第20話 須藤の妄想内容

麻里の自宅前で別れを告げた須藤は、そのまま自分の家に帰ります。しかし、彼の心は、麻里の家から離れても、全く休まりませんでした。

須藤は、いてもたってもいられないくらい焦燥感に襲われました。その原因は、麻里が今、広大の待つ家に入ったという現実でした。


須藤(心の声)

(麻里と旦那の多田さんは今頃、、 馴れ初めを話していた時のあの笑顔で、旦那に迎えられているのか。俺が動画で妄想していることを、あの旦那は今、現実にやっているんだ)


麻里が広大と、自分には手に入らない「当たり前の幸せ」を分かち合っているという想像が、須藤の嫉妬と劣等感を極限まで高めました。彼の頭の中は、美緒に作ってもらった動画の映像と、広大の姿が混ざり合い、一種のパニック状態に陥りました。


その日は須藤は眠れなかったのです。彼は、動画を繰り返し再生し、現実の麻里に拒絶された痛みと、広大への嫉妬を麻痺させようとしました。


いつも須藤が考えていた妄想内容は

こちらなのです。


須藤

麻里。。


麻里

須藤くん。。キスして。


ちゅっ


麻里

もっと、、して欲しいな、


ちゅうぅ


麻里

ふふっ幸せ、 ここも触って。


須藤

脱がすよ、、


麻里

全部!!


麻里

ぁ、ぁぁん///


現実に戻り


須藤

多田さんと...毎日...イチャイチャしてるのか...

飯嶋さん...大学四年間彼氏いなかったじゃん。なんで他の男と...


眠れない夜を過ごし、朝を迎えた須藤。(土曜)。麻里への執着は解消されるどころか、さらに深く心に根を張っていました。

そんな時、友達から連絡が来ていました。


友達

須藤!今日暇?合コンきてくんね?


須藤は、一人でいると麻里への妄想と広大への嫉妬に耐えられないため、一人になりたくないと思い、参加しました。


合コンに参加したものの、須藤の目にはみんな可愛くなかったのです。麻里という「理想」を、合成動画という「妄想」で補完している須藤くんにとって、現実の女性はもはや麻里の代わりにはなり得ませんでした。

しかし、合コンの場では、男のメンツで一番レベルが高いのは須藤だったため、女性たちは須藤に釘付けでした。彼は、優越感を満たし、女子たちにLINEを交換させられました。

帰宅後、須藤くんのスマートフォンには、すぐにその女性たちに食事の誘いが来ていました。


合コンに来ていた女性A

いつ次会えますか?


女性B

飲みに行きませんか?


須藤※独り言

行くわけねぇだろ。。


須藤※LINE

忙しいので予定わかったらこちらから連絡します


そう一言言って女性たちをブロックしました。。


須藤(心の声)

(飯嶋さんからは誘ってくれないのにどうでもいい女子たちにはモテるのか、、)


須藤は、そのちぐはぐな現実に残念な気持ちになりました。現実の女性たちからの優越感は、彼の求める麻里からの承認には全く繋がりませんでした。


須藤(心の声)

(自分を見て欲しいのは飯嶋さんなのに。。)


須藤(心の声)

(なんでだよ、俺の方がいい男なのに、、)


麻里の拒絶を理解できない須藤は、その理由を自分と広大との優劣に求めました。彼の自己評価は、広大の客観的な能力を貶めることで、麻里の選択を間違いだと決めつけようとしました。


須藤(広大への認識)

•多田さんだっけ? 長身でイケメンなのに声が高くて変な声だったし、発言もろくにできなくて頼りなさそうだったし、、


須藤(自分への認識)

俺は歌もプロ並みに上手いし、学祭ライブで女子にキャーキャーいわれてたし、かっこいいとか色んな女子に言われてきたし、抱かれたいとかよく思われてきた、しっかりしてるし、昔から色々リーダーも任されたりもしてた


彼は、**「俺の方が絶対いい男なのに!!なんでだよ!!」**と、ルックス、才能、社会的な能力のすべてで広大を凌駕していると確信していました。須藤にとって、麻里の選択は、自分の存在価値を否定する不当な評価であり、受け入れられるものではありませんでした。

彼の問題は、麻里が求めているのが**「優越性」や「社会的地位」ではなく、「安心」や「包容力」**であったことを、最後まで理解しなかった点にあります。

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