第3話

 屋敷に戻ったフィオラは、リビングの窓際にある椅子に座る。

 そして、一息つきながら、先ほどの出来事を思い返していた。


「ふぅ……」


 森で散歩をしていると、相変わらず不思議な出来事がいっぱいだ。


 迷子のうり坊を抱き上げ、母猪の元に送り届ける。

 とても変わった体験で、なんだか楽しかった。


「……ふふっ」


 フィオラは微笑みながら、机の上にあるフェルトキットを手に取る。


「さて、今日は何を作りましょうか……」


 そうだ、あのうり坊と母猪を作ろう。


「―――♪」


 鼻歌を歌いながら、針を刺していく。


 時間がたつごとに、その姿が形作られていく。


 数時間が経つ頃には、小さな二つの作品が出来上がっていた。


「さて、これは……」


 出来上がった作品を手に持ち、キッチンの方へ歩いていく。


「ここに置きましょうか」


 キッチンとダイニングの間にある低い壁の上に、作品を飾っていく。


「こんなものでしょうか……」


 そこには、寄り添いあう母猪とうり坊の姿があった。

 我ながら良い出来だ。

 そんなことを考えながらふと時計を見ると、時刻はもう朝の4時。


「そろそろご飯にしましょうか」


 いつも通りティーカップを取り出し、冷蔵庫の血液パックの中身を注ぐ。

 そして、五百ワットで二十秒。電子レンジで温める。


「んん……いい香りです」


 ダイニングの椅子に腰かけ、口につけたティーカップを傾ける。


「ふぅ……おいしいですね」


 血を飲みながら、一日の出来事を振り返っていく。


 今日は森で散歩をしたし、フェルトで作品を作った。

 それなら、明日は街に出かけてみよう。


 外を見れば、暗かった空はだんだんと明るくなっている。


「寝ましょうか……」


 夜明けとともに、フィオラの一日は終わりを迎える。


 光一つない寝室の扉を開け、棺の天蓋を開ける。

 そして中に入ると、フィオラの体はすっぽりと棺に収まる。


「おやすみなさい……」


 フィオラの呟きは、誰に伝わることもないまま消えていった。


 棺の天蓋が閉まると、寝室は静謐に包まれる。


 心地よい穏やかさの中で、フィオラは眠りにつくのだった。

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吸血鬼フィオラの平和な日常 島アキ @ShimaAki

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