プロローグ後編
1人キッチンに立ち師匠の真似をするように料理を作っていた、感情なんてなくただ淡々と。
キッチンスペースから師匠のベッドが見えその上には相変わらず、師匠だったものが横たわっているのが見える。
どれだけ寂しくて不安な状態でも、起きるとやっぱりお腹は空いててそんな体が無性に嫌になる
食後は外へ出た。あれを見たくなかったというのもあるが、外にいる方がなんだか今は落ち着いてしまうからだ。
正直ここら辺は記憶に入らなかった。
気が付くと屋敷に戻っており、ただただ師匠がいつも座っていた席を見つめていた。
「どうして、みんな消えるんだよ」
絞り出した声が室内にゆっくりしみ込んだ。これが今日の最初で最後の言葉だった。
そんな意味のない生活から3日経ち、キッチンに備えてあった食材が底をつく。
地下に食物庫があったのは知っていたが入ることは殆どなかったので、どうなってるかはあまり知らない。
リビングをでてまっすぐ進み2階に続く階段をを通り過ぎ突き当りを右に行った一番奥の扉が地下に続く、近いようで遠い異様な雰囲気。
地下続く扉を開け光を灯す、空間としてはどの部屋よりも広いはずだが食料はその3分の1以下にまで減っていることに初めて気づく。
「来た頃はぎっしりあったはずなのに、こんな減ってたんだな」
そういい捨てて、雑に食料を見繕った後食物庫を後にした。
4日目になるとさすがこのままでいいのかと心がざわつき始める。
焦りと恐怖と孤独が付きまとうのだ。
師匠が死んだことも、少しは受け止めつつある。
ふと、宝石のついた首飾りを預かっていたことを思い出す。
「そういえば、こんなのもあったな」
師匠が死ぬ前と後で記憶が少し乱れているせいか、あまりうまく思い出せない。
ポケットに仕舞い直すと、窓に映る惑星シタルムを見遣った。
すっかり色を失った、文字通り滅んだような見た目をしていた。
「みんなもういないんだよな、どこ..どこに行けば俺は幸せになれるのかな」
なぜだか、涙が溢れて止まらなくなった。胸も痛い。
久々に夢を見た、師匠との夢
「なぁ、師匠これ食べれるのかな」
「あー、それはだめだな状態が悪い」
「どうやって見分けてるの、容器に入ってるから見えないじゃん」
「そんなの簡単だ臭いだよ、臭い..うーんそうだな..ほれ、これ嗅いで見ろ」
「なにこれくさい..」
「だろ、生きる知恵で最も原始的なのは臭いをかぐことだ、よーく覚えとけ」
「これどうすんのさ、くさくて置いておきたくないんだけど」
「それはだな、燃やすに限る地上ならなおさらだな」
「いつかは師匠も燃やされるの?」
「なんだ急に縁起でもねぇ、生き物の場合は燃やさねぇよ、弔いってなら魔力で全身を覆ってやりゃいい」
「魔力で覆う?」
「あぁそうだ、魔力で覆っておめぇの力に変えるんだ。力の継承って儀式だな、昔あったんだよそういうのが」
「それするとどうなるの?」
「自分の力になるって考えられてるだけだな、はっはっは..まぁ気休めだな、それが終わったら全身に岩を砕いた砂粒を纏わせ、地面に埋めれば終わりだな。」
「なんかめんどくさいね、それ」
「そうだなだがそれぞれちゃんと意味があることだからな、ひとつでもかけちゃぁ意味がねぇんだ」
「ありがとう、師匠...」
つい零れた独り言で目が覚める。
「なんで今まで思い出せなかったんだろうな..前向いていなかったからか」
そう言い聞かせ夢で思い出した儀式を始めることにした。
ベッドに横たわってる少し腐り始めている師匠の肉体を、自分の魔力で全身を覆った。
だいぶ時間が経っているはずなのに、なぜかほんのり温かくて、ずっと待っててくれたような感覚になった。
涙が頬を伝っていることに最後まで気づいていない振りをした。
外にある岩を砕き砂粒を師匠に纏わせる、そこにどんな理由があるかなんて知らないけどそれでもいい。
最後に土に埋める作業、穴としてはそこまで深く掘る必要はないが地盤がどうしても固いため、掘るのは厳しそうだった。
「こんなところでやめるわけにはいかないんだよ、クソ」
つい熱が入り、本気を出す水を作り地面に流す、流し続ける。
1時間くらいたっただろうか、やっとまともに掘れる状態になり師匠を埋める。
「ごめんな師匠、経ち直すのが遅くてさ、待たせすぎちゃったよな、でもさ俺..明日外に行くよ。決めたんだ、だからもう安心していいんだ」
別れの言葉、師匠ならきっと届いてるそう確信するほど表情が緩んでいるように見えた。
覚悟を決めて師匠が修理した宇宙船の場所に向かう。
屋敷の裏地、そこにポツンと所在なさげに置いてあった。
船に近づき触れる、師匠の腕ならちゃんと使えるようになってると信頼できるからこそ、感じる..温かみ
「こっちも随分待たせちゃったな、本当はもうちょっとここに居たいんだけどさ、師匠にさっき宣言してきたから..俺頑張るよ」
そう告げて船を後にした。
最後の晩餐なんて言えるほどのものは俺には作れないけど、いつも師匠が作っていたものなら作れる、いつも通りでいい。
逆に変に挑戦して失敗したらゲン担ぎにもならない、平常心でいいのだ。
「ここも使うの最後か、そうだ手紙父さんから受け取ってたんた、確かそれに行先が載ってたはず..とりあえずそこ目指すか」
自分で作った料理を軽く平らげ手紙を探すことにした。
場所が場所だけに無くすほど物は増えない、それ故にすぐに見つかる。
自分の部屋のクローゼットに仕舞ってある、中身を確認しちゃんと行先が記されていることを確認する。
「なんだかんだ、俺を導いてくれるよな..こうやって」
少し孤独感から解放された感覚を味わいながら、外に置いてある宇宙船に読み込ませた。
どうやら軌道計算に1日かかるらしい、少しは遅すぎたかと考えつつも最後に屋敷の掃除をしていないことに気づき掃除をすることにした。
最初に玄関、廊下、リビング、師匠の部屋、食物庫、自分の部屋、結局使うことのなかった5部屋、すべて掃除するのに1日かかってしまった。
最後2階の、自分の部屋をぐるっと見渡し思い出に耽る。そうこうしてると宇宙船の方から音が聞こえた。
ピーピーピー
「終わったのか、これで本当に..こことはお別れするんだよな」
荷物何て食糧ぐらいしかないとはいえ、それを一人で十分な量運び終えたころには食物庫は空になってた。
宇宙船のコックピットに座ると首飾りを前に掲げ誓った。
「師匠、約束忘れてないからな、必ず見つけ出してみせるよ」
そう言い切って目の前の突起に引っ掛けつるすことにした。
これから長い間コールドスリープする、これは必須事項
正直、怖い。でも師匠が使っていたもの修理した船だから拒絶するほどの抵抗感はなかった。
ドォー、ドォー、ドォー
少しづつエンジンが作動し浮き始める。
宇宙船が浮上し重力の薄かったとこから、無重力に変わる瞬間すべてが不思議に思えた。
「これが師匠の見てきた..感じてきた世界なんだね..」
そう言い残しコールドスリープの装置に入った。
星の欠響-hosinokakkyou- @tukizizyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。星の欠響-hosinokakkyou-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます