第8話「作られ者 1 」
『 14月03日 12:00 ガザル地区 現東海岸付近 』
何百mもの高さのある断崖絶壁の海岸
付近には巨大な岩や燃え尽きた木々があちこちに浮いている
中には人の腕や脚が浮いており時折岩とぶつかり血飛沫をあげていた
海は水平線の先まで赤黒く染まっておりまるで生命を感じられない
そこは復興を謳われた地とは到底思えない凄惨な世界が広がっていた
ゴォォォ!! 轟音と共に周囲の砂塵が吹き飛ばされてゆく
丸っこい船舶が着陸する
側面のハッチが開きワルキューレ達がアームで外へ降ろされる
しばらく西方面へ歩いているとスラム街に着いた
道端に転がっているテーブルの上には湯気のあがるスープが置いてある
まるでこの街から一瞬で人という存在が消えたかのように静かだった
いくら見回しても人はいない
バシューン!! ロケットランチャーが放たれる音が静けさを破った
1発のロケットがワルキューレ達に向かって飛ぶ
危険信号を感知したワルキューレ1機が右手を構えロケットが飛んでくる方向へ
6角形の半透明なシールドを無造作に展開し直撃を防ぐ
別機がすぐさま飛んできた方向へ銃をむけ1発で左目を貫き制圧する
「良くも悪くもカタログスペック通りだね
ならわざわざ模擬戦やらせる必要無いか...」
空から女性の声がすると周囲から両腕を広げた人が何人も浮き始める
グシャァ!! 浮いた人々は血飛沫と共に十字架状の赤い針に体内から貫かれ絶命した
空から女性が降りてくる
鳥のような脚に巨大で真っ黒な翼が背中から生えており
ゴムバンドを頭に何重にも巻き両目を隠している
「勝手に呼び出して悪かったね 今ワルキューレ隊の指揮権は全て私が持ってる
んじゃ早速外回りの任務をこなしていこうか!」
『 14月03日 12:12 六川小学校校庭 』
全ての死体袋を校庭へ集め燃やしている
パチパチと炎の燃え盛る音だけが響く
ジュディアがそばに寄ってきた
「...」
「......」
無言のまま炎を見つめる
こんな時昔の俺なら何を考えたんだろう...
何を考えればいいかを考えながら炎を見つめる...
「......」
「...」
ちらっとジュディアの方を見ると偶然目があった
ジュディアはすぐ炎の方を見つめ始めた...少し微笑んでいたような気がする
炎が今にも消えそうになった時後ろから足音が聞こえた
振り返るとレヴィディアが来ており小走りで駆け寄ってくる
「車到着しました デモ隊を迂回できる道も計算済みです
早く帰りましょう」
それを聞いたみんなはトボトボと車の方へ歩いて行った
するとレヴィディアが指先サイズで円状の小さな電子機器を見つけた
そのまま拾いポケットの中へしまい込んだ
車に乗り込みグレートフォールの基地へ帰った
タンクをジョブに渡し点検してもらう
「タンクのエネルギー使い切ってよく意識を保てたな...」
色々文句を言われたがタンクの方には異常はなく充電すれば同じように扱えるとの事
最後のダッシュに相当費やしたとはいえエネルギー切れを起こすのは不安だ
能力自体の燃費が元々悪いのかそれとも電力変換の効率が悪いのか...
後者であれば技量を上げればなんとかなる...はずなんだがな...
後でライカさんかジュディアさんに聞いておこう
武器庫でなんとか見つけ出した銃を返却し会議室へ向かう
会議室にはライカとジュディア、キアラとレヴィディアの4人がいた
「お! 今回のMVPの登場だね!
どうだった? 初の対能力者戦は楽しめたかい?」
ライカがにこやかに話し始めた
「まぁ楽しかったです...だが改善点は多いって感じ...」
俺は半分楽しく半分後悔する声で言った
足場のない方向へ回避したのは完全にミスだった
速度強化は空が飛べるわけじゃないからな...足場は必ず必要だ
「まぁまぁ半月でここまでできるのはすごいよ!
あっそういえばジュディアが話したい事があるって言ってたよ?
ねージュディア?」
ライカはそう言いジュディアの方をニヤニヤしながら見つめる
「っ! 今じゃなくていいでしょ...」
ジュディアは少し頬を赤らめながら言った
「師匠 デートはいいですがなんでこの人なんですか...?」
キアラが冷たい目で言い放つ
「あ!ちょ!キアラちゃん!?」
ジュディアは動揺しどんどん顔が赤くなってゆく
「え......デート...?」
なぜ俺...?という疑問が1番最初に浮かんできた
ジュディアは手で顔を覆い被しため息をした
「はぁ〜〜〜今晩酒の勢いで誘おうと思ってたのに...」
まぁいいか まだ聞けてない事が色々ある
「いつにします?」
とりあえず聞いてみる
「えっ...えっと...明日とか...」
ジュディアは顔を背けながら言った
すると突如ニュースの音がなり始める
「最新ニュースをお伝えします
先ほどワレス大使館にて行われたザンラース政府との首脳会議では
クローンの研究や能力者の軍事採用などが再び言及されました」
壁に取り付けられた半透明のスクリーンでは政治系のニュースが流れている
「ザンラース首相であるマクバー氏は
クローン研究は人道的範疇を越えておりこの世から根絶させなければならない
と強く強調しており
クローン研究禁止協定違反時の罰則をさらに厳しくする方針を主張しています」
「クローン嫌いのマクバーは相変わらずだね〜」
ニュースを見ていたライカが呆れたように言った
「もしワレス側がクローン研究やってたとしてら...」
キアラがそう呟くと
「控えめに言って戦争沙汰だろうね...
まぁワレスもクローン技術の悲惨さは理解している筈なんだけど」
ライカがため息をつきながら言った
するとジュディアが近づいてきて左袖を軽く引っ張った後部屋を出て行った
俺もそのままついていき部屋を出る
「明日...ニューデトロイトの北にあるバルベルてところに遊びに行こ?
任務とかあって休み取れるの明日ぐらいしかないからさ...」
ジュディアは俯きながら小さな声で聞いてきた
「いいですよ
俺の過去について色々聞こうと思ってましたし」
そう気楽に答えるとジュディアはキラキラと輝く顔で一瞬顔を合わせたがすぐ逸らした
「あ...明日バルベルでは雪が降るって言ってたから気をつけてね...」
ジュディアはそう言い自分の部屋へ戻って行った
バルベルか...やっぱり覚えがない
はっきり言って過去の記憶がなくても今の所生きてはいける
だが感覚的に惹かれる というか知る必要があるって直感が言ってる
自分探しか...らしくねぇな...
アンドロイド・マインド Vの字 @Vnozi
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