それが許されざる罪だとしても
自我が生まれたときから敵はいなかった。
何もわからない自分に害をなそうとするものもいることはいたが相手にもならなかった。
その力故か近寄るものも次第にいなくなり、孤独を生きていた。
世界に理がある。同じように罪には罰があるものだ。
もし強さが罪だとするのならば、これが罰なのだろうか。
強く生まれてしまったことが罪なのならば一体だれを自分が苦しめたというのだろうか。
孤独であることが罰だというなら一体だれが自分を許してくれるのだろうか。
だれも側におらず一人で生きている者にはそれを教える者はおらず、また学ぶ機会を得ることもなかった。
あるときいつも通り人里離れた山奥で寝て起きるだけの生活を送る日々に異変が起きた。
獣たちですら近寄らない彼に異変が起きていた。
病に侵されていたのだ。
しかしそれすら誰かに教わったこともない彼は初めての苦痛にひどく困惑していた。
耐えれない痛みでもなく、また体内に生じた異物感は何かを目覚めさせるかのようだった。
そのまま日々を過ごし、ある日立ち上がれなくなったことで終わりを迎えようとしていた。
そのときになり始めて獣たちが彼に近寄ってきたことで、彼は涙を流した。
これが「許し」なのかと、何もせずに生きていた自分に訪れる終わりこそが世界からの「許し」なのかと。
そうして散り行く彼は獣たちに取り込まれ世界へと拡散していった。
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