第2話 『 理不尽 』

 猫は家に付くと云う。僕が当初考えたのは「もしかしたら、コイツは以前この家に住んでいた人から飼われていたのではないか」と云うこと。その証拠に態度がでかい割には餌は市販のカリカリものしか食べないし、テーブルに乗せている僕らのご飯を盗み食いすることもなかった。とにかく「ここは元々オレの家だ(お前らは居候)」と言わんばかりに堂々と縁側から行き来し、気が向くままに僕らに餌をねだるのだ。

 そうなると次に考えたのは「何故コイツは元飼い主から捨てられてしまったか」と云うこと。カイ(身体の色=濃灰色から僕が即興・ヤケクソ的に付けた)は出掛けていても夜はキチンと帰ってきて僕らの布団に一緒になって眠る。しかし既にしっかりと成人したその身体はほぼ抱き枕レベルに場所を取り、また生来の鼻炎持ちなのか熟睡時には鼻笛をスピスピ鳴らすのだ。

「要はデブにゃんになり過ぎたのと…」

 僕はカイの下腹部を見る。「あっちの方がお盛ん過ぎたか…」

 そう。カイのタマタマは既に存在しなかった。綺麗さっぱり抜かれて、その袋だけがフコフコと股の間にくっ付いていた。それは僕から見ても余りにも人間の側からの理不尽な処置だった。いや、飼い続けるならまだ良い。救いはある。

「でも、結局棄てちゃったんだろう?」

 カイだってそう言いたくなるだろう。

 それにしても…。

 確かにカイは近隣の一部のメス猫から妙にモテた。ほとんど「悪い男」並みに素っ気ない態度を取りながらメス猫に後を追わせていた。時には自分の余った餌まで食べさせる甲斐性まで披露して。

「う~ん…」

 カイのデカい身体が邪魔で、女房が寝苦しそうに体勢をひねった。新婚の僕らの間にすっぽりと収まった、おそらく「おっさん」猫のカイ(実際後で調べてもらったら推定五歳、人間では四十手前ぐらいだった)はそれでもスヤスヤと寝息を立てながら時折年寄りみたいなため息を漏らした。

 まるで「渡る世間はよういかんなあ…」、そう言わんばかりに。 

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