土曜日 AM6:00

土曜日 AM6:00


浅梨ましろのが、一度キーボードを叩き始めれば、その細い指先は残酷なまでの論理を紡ぎ出す。


「もう朝?……うそ、でしょ……?」


要は、掲示板を荒らしているうちに夜が明けてしまったのであった。

「いったた……。腰、バキバキ……」そうして

10時間ぶりに立ち上がろうとして、「――っ、きゃ!?」オーバーサイズすぎるスウェットの裾を自分の足で踏んづけ、ましろは誰もいない部屋で思いっきり転んだ。部屋の中で転倒するとダメージが非常にでかい。中高年が部屋の中で転んで死ぬことがあるのも納得である、当然一文字違いの中高生のましろにとっても致命的なダメージなのはいうまでもない。

浅梨ましろ16歳、自室の中で茫然自失と化した師走の朝であった。


部屋から出るまでで満身創痍になったが、ましろは台所にたどり着いた。

なんやかんやで昨日の朝ごはんから丸24時間何も食べていないのであった。

ましろの家、つまりはVtuber事務所で成功した母が買った高級マンションは言うまでもなくオール電化だ。電気が止まった時点で詰むという談笑を支払う代わりに、時間はかかれどそれなりの料理は作れる。


冷蔵庫が空っぽだった。


土曜日の早朝では世界的な宅配サービスはやっていないし、やっていても、そういった宅配サービスはマンション前の幾重ものセキュリティに門前払いである。


たとえ電気が来ていても、今年の夏のようにエレベーターが止まっただけで「詰む」家である


「こんな時だし、あれが久しぶりに食べたいな…」


アレとはTKG、つまりは卵かけご飯。ましろとて、たまには和のテイストが恋しくなることがあるのだ。

幸い、お米だけは袋に入れっぱなしのままのやつが見つかった。ミニ炊飯器にセットしてましろは適当なズボンだけを履いて部屋を出た。


20階からエレベーターで地上に降りると、ましろは電動自転車に跨った。こうして電動自転車を漕ぎ出さなければTKGの材料すら手に入らない。自転車で40分、通学もお買い物も冒険である。滅多に家に帰らない両親はこの生活面の不便さをまるで知らない。そして、このおかげで、インドア生活のくせにバスト以外に余計な脂肪がつかないことを、ましろは知らない。


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