第38話 19:30から夜中までずっとキス1

(場所:須藤の部屋のベッド。須藤と麻里が布団の中で抱き合っている)


麻里の抱擁と、頭を撫でる優しい仕草は、須藤の絶望に満ちた心に予期せぬ喜びをもたらしま

須藤は、麻里の体温と匂いを感じながら、顔を上げ、幻影を見ているかのように麻里を見つめている。


布団の中に、麻里がいる。

麻里の顔には、自分を否定しない優しい笑顔がある。


須藤(内心)

(嬉しい...。本当に嬉しい...。これは夢じゃない。俺を許してくれた...)

彼の病んだ精神は、麻里の人道的な行為を**「愛の受け入れ」だと誤認しました。この誤解が、彼の長年の執着を一気に爆発**させました。


須藤

(麻里の目を真っ直ぐに見つめ、絞り出すように)

君が。。。。好きだ。。。。


須藤は、麻里の返事を待たずに、そのまま顔を近づけ、麻里の唇にキスをしました。


時刻は19時30分。

麻里が須藤の家に訪問してから、たった10分しか経っていませんでした。


麻里の選択:拒絶しないということ


麻里は、須藤のキスに心臓が締め付けられるような恐怖を覚えました。夫ではない男性との予期せぬ接触。頭の中では広大の顔が、フラッシュバックしました。


しかし、山田くんの「絶対に拒絶しないで」という切実な願い、そして須藤の細い身体から伝わる「死にたい」という病的な重圧が、麻里の理性を上回りました。

麻里は拒絶せずに、黙ってキスを受けました。

彼女の**「友人の命を救う」という自己犠牲的な決断が、夫への裏切りと倫理的な罪悪感**という、新たな心の傷を生み出しました。


須藤は、麻里からの拒絶がないことに、狂喜乱舞しました。彼の歪んだ愛情は、麻里が自分を許し、愛を受け入れてくれたと完全に誤認しました。


キスは一度では終わりませんでした。


須藤は、何度も、何度も、口を離してはすぐに麻里の唇に重ねにいくという行為を繰り返しました。それは、麻里を確認し、自分のものだと証明しようとする、病的な執着の現れでした。


須藤

(キスとキスの合間に、熱に浮かされたように)

好き。。


麻里

(涙をこらえ、須藤の命を守るために受け入れることしかできない)

うん。。


須藤

(まるで子供のように、愛を確認するように)

ちゅ。ちゅ、ちゅっ。。


麻里

(拒絶の声を上げられないまま、喉の奥で小さな呻きを漏らす)

んんっ


須藤の暴走は、麻里の心の傷を無視し、自分の欲望を麻里の同意として解釈し始めました。


須藤

(麻里の顔を見つめ、病的な期待を込めて)

気持ちいい?飯嶋さん


麻里

(山田くんの警告と須藤の死の気配に抗えず、偽りの言葉を紡ぐ)

気持ちいいよ。


須藤

(恍惚とした表情で、麻里さんを強く抱きしめる)

ずっとこうしてたいね。。


部屋には、二人の唇が重なる「ちゅ。。」という生々しい音だけが鳴り響いていました。


須藤は、その呻きを愛の証と受け取り、最も聞きたい言葉を渇望しました。彼の行動は、愛を確かめるというよりも、自分の存在価値を麻里さんに承認させるという、病的な執着に変わっていました。


須藤

(麻里の目を見て、真剣に、しかし病的な期待を込めて)

俺のこと、好き?


麻里

(拒絶すれば、彼の命が危ない。彼女は嘘の言葉を選ぶ)

うん。


須藤

(その言葉では満足せず、もっと直接的な言葉を要求する)

好きって聞きたい


麻里

(痛みを飲み込み、広大さんへの裏切りを悟りながら)

好き。


須藤は、さらに自己肯定感を満たすための質問を投げかけます。彼は、麻里が自分を肯定することで、自分の心の病が治ると信じ込んでいました。


須藤

俺ってかっこいい?


麻里

(須藤の容姿が優れていることを知っているため、事実として答える)

うん。


須藤は、麻里からの肯定を受け取るたびに、一時的な喜びに満たされました。


須藤は、話しかけてはまたすぐに唇を重ねにいくのを繰り返してました。

麻里は、唇が離れるわずかな瞬間だけが、理性を取り戻す唯一の機会でしたが、須藤はその隙を与えず、彼女を自分の歪んだ世界に引き込み続けました。

彼女の心は、広大への愛と友人の命を救う責任という矛盾した重圧に、今にも押し潰されそうでした。


須藤は、麻里からの**「好き」という言葉だけでは飽き足らず、過去の栄光や優越感を麻里に承認**させ、自分の価値を再確認しようとしました。彼の行動は、麻里への愛情というよりも、自己の存在を確立したいという病的な渇望でした。 

須藤

(キスを終え、興奮した表情で)

俺モテるんだよ? 知ってるだろ?


麻里

(淡々と、感情を込めずに)

モテそうだね


須藤

(満足げに、自慢話へとエスカレートさせる)

サークルの後輩から、イケメンって言われてて、抱かれたいとか言われてたんだよ?


麻里

(もはや、彼の言葉が過去のハラスメントを思い出させても、拒絶する力は残されていません)

さすがだね


須藤

(次に、自分の能力を承認させようとする)

俺歌もすげえだろ? 大学の時、カラオケ行ったじゃん。


麻里

(遠い記憶を辿り、事実を述べる)

すごかったね


須藤は、麻里にずっと話しかけながら、その間にもすぐに唇を重ねにいくのを繰り返しました。


須藤は、麻里からのキスを受け入れるという行為に、究極の幸福を感じていました。彼の病んだ精神にとって、これは世界で唯一の安らぎでした。

須藤

(恍惚とした表情で)

飯嶋さん、キスって幸せだね


麻里

(心が死んだように、淡々と)

そうだね


須藤の支配欲は、次に麻里からの積極的な行動を要求しました。彼の幸福は、麻里の意志をコントロールできることにありました。


須藤

飯嶋さんからもキスしてきてよ


麻里は、山田くんの「拒絶しないで」という切実な言葉と、須藤の命という重圧に逆らうことができませんでした。彼女は、広大への罪悪感を飲み込み、須藤の要求に応じました。


麻里はキスしました。

しかし、須藤の承認欲求は満たされません。


須藤

(唇が離れるとすぐに、不満そうに)

短いよ もっと


麻里は、自分の行為が友人の命綱であると信じ、抵抗を諦めました。

麻里は少し長めにしました。

その長いキスの中で、麻里は**「早くこの時間が終わってほしい」「早く広大の隣に戻りたい」という切実な願いだけを、心の奥底で唱え続けていました。彼女の自己犠牲**は、倫理的な境界線を次々と乗り越えていきました。

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