第19話 馴れ初めを知る

美緒を泣かせてしまった後日...

須藤は常にこんなことを考えてました。


須藤(心の声)

(飯嶋さんとまた二人きりになれたらいいな、、)


そんな中、彼に新たな機会が訪れました。チームの飲み会の案内です。個人での誘いは拒絶されても、公的な場なら麻里は来てくれるかなと期待しました。須藤も大勢の飲み会は好きではないが、麻里が来るなら当然行きたいです。


須藤

飯嶋さん、チームの飲み会行きますか?


麻里は、須藤との個人的な接触を避けたい一方で、チームの輪を乱すことは避けたいと考えていました。


麻里

行きますよ。チームのなら。


麻里さんの「チームのなら」という言葉は、須藤に対して**「あなたと二人きりではない」という暗黙の線引きを示していました。しかし、須藤はそれを「会える機会」**だと都合よく解釈しました。

須藤は、迷わず参加することにしました。


チームの飲み会当日、麻里と須藤は同じ仕事をしていたため、退勤タイミングが同じになりました。


麻里は、須藤の気持ちを警戒しつつも、チームの飲み会という公的な場に向かうため、二人で電車に乗ることを拒否できませんでした。


二人は電車で20分くらい先の新橋の店に二人で向かうことになりました。須藤にとっては、意図せずして**「合法的に二人きりになれた」**、待ち望んでいた特別な時間となりました。 


麻里は、須藤の執着を刺激しないよう、当たり障りない会話を須藤にしていました。しかし、須藤にとっては、麻里の隣にいるというだけで特別な時間でした。


須藤(心の声)

(お店にまだ着かなきゃいいな)


須藤は、この束の間の時間が永遠に続けばいいと願っていました。彼の頭の中では、現実の麻里の拒絶と、動画の中の妄想が、再び交錯し始めていました。


飲み会会場の居酒屋に到着し、麻里と須藤は隣同士に座りました。須藤にとっては願ってもない機会でしたが、麻里は意識的に須藤以外の同僚と話すことで、距離を保とうとしました。

麻里は、席の周りの人たちとお話をしていました。須藤は麻里と隣なのに話せない状態になり、**(つまらない。。)**と感じていました。 


須藤は、麻里に視線を送り、(早く話しかけてよ。。)と心の中で願いました。

その視線に気づいたのか、あるいは同僚としての配慮からか、ようやく麻里は須藤に話しかけ、職場の話しをしました。須藤は、麻里と業務の話をするだけでも幸せでした。 


宴会がお開きになり、麻里さんは須藤からの誘いを恐れ、二次会に誘われたがすぐに帰るようにしました。

しかし、須藤はまたしても、麻里との個人的な接点を見つける幸運に恵まれました。 


須藤

あ、飯嶋さん!家どこですか?


麻里

柏ですよ

※新婚に伴い引っ越していた


須藤

俺もです!!

※須藤は実家暮らし


二人の最寄りが3駅しか離れていないことが判明しました。これは、単に帰宅の方向が同じという以上の意味を持ちます。須藤にとっては、拒否できない**「合法的な二人きり」**の時間が、再びもたらされたのです。

麻里は、須藤の執着を警戒しつつも、同じ方向である以上、二人きりで帰宅することを拒否できませんでした。


電車に乗った麻里と須藤は、最寄りに着くまでの一時間、二人きりで話し続けることになりました。麻里は、須藤の執着を警戒しつつも、あくまで同僚として職場の人の話しをし、笑顔で話してくれました。

須藤は、麻里の笑顔を独占できていることに、**「嬉しい。。」**と内心、歓喜していました。この一時間は、彼の妄想をさらに現実の行動へと駆り立てる燃料となりました。

そして、電車が須藤の最寄り駅に近づいてきました。


麻里

須藤さん、降りないんですか? 


須藤は、この機会を絶対に逃すまいとすでに計算していました。 


須藤

飯嶋さん、駅から徒歩で15分以上かかるって言いましたよね


麻里

はい 


須藤

危ないので送らせてください!


麻里

え、悪いですよ  


麻里は、須藤の意図を察し、強く拒否しようとしましたが、須藤はそれを押し切りました。   


須藤

いいんです。送らせてください!


須藤は、麻里の善意や配慮を完全に無視し、麻里の家まで送ることにしました。


須藤は、麻里の警戒を押し切り、知らない夜道を麻里と二人きりで歩き、麻里の自宅へと向かいました。この物理的な近さが、須藤の執着をさらに燃え上がらせました。

須藤は、麻里の心の中の**「多田広大の存在」**をより深く理解し、その関係にヒビを入れる隙を探ろうと、核心に触れる質問をしました。 


須藤

旦那さんとの馴れ初め聞かせてくれますか


麻里は、須藤の質問に何の悪意も感じず、むしろ広大への強い愛情から、その思い出を話すことに抵抗がありませんでした。


麻里

いいですよ! 


麻里は、嬉しそうに話しだしました。


麻里

多田広大って言います。私達の二つ学年で年下です。2ヶ月遅れて中途の同期として入社してきて、、かっこいいなって思って、、話しかけたらすぐに仲良くなれて、、あんなにかっこいいのに天然で、、すごく優しくて好きになっちゃいました。休日思い切って会えるか誘ったらしました。広大からも会うの誘ってくれた時、思い切って私から告白して付き合ったんです。

結婚までも早かったかな。

ずっと彼氏、、社会人入って5年もいなかったのに、運命かと思いました。


須藤の心には、広大への激しい嫉妬と、麻里の幸せな笑顔に対する焦燥感が渦巻きました。


須藤の顔は絶望に満ちていました。


須藤

そうですか、、よかったですね。。


須藤の言葉には、祝福よりも、深く傷ついた敗者の諦念がにじみ出ていました。


麻里は、須藤の様子に気づきながらも、彼との関係にこれ以上深入りすることはできないため、礼儀正しく別れを告げました。 


麻里

送ってくれて、ありがとうございます。また来週!


須藤

(え??しかも多田さんと付き合う前、、誰とも付き合わなかったの??

もっと早く俺らが再会していれば...


須藤は、その空白期間にこそ、自分が麻里との関係を修復するチャンスはあったのだと、激しく後悔しました。しかし、過去は変えられません。広大は、須藤が手に入れ損ねた空白期間の終わりに、麻里の心を掴んだのです。


須藤の心は、広大への嫉妬と麻里への執着、そして動画への依存という、三つの毒に完全に支配されました。

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