第5話「化け物退治」
「ふぅ...この辺の怪異は一応片付いたね...
にしても刀にはまだ慣れないな...」
原型を留めていないほどぐちゃぐちゃな怪異から刀を引き抜く
高音と低音の混じったようなエンジン音があたりに響いた
振り返ると『ホワイトコープ』と書かれた航空車両が着陸しようとしている
「ホワイトコープ...ジュディアが言ってた政府の白忠犬か...」
着陸した航空車両から白色の軽量装甲を着た隊員達が4人ほど降りてくる
「おいそこの子供! 武器を下ろしてそこから離れろ!」
白隊員は銃をこちらに向け近寄ってくる
はぁ...僕は子供じゃないってのに...
刀を納めイヤイヤ手を上げ白隊員に近づく
「無断での怪異呪霊討伐は犯罪だぞ!」
白隊員が威圧してくる
「ちゃんと依頼は受けてる 言われた通り怪異は始末したよ...少しやり過ぎたけど...」
怪異の方に目をやる
目視では怪異か何かしらの肉片か全く判別できない有様だ...
「依頼内容を調べる 名前を教えてくれ」
白隊員の1人が腰に着けていたタブレットを取り出しながら質問してきた
「キアラだ」
そう言うと白隊員はタブレットをいじり始める
「申し訳ないキアラさん 怪異討伐へのご協力感謝します」
白隊員が深々と頭を下げた
「いいよいいよ 駆除報告する手間が省けたし」
白隊員2人が怪異に近づき観察している
「では僕はここで失礼するよ」
そう挨拶しこの場を去った
『 13月20日 10:20 』
ガンッ! 右からのパンチをなんとか右腕で受け止める
ようやくライカさんのスピードにギリギリ追い付けるようになった
ドンッ!! 腹に蹴りを入れられ軽く後ろに吹き飛ばされた
「目では追い付けるようになって来たって感じだね
少し休憩しようか」
ライカが手を差し出し起き上がるのを手伝ってくれた
周囲が暗転し目が覚める
「あぁ戻ったか...」
ジョブが巨大なコンピューターを操作しながら話した
地面から少し浮いているカプセルから降りる
ライカもカプセルから降り話しかけてきた
「電子訓練には慣れて来たかい?」
「はい...なんとか」
そう話しているとジョブが割り込んできた
「あまり無茶な挙動すんなよ
イージスの外付けタンクとの同期で手こずってるのに加え
お前自身の接続も安定させるのに一苦労なんだ」
仮想空間内での近接戦闘訓練...思うように動けない...
ライカがペットボトルを渡してくれた
「あ...ありがとう」
「君才能あるよ もう実技訓練で能力訓練に手をつけていいかもね」
2人で部屋の端っこにあるベンチに座り水を飲む
「能力の習得って何年かかるんですか?」
近くにあったタオルで汗を拭きながらライカに尋ねた
「強化手術を受けてたりイージスの外付けタンクがあればすぐだ
能力のデータチップ入れて読み込めばすぐ使える
まぁ使えるようになっても慣らさないといけないけどね」
ライカが答えベンチから立ち上がった
「君は電子訓練との相性も悪そうだし早速だが能力訓練始めるかい?」
手を差し伸ばしてきた
するとジョブがこちらに椅子を向けため息混じりで
「早いとこそうしてくれ...こいつを動かすのはしばらくゴメンだ」
ここ数日電子訓練の仮想空間を維持してくれたジョブには感謝だな
俺はライカの手をとって立ち上がりそのままエレベーターへ向かった
エレベーターに乗り込み上へと向かう
「能力ってデータチップでなんとかなるんですね...」
もっと魔法みたいもんだと思ってた
「不思議だよね〜魔法みたいな物が電子機器で再現できるだなんて...
私も原理なんてさっぱりだよ...過去の天才達は何が見えててたんだろ」
その言葉は少し寂しそうに聞こえた
エレベーターが止まり真っ白でだだっ広い部屋に着いた
「残念ながらデータチップは電気と物理だけしか残ってない...
どっちにする?両方ってのもアリだけど...」
ライカが近くにあった黒い箱を手に持って聞いてきた
「どっちと言われても...内容知りませんし...」
頭をかきながら悩んでいると
「電気は主に電力の生成や操作 自身や味方のスピード強化などです
そして物理はエネルギーの物質変換ですね」
居なかったはずのレヴィディアが急に現れ説明しだした
「っ!!びっくりしたぁ...!」
驚いている俺を見たライカは少し笑った
「レヴィディアちゃんの言う通り!
私個人として最初のうちは電気をお勧めするよ
物理はかなり体力使うからね」
ライカが黒い箱から黄色のチップを取り出しながら話す
「電気のスピード強化って足だけ?それとも全身?」
背中に取り付けているタンクを外しながら聞く
「基本的に全身だね 腕だけとか足だけとか慣れて来たらできるようになってくるさ
パンチの速度を急に変えて相手のペースを乱したり
腕を速く動かしてガードを間に合わせたり色々楽しいよ」
なんだそのくっそ相手にしたくない戦い方は...
「でも理不尽を相手に押し付ける戦い方は楽しそうかも」
独り言が口から溢れた
「まぁ相手は怪異や呪霊だし 相手を尊重する必要ないから
クソ外道戦法を気軽に楽しめるよw」
ライカが笑いながら言った
「そういえばライカさんはどんな能力を持ってるんですか?」
ライカに渡されたチップをタンクにはめ込みながら質問する
「あぁ私? 言ってなかったね
私の能力は電気と物理だね ちょうど君がこれから扱う能力だよ」
「ご師匠ですね」
師匠か...そう思いながらタンクを背中に取り付ける
にしてもこのタンク平べったくて背中にピッタリくっ付く...
違和感も無いしどう言う技術なんだ...
ライカが半透明のタブレットを取り出しボタンをタップする
すると人型をしたターゲットが部屋の奥に現れた
「物は試しだ 指から稲妻を出すイメージをしてみて」
床にある赤いラインに立ちターゲットに向かって右手で指を刺す
目を閉じ指先に集中する...
静電気のイメージをする...静電気のイメージ...イメージ...
パシッ!! 指先が軽く針に刺されたように痛むと青色の稲妻が指先から飛んでいく
雷のように速くはないがプラスチックで出来たターゲットは釘を打たれたように割れ吹き飛んだ
「青色...」
チップの色が黄色だからてっきり黄色の稲妻が出るのかと...
「わぁぉ...能力持ちだったとは...」
「...へ?」
ライカの言葉に疑問を持った
俺が能力持ち? 記憶がないから否定も肯定もしようが無いが...
「ジュディアの奴また天才を拾って来やがったなぁ!」
ライカが喜んでいる
「能力持ちって...どういう?」
ライカに聞くと手を両手で掴まれキラキラと輝く目で見つめられる
「まさか質量を持つ電撃を放てる能力だとは!
すごいよ君! 質量を持った電撃は私にも出来ないんだ
だけど君は生まれつきでそういう能力を持っている!
存在自体は知っていたけどまさかこの目で見られるとは!!」
テンションの高いライカさんはジュディアさんと似ているな...
「そうと分かれば訓練あるのみ!
私が相手してあげる 好きなだけかかって来な!」
ライカは少し離れニヤリと笑った
『 13月20日 18:22 』
「だぁぁぁ疲れた...」
ソファから起き上がれない
「お疲れのようですね ザンさん」
レヴィディアはキッチンで夕飯の準備をしている
にしても地獄みたいな訓練だった
ジョブの言ってた事はほんとだったな...
なんとか体を起こしソファに腰をかける
レヴィディアが夕食を運んできてくれた
「ありがとうレヴィディア」
そういうとレヴィディアは少し微笑んだ
夕食を済ませシャワーを浴びている途中何個か痣のできた右手を見つめる
俺も能力者か...実感が湧かないな...
痣は電撃を放った時にできた
「自分から放たれるのに痛いんだな...」
シャワーを済ませベットに倒れ込む
レヴィディアが話しかけてきた
「明日は実際の怪異を相手する実践訓練でしたよね」
「ああそうだ...」
俺はうつ伏せたまま答えた
「気をつけてくださいね」
レヴィディアはどこか不安そうな顔をしていた
「おやすみなさい」
「あぁおやすみレヴィディア」
俺はそのまま気を失ったように寝た
6-Aと書かれた部屋から少女の啜り泣く声が聞こえる
「どうして...こんなにも頑張って来たのに...」
その少女は返り血で真っ赤に染まっていた
周囲には生徒と思わしき人の死体が転がっている
「どうしてこんな事に...」
1つ1つ死体がゆっくりと浮き始め天井にぶつかっていく
そして次々と銀色の死体袋に包まれチャックがジジジと閉まっていく
「どうして...どうして...どうして...」
「ここだよ」
不気味な声が部屋に響いた瞬間少女は跡形もなく消えていた
『 14月02日 16:55 再現都市東京の郊外 六川小学校 』
全校生徒全教師を含む234人が死体袋に包まれ死亡
6年A組のロア・ユーサーが行方不明
政府は怪異もしくは呪霊の可能性を考慮し能力者に調査依頼を出した
地獄は今もお腹の中で生まれ落ちる日を待ち望んでいる...
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