魔法少女は拡散希望

　ノゾミは特殊な魔法少女である。

「みんなー！今日も生配信開始だよ！拡散して応援よろしくね！」

　怪人を前にして生配信を開始するという愚行に、怪人は呆れる。

「いや、おまえ浮かれ過ぎだろ」

「あら、そう見える？」

　そう答えた目の前の魔法少女は、どこか焦っているようにも見えた。

「何かの時間稼ぎか？なら暴れてやるよ！！」

「そうはさせない！爆散希望！！」

「そこは拡散希望だろ！？」

　少女が放った魔法は爆発する光の玉を出現させるというもの。怪人はそれをどうにか避け、遅れて爆発した光の玉は無様に散っていった。

「甘いな。こっちから攻撃行くぞ！」

「や、ヤダ！あんた炎上待ったなしよ！？大人しく退散希望！！」

「いやなんで敵の心配してんだよ！？」

　そうこうしている内にノゾミの生配信はネット上に拡散され、コメント欄は怪人を非難する声とノゾミを応援する声で溢れ返った。

　ノゾミの口角が自然と上がる。

「――ありがとう。魔力がみなぎってきたわ！」

「なんだと！？」

「行くわよ――霧散希望！！」

「技名それでいいのか！？」

　浄化魔法を受けた怪人は、ツッコミの言葉を叫びながら消滅した。

「ふう……みんな、今回も応援ありがとう！また次回も観てくれると嬉しいな。それじゃあ、まったね〜！」

　ノゾミは今時の魔法少女。インターネット上のバズりを魔力に変換して戦っているのだ。