第3話 『 猫屋敷 』
僕らが住んでいたのはヒロセさんと云う旧地主さん(女性)が所有する集合住宅の一つだったが、そこは小高い山を切り開いたようなところにあり、周りから見ると隠し砦的に分かりにくい場所だった。そしてそこは一方で猫天国であり、時には野犬までが群れで駆け回る、ほとんど動物王国同然の所だった(後になるとそこに山羊の親子も加わった)。
ヒロセさんは旦那さんを早くに亡くしたふくよかな人柄で、本宅にはご両親が住み、自分は別棟の洋風の家で大家兼、市議会議員をやっていた。そしてこのヒロセさんが大の猫好きらしく、来る猫来る猫に餌を与え、ほとんど地域の猫全体を養っているような状態だったのだ。
「カイは多分あれだな。うちに来るまでは大家さん家で食べて、凌いでたんだな」
僕がそう言うと、
「何言ってんの。今朝だって向こうで他のと混ざって食べてたよ。私が家賃払いに行っても、素知らぬ顔してガッツいてんだから」
と女房はいささか憤慨気味で返した。つまるところ、僕ら店子は大家さん家の大勢いる猫の一匹(それもかなり御年配の)を成り行きで引き受けてしまったらしい。
やれやれ、僕も犬猫は小さい頃から飼ってるので嫌いではないか、どうせならもう少し可愛い奴が良かったな…。思わずそんな愚痴も漏れそうになった。
するとまた、縁側からガッ、ガッと云う力強い音がして当のカイが帰って来る。
「つまらん詮索と期待は止せ」
と言わんばかりにカイは僕らの間を悠然と通り抜け、そして畳の上にドスンと横倒しになったかと思うと、もう気持ち良さそうに目を閉じていた。
僕らの家はそうやって中も外も猫屋敷と化していったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます