第4話「夢見るアンドロイド」

その夜レヴィディアは夢を見ていた

「......ここは...?」

辺りを見回すとどこまでも続く真っ白な空間が広がり

頭上からは様々な数字がゆっくりと雨のように降り注いでくる

「初めまして レヴィディア」

聞き覚えのない男性の声が白き世界に広がる

振り返ると黒のローブで身を包み顔が見えないほど深くフードを被った男性が遠くに立っていた

腰にある剣に左手を置いている

「やっぱりアンドロイドか 生命の王がアンドロイドに...なんだかねぇ

 手短に話そう 君への依頼はこうだ

 "何をしてでもヴィナを生かし続けろ" 以上だ」

そう言い残し男は背を向け歩きだす

「あ...あなたの名前は!!」

私の口からなぜかその言葉が飛び出てきた

「俺の名前か? リズア・ユノス 生命の王   の門弟さ」

ノイズが走り最後の方が聞こえなかった

男がふと消え白き世界が一瞬で真っ暗になる

全システムが現実に引き戻されベットの上で目を覚ます

3件のエラーと予想演算ログの通知が頭に届く

エラー内容を確認しエラーを吐いたシステムに再読み込みをかける

1件のエラー通知が届く

もう一度システムに再読み込みをかける

今度は深刻なエラーになって帰ってきた

ため息をつきながら体を起こし真っ暗な部屋の電気をつける

隣のベットにはすごい角度の寝相をしたジュディアさんが爆睡している

エラー内容を再度確認する

『感情モジュールに深刻なエラー』

感情モジュールにもう一度再読み込みをかけるがまたエラーが出てくる

呆れ果て現在時刻を確認する

『13月16日 06:33 』

予測演算ログをなんとなくトップシークレットファイルに入れ行動プログラムを書き換える

ベットから降りザンさんを起こしに行った


急に明るくなり目が覚めた

「おはようございますザンさん」

レヴィディアが覗き込んでくる

...顔が近い

「目を覚ましましたか」

目の裏を観察されるかのように見つめられる

「わかった起きるよ」

そう言うとレヴィディアは顔を起こしキッチンに向かった

身体を起こそうと寝返りを打つ

ゴンッ! 床に叩きつけられる...そういえばソファで寝たんだった

身体を起こすとテーブルの上に大量の空き缶が並んでいるのが目に入る

「そういえばジュディアさんは?」

昨夜大量に酒を飲んでいたジュディアを思い返す

「ジュディアさんなら寝室のベットで幾何学的な寝相で寝ていますよ」

レヴィディアがキッチンで手早く朝食を作りながら答える

近くにあったビニール袋を手に取り散らかった空き缶を片付け始める

「ふあぁぁぁ おはよ〜...」

ジュディアがあくびをしながら寝室から出てきた

幾何学的な寝相は見損ねたが寝癖もなかなかに弾けている

「おはようございますジュディアさん...すごい寝癖です」

レヴィディアの目がかすかに光った

「あぁー写真撮らないでよー」

ジュディアが文句を言い放つ

あの光...どこかで見たような...

テーブルを片付け終えるとレヴィディアが朝食を並べ始めた

俺はレヴィディアの目を注意深く見た

「ん? どうかしましたか?」

それに気づいたレヴィディアが見つめ返してくる

「さっき目が光ったけどあれって?」

「あれはアンドロイドが持つカメラ機能ですよ」

確か病院の受付で感じた違和感に似てるような気がする

受付に声かけてすぐだったが身分証との照らし合わせだったら早すぎる気もする

ジュディアが床に腰掛け朝食を食べ始める

「ありがとねレヴィディアちゃん」

まだ眠そうに話している

俺も朝食を食べ始めた

「そういえば...俺は何すりゃいいんだ?」

俺が途方に暮れながら言うとジュディアが少し悩むように言った

「ん〜とりあえずグレートフォールの面々と集まって作戦会議かな」

ジュディアが朝食を口に掻き込み軽く咽せる

「作戦会議って何するんすか?」

食べ終わるジュディアに質問した

「それはお楽しみ あレヴィディアちゃんも一緒に来てね」

ジュディアはそう言うと立ち上がり空き皿をキッチンへ持っていく

俺も朝食を済ませ身支度を始める

支度を終わらせエレベーターへ向かう

ジュディアがエレベーターを呼ぶ

3人共エレベーターに乗り込み1つ上の階へ向かう

特に会話はなかった...

エレベーターが止まりその階へ降りる

扉を開くとパソコンをいじってる男が1人タバコを咥えこちらを睨んでくる男が1人

銃を弄っている女性が2人ホワイトボードのに何か書いている女性が1人

合計5人がいた

「よし全員集まったね」

ジュディアがホワイトボードの方へ歩いて行った

「こいつらが言ってた奴らか?」

タバコを咥えた男がジュディアに聞いた

「そう 仲良くしてやってね」

ジュディアはそう言い返しホワイトボードに書いていた女性と話し始める

「俺はジョブ よろしくー」

パソコンをいじっている男がこちらには目を向けずパソコンを操作したまま挨拶した

「俺はライカンだ」

タバコを咥えた男がめんどくさそうに言った

「...え?あたし? (咳払い)あたしはユリカ んでこっちがレファ よろしくね」

「よ...よろしく...」

銃を弄っていた2人の女性が挨拶してきた

レファはユリカの後ろに隠れている

「次は私だね 私の名前はライカ ライカ・ハインヴェリンだ これからよろしく」

先ほどジュディアと話していた女性が言った

「...あっ俺か ヴィナ・ザン・タイナー んで彼女が...」

「人間もどきのレヴィディアです」

ジョブ以外全員がレヴィディアの方を向いた

「アンドロイドって冗談言えるんだな...」

俺が感心しているとレヴィディアが俺の目を見ながら言った

「堅苦しかったので自己紹介で使えるアンドロイドジョークを調べてみました

 気に入りましたか?」

「タイプD入れたのか?」

パソコンを弄りながらジョブが質問する

「タイプBから変えてみました〜」

ジュディアが軽々しくしているのを見てジョブはため息をついた

「タイプDは感情モジュールが挙動不審になるから嫌なんだよ...

 メンテもめんどくさくなるし...」

「はーいその愚痴前も聞いたー とりあえず自己紹介も終わったし

 記憶を失った彼のために色々説明しよう」

ライカがジョブの話を遮り新しい話題を出す

「私たちは全員強化手術を受けた元軍人だ もちろん2000年戦争の戦場を這いずり回った」

「と言うことはみんな能力が使える?」

「そう言うこと ジュディア〜昨晩酒飲みながらベラベラ喋ったでしょ〜」

ライカはどこか怒っているようだった

「げ...バレたか...」

ジュディアが少し恥ずかしそうに言うとライカをため息をついた

「はぁ...まぁいい 能力については聞いたかもしれないけど軽くおさらいしとくね」

ライカがホワイトボードの書き始める

「能力は2種類 生まれつき持っている能力と訓練さえ行えば習得できる能力がある

 習得式の能力を生まれつき持ってる人もいるが...まぁそこは深く考えないでいい

 ついでに言っとくけど旧地球人種は生まれつき能力を持っている事はほぼ無いね」

近くにあった椅子に座りながら話を聞き進める

「生まれつきの能力の内容は本当に個性豊かで...ほぼ無限にあるから割愛するよ

 んで習得式は...」

「習得式は炎 電気 氷 擬似重力 毒 金属や岩石を生成する物理の6つです」

ライカが話している途中にレヴィディアが割って入ってきた

「炎ってジュディアさんの...」

俺がそういうとジュディアが少し嬉しそうに反応した

「そう私が使ってる能力さ とは言っても生まれつきの能力も同じ炎系で

 習得式よりはるかに使い勝手が良くなってるけどね」

「そう ジュディアが言った通り同じ能力でも生まれつきと習得式でははっきりと差がある」

ライカがホワイトボードを書き進める

「そして能力を使うにあたって1番重要なのがカロリーなんかを含む体力だ

 生まれつきも習得式も発動に必要なエネルギー源だ

 だが一般人が扱うにはあまりにもエネルギー使用量が多すぎて

 最悪1発使っただけで即衰弱死なんてのがある

 その問題を解消するために発明されたのが強化手術による体力量の底上げだ

 2000年戦争よりも前の技術らしいが

 今となっては手術なしで着脱可能な外付け式を最近イージス社が開発したらしい」

ライカンが話に割り込む

「あぁイージス社が実戦での技術試験とかなんかで送ってきたやつか」

「あれ色々調べてみたがほんと...いい意味で頭おかしいよイージス社...」

ジョブがため息をつきながら言う

「とまぁ能力についてはこんなもんかな

 魔術関連は...別の時に話せばいいし

 次は怪異と呪霊についてだが...」

昨日レヴィディアが言っていたことを思い出しながら

「怪異が恐怖の具現化で呪霊が怒りや憎しみの具現化...ですよね?」

「そうそう正解 だけどかなり抽象的だからもう少し詳しく説明するね」

ライカが少し嬉しそうに答えた

「まずは怪異から

 怪異は超常現象を含むあらゆる現象や物質に対する恐怖の蓄積による具現化だ

 呪霊は現象や何かしらの対象への憎しみの蓄積による具現化

 なんでそんなことが起こるかというと体力に似た感情エネルギーってのが原因

 その感情エネルギーは生物が感情を発生させた時に出てくる

 基本的にはすぐ消えるんだけど恐怖や憎しみなんかは残りやすくてね...

 でそんなもんが溜まりに溜まって最終的には具現化するって訳」

さらにホワイトボードを書き進める

「って事は感情を持つ生命が生き続ける限り怪異や呪霊は無くならないのか...」

俺は顎に手を当てながら独り言をぼやいた

「そうだけど大丈夫

 大体の移住惑星は北極や南極の基地に具現化位置を引き寄せる装置が展開してる

 それでも稀に小さい奴は街角に現れたりするからね

 だから政府は私達のような元軍人に金払って討伐依頼を出してくるんだよ」

それを聞くと俺は昨日のことを思い出しながら言った

「じゃぁ昨日のチェーンの奴は怪異なんですか?」

するとジュディアが真剣な顔で答えた

「一応怪異ではある...が同種の呪霊が怪異を食ってる可能性がある

 しかも誰かが意図的に街に放した...」

ライカが頷きながらいった

「だね あのレベルはほぼ北極基地や南極基地の方へ吸われる

 凶暴なのも怪異ではなく呪霊が主体だからと言えば納得がいく...

 あ...怪異や呪霊の捕食について説明してなかったね」

ライカがホワイトボードを裏返しまた書き始める

「怪異達の話で1番面白いのは"捕食"についてだ

 具現化した体内にある核の部分を直接食べるか

 何かしらの効果で具現化した感情エネルギーを吸い込むかで捕食ができる

 捕食して何するかは捕食した対象の特性を能力へ変換したり

 そのままエネルギーとして能力なんかで使用したり

 体内で捕まえておき必要な時に出して使役したり...ぐらいだね

 呪霊が怪異を食べたって言ったけどこれは人間も呪霊も誰でもできるのが特徴

 本当に厄介な事にね...」

ライカは少しため息をついた

「そうだ ヴィナくんは体力に自信ある?」

突然の質問に戸惑いつつも頷いた

「それなら昨日のチェーンソーの化け物退治協力してくれ!」

とんでもない提案が飛んできた

身振りからしてどうやらジュディアも賛成のようだ

正直現象身寄りもないし過去の記憶についてはジュディアさんが何か知ってるはず...

「いいですけど...俺能力とか一切使えませんよ?」

そう言うとライカがにっこり笑ってこう言い返してきた

「大丈夫 私は戦争時代にここにいる全員をひたすら扱いて鍛え上げたんだ!

 イージス社の外付け式エネルギータンクもあるししばらく訓練すれば十分戦えるさ!」

ジョブが冗談混じりで言った

「ご愁傷様〜 ライカの訓練はマジきついぞー」

ライカがレヴィディアお方を向いた

「レヴィディアちゃんはどうする?

 イージス社には少しコネがあるから戦闘用パーツを取り寄せることもできるけど」

「ザンさんと同行します」

レヴィディアは即答した

「よーしこれで8人目と9人目が揃ったね

 ビシバシ鍛えてあげるから覚悟してな!」

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