な真似…」

「すみません…反省してます」

頭を下げたのはNancyだった

素直過ぎて周りが騒然とする

「…と、とにかく始末書明日まで書いてこい!いいな!」

雪とNancyは黙って頷き無線室へ

外回りをしている同僚の逆巻と茶谷にミナミポートショッピングモールの窃盗事件を説明し調書と事実確認の依頼をすると2人揃って部長に頭を下げ

「今回の被疑者の取り調べやらせてください」

2人同時に大人しく頭を下げるなんて有り得ないので細野や周りも面食らうが細野は連れてきた被疑者を見て大きなため息をついた

「ダメだ」

「どうして?」

Nancyが食い下がる

「俺が何も知らないと思うなよ?お前達2人が刑事課強行犯係に配属される時に調べた、だからお前らは俺の目の前で始末書を書け、これは命令だ!カブ!シン!被疑者の取り調べをさっさとやれ!いいな!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


初老の男がターミナル駅を早歩きで人混みをかき分けていた


まるで見えない「何か」から逃げるように…


持っているスマホが鳴る


「もしもし…?!言われた通りにやった!あの親子を車に乗せ例の所まで運んだ!もういいだろう!………もう解放してくれ!………?!………あの時は仕方なかった!………?!そんな……話が!……クソ!」




男は走ってホームへ向い到着列車案内の掲示板を確認し足元の整列線無いへ

ホームに特急列車が入ってきた



その瞬間



初老の男は背中に軽い衝撃を感じると視界が斜めにゆっくりと流れた


と同時に事態の確認をすると目の前には大きく警笛を鳴らす特急列車



ドンッ!



ホームに悲鳴が鳴り響いた






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