第三話 起動

「少し待ってろ、あれを連れ出す」


 目の前の男――元テロ部隊のカムはそう言うが、確実にを起動させる気だ。

 そうはさせない、アレを絶対に起動させはしない。


「いえ、それには及びません。それと、ここまでご苦労様でした」


 そう言いながら私は背後の部下たちに脳内通信を介し射撃の構えを取らせる。

 私たちコーポが出所不明の兵器を所有しているなどという情報は外部に漏らさない。

 情報源のあの爺さんも勿論のこと、これを知っている奴は全員デリートだ。


「!?」


 私が射撃の合図を出すのと同時に、彼はこちらにバックパックを投げつけた。

 バックパックはすぐに空中で散った。


 目くらましのつもりか?意味のないことを。


「そのまま掃射を続けなさい」


 トタンは脆い、あっという間にアイツ諸共ハチの巣だろう。


「今のは…?」


 乱れる銃声の中で、一つだけ違和感のある重い銃声が混ざっていた。


「掃射止め、後退しつつリロードして次の攻撃に備えよ」


 脳内での思考が邪魔して通信が上手く繋がらないため口頭指示に切り替える。

 ここで想定外の反撃だけは食らいたくない。

 だが、私の警戒とは裏腹に橋下に沈黙が流れる。


「掃射開――」


 私が言い終わる前にトタンが拉げて彼が飛び出してくる。


「捨て身――いや、お前は誰だ!」


 埃の煙から現れたのは彼ではなく、あの人型兵器だった。


 やはり起動したか!


「標的『七三眼鏡』と『愉快な仲間たち』を補足、排除しますテン


「七…はぁ?とにかく奴を撃ち続けなさい!」


 まだ距離がある内に仕留め切る。

 だが、飛び立った弾丸は狙った場所には着地せず、体表に弾かれてしまう。


「なるほど、暴徒用の弾薬は効かない…ですか。一から五号は足止め、その他は私に着いてきてください」


 トラックには対ロボット兵器の特製弾薬が34発残っている。

 それらを撃ち込めば、流石に未知の兵器だとしても対処可能なハズ。

 どれだけ性能の良い機械だとしても、約200年前の物と分かっている。

 所詮旧型、技術の進歩には勝てまい。


「六号と七号、八号は車体の上へ、九号と十号は私の援護に入りなさい」


「了解」


 一糸乱れず放つ返事は、何度聞いても一人が言った様にしか聞こえない。

 ロボットだとしてもこれほどまでに揃った集団は居ないだろう。

 まったく、私の最高傑作をポッと出の兵器に壊されてたまるものか。


 トラックの背後のシャッターを引き上げ中に飛び乗る。


「よし、しっかりある」


 箱の天板には34の数字があり、残弾を示していた。


 彼が兵器を起動するならば、私も最終兵器を起動するのみだ。


 私は箱の側面のボタンを押して指紋を読み取らせる。


『指紋認証完了。続いて、利き手を差し込んでください』


 箱の指示通りに天板が開き、そこに右手を差し込むと指示が進む。


『次に、箱の内部で握り拳を作ってください』


 その通りに握ると、ひんやりとした鉄の棒を掴む感触があった。


『続いて、虹彩認証を行います。腕に垂直になるように顔を移動させてください』


 まるで銃の照準器を覗き込み、銃口の先を狙うように箱を見つめると、一瞬赤い光が差して認証完了を伝える機械音声が流れた。


谷津乃宮ヤツノミヤコーポレーション所属。笹島禄堂ササジマ ロクドウに、対敵兵器撃滅汎用弾を装填した特殊兵装の使用を許可します』


 すると、拳の先からサワサワとした感触が伝わり、肩まで銀色の液体が昇って来る。

 そして一瞬腕全体にチクッとした感覚が走り、液体は固体に変わり私の腕となった。

 これは谷津乃宮特製の兵装で、対敵兵器撃滅汎用弾、通称EKEnemy Killer弾が生身で使用できるというモノで、これならアレを倒すことも出来るハズ。


 箱から腕を抜くと、すっかり銀色を纏ってしまっていて、その先からは大口の銃身が飛び出していた。

 弾は発射時に内部で造られ飛ばされる。

 それは34発作れる想定であり、前後することもあるが概ね正確だ。


『すみません、足止めは失――』


 足止めに置いた隊からの通信が入り、敵はすぐそこまで迫っていることを感じる。


 五体で全力の足止めをすると稼げる時間はたったの5分か…。

 大抵のテロ組織相手には無敗の強さを誇る私の隊がいとも容易くやられるとは。

 覚悟を決めるしかない、ここで倒しきれなければコーポが非難されるのは確実だ。


 トラックから出ると坂の下から人型兵器とカムが上がってきていた。

 見たところあっちの損傷は軽微、だが人口皮膚が剥がれ機械の部分が増えていた。

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ゴミ山の人型兵器 アスパラガッソ @nyannkomofumofukimotiiina

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