第11話:恋。

オニール教団がダブレを去ってから、しばらく経った頃。

ミランダは、エミリー様に対して、

拭いきれない「違和感」を抱いていた。



エミリー様は 街では女神と言われるほど、

慈悲深い人だった。



だがミランダは、殺し屋の直感で 

エミリー様からは 毒蛇の様なオーラを感じていた。



そして それ以上に彼女を困惑させていたのは、

エミリー様のあまりに「慎ましい」私生活だった。


今やエミリーが握る資産は、元の世界の貨幣価値に

換算すれば、優に300億円を超える。


紛れもない富豪である。にもかかわらず、


彼女の身なりは驚くほど質素で、ドレスの数も数えるほど。


個人の贅沢品に目もくれず、

黙々と領地の投資に心血を注いでいるのだ。



(これほどの財を成しながら、

欲に溺れぬ清廉さ……。エミリー様、あなたは一体……)



……ミランダは知る由もなかった。 エミリーの正体が、

前世では「コンビニの割り箸を貰っては封を開けず、別の箸で食事をする。

箸は溜め込み、家には箸の山ができている」ような、



「極めて器のちっちゃい女だった。」



しかも 「そのコンビニすら高級店と、女子高生には生意気よ!」と

滅多に近寄らなかった「ドケチな金銭感覚が染み付いていた」。


ようするに エミリー自身も、自分が金持ちだと自覚はあったが、


「そもそも贅沢の仕方が 根本的に分からなかったのだ」



ある日、ミランダは聞いてみた。

エミリー様は 資産家でございます。 なにかほしい物とかは ないのですか?。


エミリーは考えた。


うーん・・・・?。


(この世界に来て、警察機関も無い超バイオレンス世界で 

最強の殺し屋が私にはついてる、つまり私は この世界でやりたい放題)。


そうね ほしい物は もう持っているわ、フフフフッ 「貴方よ ミランダ」。 


そう冗談交じりで言って エミリーは 

書類仕事の続きをする為、部屋から出て行ってしまった。



トクンッ・・トクンッ・・トクンッ・・ミランダの心臓は鼓動が跳ね上がっていた。



ずっと心の中で くすぶっていた気持ち。

そう 私は女。エミリー様も女。だから考えないようにしていた、でも 

さっきの一言で、ミランダの気持ちは押さえが効かなくなっていた。



私は、エミリー様が好き。大好き!。・・・・


「エミリー様のお嫁さんになりたいっ!!」。


そう この時から 暴走機関車ミランダの恋心が爆走するのであった。

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