第1話「25年」
『 北極基地グレゴス 13月15日 02:12 』
「第3結界防壁 開きます!」
通信機から届く職員の声と共に50mを超える巨大な円形の防壁がゴゴゴゴと金属の軋む音を洞窟中に響かせながら開く
1人の女性が防壁の中へと歩いていく
ガァァァンと防壁の奥から強く殴りつける音が響く
「第2結界防壁 開きます!」
通信機の声と共にもう1つ巨大な防壁が轟音を響かせながら開く
「第1結界防壁 ロック解除完了! 本当にいいんですね? ジュディアさん...」
通信機から不安そうの声が届く
ガァァァン!!ガァァァン!!ガァァァン!!目の前の防壁のすぐ裏から強く殴りつける音が何度も響く
すると女性は余裕そうにいった
「そう不安になるなよw...5分あれば十分さ」
太陽の様に燃え輝くリボルバーを右手に湧き出させた
最後の防壁が静かに開く
中は真っ暗で何も見えない
すると突然針の様に尖った黒色の液体が女性の左頬を掠める
「ほぉ~挑発かい?」
真っ暗な空洞から人影が浮き出てくる
その人影は黒色の液体で人型を整形しておりその液体が下にも上にも滴り落ちている
人影はペタペタと足音を鳴らし近づいてくる
女性は笑みを溢しながら
「ジュディア・サーナリー 戦闘開始 フハハッこいつは楽しい地獄になりそうだ!」
「おはようございます 私はC-s28型民間用アンドロイド レヴィディアです
これからよろしくお願いします」
「あぁ...おはよう...えっと初めまして?」
『13月15日 06:12 』早い...早すぎる...まだ日の出も終わり切ってない...
「まぁ寒いから早く中へ...」
ガチャン! アンドロイドを家の中にいれ玄関を閉める
「ヴィナ・ザン・タイナーさんですね?」
「は...はい」
「なんとお呼びすれば良いでしょうか?」
「...ザンでいい」
「はい ザンさん」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ前の俺は人と会話したことがないのかぁ?
というかアンドロイドが来たからって何をすればいんだ...
「私は何をすればよろしいでしょうか?」
「それは俺にもわからん...」
レヴィディアは困ったように眉を顰め首を傾げている
首を傾げたまましばらく考え
「とりあえず掃除しますね」
「あ...ありがと...」
ずっと真顔だなぁ
それに身長も俺とさほど変わんないんじゃないか
目線の位置なんか大体1cm低いぐらいだし
後で自分の身長測っておこ
ふとスマホに目をやった
先日見知らぬ電話番号からの電話がかかってきていたらしい
よく分かんないからこの電話は放っておこう
今は知りたいことが山ほどある
寝室に戻りこたつの電源をつける
昨日はそこまでだったのに今日はすごい寒い
こたつで暖をとりながらパソコンを起動する
さーてと何から調べようか...
まずはニュース記事を調べよう
『チェーンソーで6人殺害か 容疑者は未だ逃亡中
チェーンソーでの殺人事件は今回で5度目』
ひぇ〜朝からおっかねーなおい
さらに読み進めると『あの大戦争から今日で25年』と書かれた記事の下に記念碑の様な写真が1枚
その記念碑にはこう書かれている
『争いを捨てます 小さき赤子のために
武器を手放します 愛すべき仲間のために
知恵を授けます 新たな隣人のために 』
平和を象徴する詩のようだ
その後もネットサーフィンを続けるがあまり有益な情報は得られず
気がつけば30分以上経っていた
「あ...朝飯忘れてた...」
こたつから出てキッチンに向かおうとした途端突然現れたレヴィディアに驚いた
「うっっっ!!わびっくりしたぁ」
レヴィディアも少し動揺していたがすぐ立て直し真顔に戻った
「申し訳ございません お食事をお持ちしました」
人間の見た目をしているせいか なんだか物凄く申し訳ない気分だ...
「あぁ...すまない ありがとう...」
わざわざ運んで来てくれたのにという申し訳なさを抱きながら料理を持ってリビングへ向かう
キッチン前のテーブルに料理を置く
色鮮やかなコンソメスープや綺麗な黄金色に色づいたフランスパン
そして綺麗に盛り付けられたスクランブルエッグとサラダ
眩しい 料理が眩しいだなんて...
「本日はどうなさいますか?」
相変わらずレヴィディアは真顔で聞いてくる
「昼頃にニューデトロイト...だっけ?そっちの方へ出かけてみようと思う」
リベリン駅で聞いた街の名前だ
「お付き添いはどうしましょうか?」
レヴィディアが目を合わせながら真顔で聞いてくる
アンドロイドを連れて街中へか...
危なそうだなぁ...デモの事もあるし
「う〜ん...君が付き添ってくれるのは有り難いが
反アンドロイドって騒ぐデモ隊に変な絡まれ方しないか心配...」
物凄く悩ましい...デモ隊の事もそうだが
記憶を失って全く見覚えのない街を一人で徘徊するのも心細い
食事をしながらしばらく頭を悩ませた
確実性で考えればデモに絡まれるよりたとえマップがあっても俺が迷う方が高いだろう
「運さえ良ければデモの事は考えなくていいから...
お付き添いよろしくお願いします」
俺は軽く頭を下げた
レヴィディアは軽く微笑んだ
「では支度をしましょうか」
空になった食器を片付け外出の準備を済ませる
外に出て玄関の鍵を閉めリベリン駅へ向かう
今更だがレヴィディアの両頬には薄くて見ずらいがパネルラインがある...
そういうタトゥーと思ってもらうしかないか...
だんだんと不安の思いが強くなっていく
「なんだか嫌な予感がするなぁ...」
小声が溢れた
リベリン駅の改札を通り電車に乗り込む
高速で通り過ぎて行くビル達を窓から眺めながら6駅ほど揺られる
「間も無く終点 ニューデトロイトです」
着いた
人集りの塊が一斉に電車を降り出す
俺とレヴィディアも流れに合わせて電車から降りる
そのままの流れで改札を出る
「ここがニューデトロイト...」
超高層ビルが何本も聳え立ちどこに目を向けても人集り...
「はい ここが惑星ザンラース1の都市 ニューデトロイトです」
レヴィディアが解説してくれる
というか惑星の名前ザンラースだったのか...
「すげぇなぁ...」
正直これほどまでとは思っていなかった
駅の西側へ向かって歩き続ける
歩くのには困りはしないがかなりの交通量だ...
しばらく歩いていると公園の様な場所を見つけた
その公園の近くで大量のパイプ椅子が並べられておりスーツ姿の人達が多く座っている
「ここは平和記念公園です 丁度今日は2000年戦争終結から25年目
追悼式を行なっている模様です」
「解説ありがとうレヴィディア...」
遠くから記念碑をチラ見してその場を離れる
軽く1時間ぐらい歩いた頃レヴィディアが呟いた
「デモ隊は見かけませんでしたね」
「そう言えばそうだな...運が良かったようだ」
ホッとしたその瞬間 バァァァンという轟音と共に近くに路上駐車されていた車が一瞬でペシャンコになった
「よぉう!ガキンチョ〜」
ペシャンコになった車の上に女性が立っている
「...あれ?おーいガキンチョ〜?」
誰かに話しかけているようだ
レヴィディアが少し警戒している
「なんだ無視かよぉ〜...んじゃ取って置きだ!
記憶を失ったガキンチョ! アンタの事だよ」
女性はニヤニヤしながら話しかける
「...は? なんで俺の事...」
「ん〜その辺は後で話すとして よろしくなガキンチョ!」
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