第6話:「呪いノート」

その頃  ダブレの街の片隅にある一室に、

数人の聖職者と官職者が密かに集まっていた。


机の上には銀の燭台(ロウソクたて) 

高級ワインに揺らめくロウソクの光、

足元には豪華なクマの毛皮。


壁には金の装飾が施されている、厚手の壁掛け絨毯が。

貧困にあえぐ街の現状を嘲笑うかのようにギラギラと輝いている。


オニール教団の聖職者Aが、ぜい肉のついた体を椅子に預けて吐き捨てた。

「おい、聞いたか? あの改革狂いの新領主……エミリーとか言ったか。


売春宿を潰して、囚人ども――いや、

“余計な口を利く告発者たち”を解放したらしいじゃないか」


官職者Bが鼻で笑い ワインの香りを窘めながら。

「おいおい……それじゃあ俺たちの“定期収入”が減るじゃねえか。

裏金の流れも止まりかねん。実に不愉快だ」


聖職者Cは、全ての指に嵌めた金やルビー、サファイアなどの指輪を自慢げに眺め、

卑屈な笑みを浮かべた。

ふん……あの女、少々目立ちすぎたな。


官職者Bは まあ待て、チャンスが来れば、

それ相応の罰を受けてもらわねばなるまい


彼らが口にする言葉に含まれる悪意は、もはや純粋な毒そのものだった。


利権組の正体

この場に集まった者たちは、談合、裏金、賄賂、不正会計……

あらゆる利権を貪り食らう寄生虫のような連中だった。


都市がどれほど疲弊しようとも、彼らの懐だけは常に潤い続けている。

聖職者の身でありながら、ジャラジャラと金の宝飾品を身につけ、


夜な夜な女を買い、酒と肉に溺れる日々。


官職者たちは裏金で建てた豪邸に住み、

門前には「私用」で徴用した兵士を警備に立たせていた。


そもそも民を潤わせても、ろくな事がないと むしろ経済発展の邪魔をし 

良い利権があれば、自分達に回ってくる様にしていた。

売春宿の利権や砂糖の販売などの権利。


蜂蜜にいたっては、1000年たっても腐らないのは神の加護。

湯で溶かして飲めば たちまち元気になる 神の贈り物としていた。


オニール教団は、蜂蜜の販売と養蜂の権利もおさえていた。

販売と養蜂は神の使徒のオニール教団だけが許されると。

そして高値で売りつけ、莫大な利益を得ていたのだ。


また 様々な悪行を告発をしようとする者達は 

前の領主に頼み 適当な理由で刑務所に送らせていた。


――だが。


エミリーは、その全員の悪事を、その詳細までも把握していた。

なぜなら、元のゲームにおいて、彼らは「悪役エミリーの共犯者」であり、

共に不正を働いていた仲間だったからだ。


しかし――。


(今の私は違う。全部の利権を、全部の利益を……

私ひとりのものにする、唯一無二のスーパーエゴイスト!)


「エミリーは とことんクズだった。」


利権組の名を“エミリー専用 呪いノート♡”に書きながら、

領主の館のバルコニーで、 書類を一人ずつ確認していた。



「ふふ……聖職者の癖に毎晩お盛んなこと。  

官職もこんなに裏金の流れがあるのね。

――全員、私の邪魔だわ。」


「さて……あなたたち、今のうちに楽しんでおきなさい。 それが“最後の晩餐”よ」


その瞳は毒蛇の様なスリッド瞳孔になり 獲物を捕らえる大蛇のようだった。

エミリーは“正義の味方”ではない。

どクズの極悪非道、超ー自己中女だった。


「全財産、むしり取って差し上げますわ。

逃げ場なんて……どこにもありませんもの。」


こうして ゆっくりとしかし着実に、どす黒い計画が転がりだすのであった。


「おーっほっほっほ!」

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