アンドロイド・マインド
Vの字
序章「記憶」
「.... ぅぅ眩しい...」
カーテンの隙間から漏れる日光が目に直撃してくる
手で日光を遮りながらあくびをする
大きく伸びをした後身体を起こす
「... どこだ?ここ...」
どこか見覚えのある部屋...見覚えのある寝具...見覚えのある...えーっと...そう!こたつだ
とりあえず両手で頬をバチンと引っ叩く
ヒリヒリ痛いが切り替えよう
今いる場所はおそらく自分の家だ
見覚えがあるとはそういう事だろう
ひでぇーボロアパートであることは置いておいて俺の記憶はどこか曖昧だ
昨日の事や過去の嫌な出来事は何も覚えていない
だが今いる場所を自分の家だと直感だが判断できている
突然胃袋が縮む様な感覚に襲われた
「腹へったなぁ...色々深く考えるとは飯の後にしよう」
俺は枕元にあったノートパソコンを手に取り寝室であろう部屋を後にしキッチンへ向かった
キッチンには小さなデジタル時計があった
『13月14日 10:24 』を刻んでいる あ...今25分になった
とりあえず腰ぐらいの高さの冷蔵庫を開け食べれそうな物を探す
ラップに包まれた炒め物の残りとキンキンに冷えたカット済みフランスパンがあった
炒め物のラップを取り電子レンジで適当に温めフランスパンはトースターで3枚ほど焼き始めた
電子レンジ達が鳴るまでぼーっとしているとテーブルの上に財布がある事に気づいた
中身を確認してみると身分証らしきカードを発見した
ひでー顔写真とその横に名前が書かれている
『ヴィナ・ザン・タイナー』聞き覚えのある名前だ
カードを手にしたまま鏡のある所へ向かう
洗面所にたどり着き鏡を見て思った一言
「ひっでぇ顔...」
あぁこのカードの顔写真そっくりだ
まぁこの身分証が自分ので自分の名前が『ヴィナ・ザン・タイナー』で自分の顔が酷い事がわかった
悲しいなぁ
ピーと電子レンジの音が鳴った
キッチンに戻り電子レンジから炒め物を取り出した
トースターもチンと鳴りフランスパンも焼き上がったようだ
周りが少し焦げているフランスパンを炒め物の皿に乗せ席に着いた
焦茶色のフランスパンと茶色の炒め物の残り
まぁ色はアレだが食えないよりマシだな
フランスパンの上に炒め物を乗せ食べ始める
ふと持ってきたノートパソコンに目をやる
手に持っているフランスパンを口に押し込みすぐそこにあったテッシュで手を拭く
ノートパソコンを開いた『13月14日 10:32 』
直感を頼りにパスワードを打ってみる
パスワード画面が消え殺風景なデスクトップが開いた
パスワードは覚えていたようだ
動画投稿サイトを開きリアルタイムニュースを見始めた
とにかく現状どうなっているかを知りたい
「次のニュースです アンドロイドの普及により失業者が増え続けている一方
大型病院前や駅付近など各地で反アンドロイドを掲げるデモが多発しています」
デモか...これは気軽に出歩けないな
とりあえず病院には行きたい
物忘れってレベルじゃないからな
万が一脳の病気だなんて言われたら一人暮らしっぽいし頼る相手なんて見当もつかない
早い事出かける準備をしよう
残りの炒め物を掻き込み空き皿をシンクに適当に置き支度を始める
「〜 次のニュースです 明日で2000年以上続いた戦争から25年
追悼式の準備が行われています」
あぁパソコン切り忘れてた
ノートパソコンを閉じ玄関へ向かう
スマホを開き直感でパスワードを打つ
こちらも覚えているようだ
マップアプリを開き近くの病院を検索する
幸い近くの駅から3駅程で総合病院前駅らしい
今のボロアパートから駅も徒歩5分程度のようだ
玄関を開け家の外へ出た
鍵を閉めマップアプリを頼りに駅へ向かう
俺の住んでるボロアパートは2階建てのようだ
階段を降りのんびり歩き始める
この辺は多数のアパートが隣接しているらしい
一軒家はどこにもない
歩いている間もう一度昨日の事について思い出そうとした
いくら考えてもさっぱりだ
何も覚えていない
目を閉じて考えてみても真っ暗だ
もっと部屋の様子を観察すべきだったかもしれない
思い出すきっかけになっていたかも...いや今更だ
早く病院へ行って原因を突き止めてもらおう
歩くこと約6分リベリン駅へ到着した
時刻表を見た感じ5分おきに電車が来るようだ
とりあえず総合病院前駅行きの電車を探そう
3分後に4番ホームに来るらしい
改札を通り4番ホームへ向かった
特に料金がかかるということは無いらしい
まぁ有難い
4番ホームへ電車が到着し乗り込んだ
かなりスカスカだ
「この電車はニューデトロイト行きです 乗り間違えの無いようご確認ください」
ドアが閉まり電車が動き始めた
ほんの数秒でかなりの速度が出ているのにも関わらずあまり揺れなかった
1つ目の駅に着いた
窓の外をぼーっと眺める
2つ目の駅に着いた
高層ビルが立ち並んでいる
都会だなぁ
「間も無くロングウェル総合病院前駅です」
3つ目の駅だ
ドアの近くまで歩き開くのを待った
ここも中々の都会だな
「ロングウェル総合病院前駅です」
ドアが開き俺を含め6人ほど降りた
改札までの道のりに大きな広告があった
『最新モデル D-u23型民間用アンドロイド』
画像には女性と男性が写っており人間そっくりだった
広告の下の方には『イージス・サイバーテック』と書かれている
改札出た先でマップアプリを開いた
右側に向かって徒歩1分か
総合病院に向かって歩き出した時病院前で20人近くの人が騒いでいるのが見えた
あぁニュースで言ってたデモの奴らか
手にはアンドロイド反対の文字が刻まれた看板を持ってる
なるべく距離を取るようにして病院入り口へ向かった
デモ隊に睨まれている感じがしたが気のせいだろう
病院内に入り受付へ向かった
受付の女性が声をかけてきた
「本日はどういったご用件で?」
妙な違和感を感じたが今は関係ない
「朝目が覚めた時から昨日や過去なんかの記憶が思い出せなくて検査をして欲しいです」
受付の女性は少し戸惑っているような感じで
「・・・えっと...保険証はありますか?」
財布の中を確認した
今朝見つけた身分証らしきカードを渡した
「有難うございます 少々時間がかかりますので待合室でお待ちください」
番号札が渡され待合室の席に座った
あの身分証は保険証で合っていたのだろうか
にしてもこんなにも騒がしいものなのか?ここの病院は...
「〜戦争の爪痕が残るガザル地区では今も尚復興が進んでいます」
ニュースが流れている
急にズキズキと頭が痛み出した
左手で額に手を当て親指で眉間を強く押した
数秒すると頭痛は引いていった
すぐ消えても痛いものは痛い
「54番でお待ちの方〜?」
番号札を確認する『54』
呼ばれたらしい
席を立ち受付向かう
「こちらの書類を持って2階の4番通路にある脳神経内科へ向かってください」
1つのクリアファイルとさっき渡した身分証が渡された
近くのエレベーターに乗り2階へ向かう
んで4番通路はエレベーターを降りて左側と
脳神経内科の窓口にクリアファイルを渡し廊下の椅子で待つ事になった
なんだか薄暗いな4番通路は...
何個か付いてない電灯がある
待合室の方はあんなに騒がしかったのに不思議なくらい静かだ
「タイナーさん?」
看護師に呼ばれ脳神経内科の部屋へ入る
「今日はどうされましたか?」
医者が聞いてくる
「朝起きた時昨日や一昨日だけでなくもっと前のことも覚え出せなくなっていて...」
さっき渡したクリアファイルの書類を見ながら相槌を打つ医者
「体調の方はどうですか?」
「特には無いですね...受付を待っていた時に一瞬頭痛がした程度です」
顎を摩りながら少し考える医者
「念の為CTスキャンで脳に異常がないか検査しましょう
代金に関しては心配しなくていいですよ
政府が戦後復興で医療機関に補助金出してますから」
そういえば戦争終結から25年とか言ってたな
「では検査の準備を行うので廊下でお待ちください」
脳神経内科の部屋を出てまた薄暗い4番通路の椅子に座る
5分ぐらい待った
はぁ...こんなに静かだと気分が悪くなる...
「タイナーさん こちらです」
看護師にまた呼ばれた
どうやらCTの準備ができたようだ
4番通路の奥へと案内される
少し歩き左に曲がった
CTスキャン用の部屋に入る
「荷物はこちらに入れて下さい」
看護師に荷物入れのカゴを渡された
荷物を全部カゴに入れCTスキャンのベットで仰向けになる
「は〜いそれじゃ初めて行きますね〜」
スピーカー越しに医者の声が聞こえた
15分後CTスキャンは無事に終わりまたまた薄暗い4番通路の椅子に座る
「タイナーさん?」
またまた看護師に呼ばれた
意外とすぐに呼ばれた
脳神経内科の部屋へ入る
「ん〜特に脳に異常はないですね〜」
医者はCTスキャンの画像を不思議そうに見つめる
「となるとストレス系かもですね」
ふむふむストレスか...記憶が無いんだ覚えている訳がない
「最新の治療方法としてアンドロイドと共に世界しつつ徐々に思い出していくいう方法がありますがどうしますか?」
最新治療か...金が掛かるだろうなぁ
「ちなみに...おいくらとか分かったりしますか?」
高いのは分かっているが一応医者に聞いてみる
「ん〜安くても50万ルーブですかねぇ」
うっ!...ポジティブに捉えよう...金銭感覚は覚えているのだと...
「一応全額保険金で支払い可能にはなっています
そしてアンドロイドを作っている会社の社員さんから聞いた話だと
廃棄予定の機体なら安く取引してくれると言ってましたね」
まぁ一人暮らして頼るあてもない中での記憶喪失ははっきり言ってきつい
「なら...安い方でお願いします」
「はい! ではサインはこちらです」
まるで詐欺に引っかかっている気分でサインを書いた
「では後ほどイージス・サイバーテック社から配達日のご連絡が届きますのでご確認お願いします」
「あ...有難うございます...」
身体に異常がなかった事にひとまず安心だが...
変な買い物しちまったなぁ
少しばかり後悔しながら1階の受付へ戻り支払いのサインなどを諸々済ませ総合病院を後にした
デモ隊はまだ騒いでいるらしい
なんか50人ぐらいに増えてるし
まぁ無視だ無視 とっととボロアパートに帰って飯でも食おう
総合病院前駅の改札を通り時刻表を見る
5分後に1番ホームにリベリン駅行きの電車が来るみたいだ
1番ホームまで歩いてる途中『イージス・サイバーテック』と書かれた広告が5つぐらいあった
電車に乗りぼーっとしていたらいつの間にかリベリン駅に到着しており慌てて降りた
改札を出た時にイージス・サイバーテック社からメールが届いた
アンドロイドは明日家に届くらしい
取りに行かなくて良いのは有難い
のんびり家まで歩きボロアパートの階段を登りドアの鍵を開け家の中に入った
「はぁ〜疲れた」
えっと現在時刻はっと『14:20』
おチビな冷蔵庫の中を漁る
凍った培養肉とカット済み玉ねぎか...
炒め物だな
肉と玉ねぎを適当に炒め塩胡椒を多めに掛ける
またしても冷蔵庫の中を漁る
よくわからない茶色の液体が入ったペットボトルを発見
開けて匂いを嗅いでみると覚えのある良い匂いがする
えーっとなんだっけ...あれあれ...そう!コーラだ
へぇー過去の俺コーラシロップなんて洒落てるもん作ってんなぁ
料理と飲み物をテーブルに並べ席に着き食べ始める
飯を食いながらノートパソコンを起動する
そういえばアンドロイドには型番があったな
スマホを開きイージス・サイバーテック社からのメールを再度確認する
届くのは『C-s28型』らしい
パソコンでC-s28型アンドロイドについて調べてみる事にした
「うーん情報が少ないなぁ」
1番上に出てきたイージス社公式で色々性能について見てみるか...
2497年4月発売開始らしい
えっと現在は...2508年だから...11年前!?
まぁそりゃそうか廃棄予定の機体だから安いだのなんだの言ってたしなぁ
最初から故障で使えませんとかなければ良いなぁ
公式サイトへ再び目をやる
読み進めてみると一般販売機体に感情システムが搭載された1番最初の型番らしい
椅子の背もたれにもたれ掛かりながら伸びをする
今日は疲れたなぁ軽く昼寝でもしよっと
食事を済ませ皿を洗い寝室へ向かう
疲労のせいか昼寝のつもりがそのまま朝まで寝てしまった
翌朝...
「....ぅぅ眩しい...」
カーテンの隙間から漏れる日光が目に直撃してくる
手で日光を遮りながらあくびをする
ピンポーンと家のチャイムが鳴る
「ぅん...?」
寝ぼけながらも起き上がり玄関へ向かう
ピンポーン またチャイムが鳴る
「はいはーい...」
玄関のドアを開ける
「おはようございます 私はC-s28型民間用アンドロイド レヴィディアです
これからよろしくお願いします」
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